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【コラム】中途採用でSPIを受けさせる意味があるのか

【Co-WARCサイトオープン】

WARCに所属している公認会計士・税理士の皆さんで組織された会計コンサルチームであるCo-WARC(コワーク)のサービスサイトがオープンしました。
是非御覧ください。


はじめに

もう何年も前の話なんですけど、中途採用でとある大手企業の面接を受けまして、次が最終という段階で突然「SPI受けてもらうことになってるんで、受けてきてください。計算問題とか出るんで準備して受けてくださいね」と言われたことがあります🤔
SPIが課されるということを一切聞かされていなかった私は、だいぶ慌てました。
受けたこと無かったので🙄👍

SPIがなんのことかわからなかったので、ネットで調べて、本屋で本を買ってさらっと読んでみました。
そうすると、どう考えてもその会社の職種と一切関係無さそうな問題ばかり
私は思いました。

『なんでこんなもん受けさせるの?意味ないやろ』

と。
未だにその気持ちは変わっていないです🤣
最初から「SPIありますよ!」と提示して、初期段階で受けさせるのであればまだわかりますが、最終面接の一歩手前で突然伝えて受けさせる意味がわからんなと😨
ということで、その会社は辞退しました。

今でも辞退してよかったなと思っています。
30代半ばに差し掛かった今、改めて中途採用におけるSPIの意義について少し考えてみたいと思います。
なお、この記事で述べることは言うまでもなく私個人の見解です🙄


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1.SPIとは

SPIとは、本来某大手企業様が開発した適性試験のことを指します。
しかし、今では一般的に「採用過程で課される適性試験全般」のことを指して使われています。

私自身もそういう意味で使っています。
この記事でも、特定の会社の適性試験のことを言っているのではなく、どこの会社が開発したものであれ、採用過程で課される適性試験はすべてSPIと呼称します

そして、SPIには主に2つの種類があります。

1つ目が、学力検査です。
学力試験には、国語力を見る試験、計算能力を見る試験、推論力を見る試験などがあります。
公務員試験の適性試験や法科大学院入試で課される適性試験と似ていますね😁

もう一つが、性格検査です。
これはよくある心理テストですね。
どういう性格傾向を持っているのか、どういう行動傾向を持っているのかを質問紙法によって検査する試験です。


これらを前提として考えていきます。


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2.学力検査は必要なのか

そもそも「学力」とは何を意味するのでしょうか🙄

・速度の異なる自転車に乗る2人の兄弟がいつ出会うのかを計算できる能力?
・対義語をいっぱい知っている能力?
・りんごやみかんの数を正確に計算できる能力?
・一部が黒塗りされている表の黒塗り部分の数字を他の数字から読み解く能力?
・日頃あまり使わない漢字を正確に読みこなす能力?
・動物の肢の数を正確に数えられる能力?

これらを学力というのであれば、そんなもんは社会人にとって必要な学力ではないでしょう🤣

SPIで主に測っている学力は、社会人に求められる学力と一致していないんですよね🙄
その点で、学力を測る検査としてはあまり意味がない。

仮に、WARCのメンバー全員に抜き打ちで受けさせたとしたら、おそらく平均点は半分程度になると思います。
大手企業に勤める役職の高いおじさま達に受験させたとしてもその程度でしょう。
現に活躍している社会人の多くがもう忘れてしまっていることや殆ど使わない能力を測っているようなものです。

そんな試験に何の意味があるのか……

考え得る意味は2つ!

(1)篩(ふるい)
(2)人事の目の代替・補完

以下、説明します。

(1)篩(ふるい)

篩にかけるために試験を受けさせるということであれば、賛成です。
超人気企業であれば、毎年数万人の学生が採用試験を受験しますし、中途も数千人受けてくるでしょう。
そのすべての人材について人事が面接するのは現実的ではありません。
そこで、SPIをあえて課して、8~9割以上の正答率を叩き出した人たちだけを対象に面接をするというのであれば、合理的だと思います。

SPIの対策すらまともにできない学生 ≒ 勉強できない人だとみなして、切り捨てるという手法ですね。
これはある意味正しいと思います🤔
もちろん、特殊な能力を持った個性的な人材は採用しづらくなると思いますが、そういう人材が切り捨てた集団内に属する率は1,000人に1名くらいだと思うので、そこは捨象しても問題ないでしょう。
なぜなら、大手企業で重要となる人材は、忠実かつ正確に、高速で事務作業をこなしてくれる人材だからです。
学力検査で高得点を獲れる人たちは事務能力も高い傾向があるので、検査としても合理的です。

(2)人事の目の代替・補完

人事が人を見る目を持っていない場合、別の客観的な指標によって合否を判断する必要があります。
また、人事の能力が不十分であれば、それを補完する何かが必要です。

そのような場合にSPIを活用し、客観的な数値で応募者を評価するというのは合理的ですね👍
最低限の努力をしていれば一定の点数を出すことは可能だと思うので、それを基準にするのは良い手法だと思います。

学力を学歴だけで判断すると痛い目をみるので、SPIで最低限の学力を測るというのもありですね。


以上より、学力検査は、篩または人事の代替・補完として活用する分には意味があると思います🤔

ただ、それは新卒採用の際に活用する場合ならばという話です😑
中途採用で篩が必要となるほどの会社は少ないでしょうし、人事の代替・補完として学力検査が必要という会社はかなり危ない気がします。

それに、中途の応募者側から見ると、よほどその会社に拘る何かがない限り、応募を控えるだろうなと思います。
篩にかけて掃いて捨てるほど応募者がいる会社なら、自分も捨てられる側になりやすいでしょうし、仮に採用されても別に居ても居なくてもいい存在になりやすいでしょうから、あまり意欲が湧かないのではと思います🤔
その結果、安定に対する強い固執がある人材や会社のネームバリューに縋りたい人材が増加するのではないかとすら思えます。

以前、SPIで9割以上の得点を出さないと一次選考を通過できない会社(原則新卒採用のみ募集)に勤める友人が言うておりました。

「うちには試験のお勉強はよくできる社員が多いんですが、野心がある人はほとんど居ないです。
何かを変えようとか、挑戦しようという人は……いないかも
安定にしがみついてる人や何も発言せず無難に生きてる人だけははいっぱいいます」

新卒段階での厳正なる選別の結果、素晴らしい人材の確保ができているのだろうと思います👍

あと、中途を篩にかけるために学力検査を用いるのであれば、事前に公表しておかないといけないですね。
学力検査は公平な状態で検査をしないと意味がないので🤔


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3.学力検査への提言

新卒時に篩や人事の代替・補完のために学力検査を用いる点にはある程度賛成です🤔
人気のある大手企業であればやむを得ないでしょうし。

ただ、学力検査の内容は一旦よく考えた方が良いのでは?と個人的には思っています。
今の学力検査は無駄すぎると思うんですよね🙄
就活生または転職組に無駄な労力を課すのは本末転倒なのではないかと。


そこで例えば、学力検査で財務諸表を読み解く問題を出してみてはどうでしょう?

財務諸表を読み解く能力は、ビジネスマンにとって必須と言っていいほど重要な能力です。
それに、優秀な学生、優秀な中途の多くは、最低限の会計知識をすでに持っていることが多いので、良い篩になると思います。
それに、そのような学力検査が実施されると、多くの学生・中途が会計を学ぶと思いますから、企業にとってもメリットが大きいでしょう🤔
まぁ財務が悪化している会社は、従業員の多くに自社が危ないとバレるので困るかもしれませんけど。


また、その会社にとって重要な法律(個人情報保護法や景品表示法など)の基礎的な問題を出しても良いかもしれません。
内部統制の基礎やコンプライアンスに関する問題でもいいですね!
会社に入った後に学んでもらう手間も省けますし、知っていて損することもない。
学生にとっても会社にとってもメリットが大きい。

その他、ロジカル・シンキングやクリティカル・シンキングに関する問題を出しても良いと思います。
会社で使うITツールに関するリテラシーを問う問題を出しても良い。

いずれにしても、その会社で実際に使う知識、能力を測るべきだと思うのです🤔
学校のペーパーテストで高得点を取ることが、そのままビジネスの世界で高得点を取ることにつながらないことは我々もよく知っていることなので、せめて会社で実際に使う知識や身につけておいてほしい能力を測った方が双方にとってメリットがあるのではないかと思います。


あ・・・書いていて思いついてしまった・・・
そういう会計・法律・思考力の基礎的な学力検査……WARCなら作れるんじゃないか?🙄
新しいSPIの形として、ありなんじゃないか……
私、法律分野とロジカル・シンキング分野なら作れる気がする。

と思いましたが、数年かかりそうなので、一旦忘れますw


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4.性格検査は必要なのか

次に、性格検査について考えてみましょう🤔
質問紙法は、元々は心理学(パーソナリティ心理学)の実験でよく使われていた検査方法です。

質問紙法では、性格や行動の特徴をまとめて、類型化し、その特徴ごとに質問を作成して、回答に応じて得点を加算していきます。

例えば以下のような質問が出ます。

質問:自分は社交的な性格だと思う

これに対し、以下の中から回答を選びます。

1.とてもそう思う
2.そう思う
3.どちらともいえない
4.そう思わない
5.全くそう思わない

このうち、1や2を選んだら、「明るい性格」という特徴に得点が加算されていきます。
3~5に得点を振るかどうかは検査作成者の意図次第です。
このような質問を各特徴ごとに出して、各類型の得点を割り出します。
質問数は通常50~200問ほどで、一般的には質問数が多い方が正確な数値が出やすいだろうと思います。

上記のような単純な質問方法以外にもいくつか質問の出し方がありますが、今回はあまり関係ない話なので、省略します。
一度は見たことがあるよくある心理テストをイメージしていただければ結構です😁


大雑把にいうと、性格検査は、その人がどのような性格的特徴、行動的特徴を有する人なのかがわかるという検査です。
比較的簡単に作れる検査なので、今では複数のスタートアップが心理テストを作成して企業用コンテンツとして販売しています。
あんまり売れてないところが多いですけど。
そこはやっぱりSPIを生み出した某大手企業様が最強です。
今まで培ってきたデータ量が違いますから、正確性も精度も群を抜いています。

ただし、質問紙法にも弱点があります。

そもそも質問紙法は、正直に答えてくれることを前提としたテストなので、正直に答えてくれていれば、ある程度その人の特徴を検査することができます。
しかし、逆にいうと、簡単に操作できます😱
少し賢い人なら、質問に対してどう答えるのがベストなのかという予想ができますから、性格検査を歪めることができちゃうわけですね!

そのため、正確性については常に疑義があると思った方が良いです。


もっとも、性格検査に全く意味がないとはいえません。
今の時代、職場の従業員間の価値観や相性は極めて重要な問題といえます。
価値観があまりに異なる人を組織に入れると、組織内に蟠り(わだかまり)ができる可能性が高くなります。
また、相性の悪い上司・部下を組ませると、モチベーションや業績がガタ落ちしてしまうこともあります。
最悪の場合、離職率が飛躍的に上昇します。

このような事態を防ぐためには、ある程度従業員の個性を会社側が把握し、相性を考慮した人材配置・採用を行う必要があります。

したがって、私は性格検査は実施すべきだと考えています。


問題は、質問紙法の結果をどう活用するかなんですよね🙄
心理学を学んできた人間ですら扱いが難しい上に、結果を知ったところで相性と相関があるのか怪しいのです。
例えば、几帳面で正確な仕事をする傾向があるAさんと大雑把だけど社交性があり、営業が得意なBさんがいたとします。
この2人の相性は良いとも言えるし、悪いとも言えます。

実際はAさん、Bさんの人間的な成熟性(大人度合い)に依存しますし、出会うタイミングや業務内容にもよるでしょう。
つまり、わからんのです😱

そのため、性格検査は、従業員を理解するための一助とはなると思いますが、それだけで様々な問題が解決するという類のものではありません。
その人についてのコミュニケーションの仕方の参考資料という程度のものです。

検査結果を組織開発等に活用すると考えると、心理学、統計学、組織論等をしっかり学んで、やっと有効に活用できるかなぁというくらい難易度高めですね🤔

そのため、中途採用において性格検査を実施したとしても、扱いは非常に難しいという結論になります。


おわりに

以上、中途採用でSPIを受けさせる意味について検討してみました🤔
結論としては、学力検査については微妙だなと思っています。
学力検査を中途採用に課す意義が見出しづらいです。

一方で、性格検査についてはある程度有効性があると思うので、実施した方が良いかと思います。
ただし、検査結果を正しく活用するのは非常に難しいと思います。
相当勉強している人でないと「ふーん」で終わりです🙄


いずれにしても、中途採用で何らかのテストを実施するならば、あらかじめ公式サイト・求人票等に記載しておくべきだとは思います。
抜き打ち検査を行うのは、応募者の印象を悪くするだけであまりメリットがないと思うのです😑
特に学力検査については一歩間違うと応募者を馬鹿にしているように見えるので、細心の注意を払ったほうが良いかと思います。

また、近い将来問題となる論点として、性格検査の結果の取り扱いに関する事項があります。
性格検査は、人間の内面をあぶり出す側面を有していますから、海外では、性格検査の結果も個人情報と同等の保護を受けると判断されているところもあるのです。

パーソナリティ心理学を深く学んでいる人にとっては、検査結果を見ただけで様々なことをある程度予測できてしまうので、正直個人情報より重大な情報になり得ます😨
既往症などのセンシティブ情報にも関連してきますからね……

そのため、中途採用に限らず、何らかの検査を実施する場合は、企業側はその検査結果資料について十分に注意しておいた方が良いです。
不要となったデータは速やかに削除して、漏洩しないように気をつけましょう。


では、また次回🎵



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著者:瀧田 桜司(たきた はるかず)
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