わかおの日記99
昼過ぎに、吉祥寺までラーメンを食べに行った。思えばここ最近のぼくはなんだか日和っていた。健康のため体重のためと気を遣い、自分のやりたいことをすることが出来なくなっていた。それが大人になることだというならば、ぼくは大人になどなりたくないね。そんな熱く滾った若いパトスを迸らせながら、食券機で小ラーメン(850円)を購入した。
しばらく待っていると、坊主頭の店員から「1番奥の席の、小ラーメンのお客さま」と合図をうけたので、ぼくは反射的にコールを返した。「あっ、あの、えーっとニンニクアブラでお願いします」ヤサイを追加しないところにぼくのアイデンティティはある。
そうしてやってきた1杯は、久しぶりに拝む二郎系のそれだった。ヤサイマシにしていないとはいえ、高尾山くらいそびえ立つもやしの山。その山を浸からせている、濁りに濁ったスープ。主成分は味の素である。こころなしか多めのチャーシューがニクい。ぼくの母が目にしたら発狂しそうな1杯を前に、ぼくの胸は高鳴っていた。
そこから先のぼくは、肉と塩分とモヤシと小麦粉の化合物をほお張るだけの獣と化していた。さすがにスープを完飲するという自殺行為は控え、きちんと大きな声で「ごちそうさまでした」と言ってから退店した。それが作り手に対する礼儀というものであろう。ただ高カロリーなものを摂取しただけなのに、溢れるこの多幸感は何なのだろう。無駄に瀟洒で鼻につく吉祥寺の街を睥睨しながら歩いた。そんなにお洒落な花屋は、もはや花を売る気がないだろう。
血糖値が爆上がりした代償として、昼寝は避けられなかった。運命に身を委ね、しばらく仮眠したあと、それでも暇だったのでまた原稿を書いた。何気なく付けていたテレビで、「おじゃる丸」がやっていた。久しぶりにおじゃる丸を見たが、今日のおじゃる丸は神回だった。月光町の面々が、「きものーず」というチームを結成し、草野球をするという回なのだが、とにかく無茶苦茶だった。
まずチームの構成員の3分の1が人外である。そして全員なぜか着物をユニフォームとして着用している。さらに1番バッターが、小林一茶の偽物のようなジジイである。ジジイに1番バッターは酷だろう。絶対電ボとかの方がストライクゾーンが狭いし、飛べるから有利だと思う。案の定ジジイは俳句を書くための短冊をバットと勘違いし振り回して三振していた。この役立たず。帰れ。
そして試合が始まると、冷徹斎という占い師のおじさんが快速球で、敵チーム「つよいーず」を圧倒し、結局「きものーず」は完封勝利を収めた。「つよいーず」からしたら、この上ない屈辱だろう。「つよいーず」なのに。
そんなこともあって、ぼくとしては暇な割には満足のいく1日だった。