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わかおの日記151

たぶん人恋しいのだろう。むかし好きだったひとの夢をみた。

ぼくだって、小学校6年生の頃の思い出をずうっとひきずるほどセンチメンタルじゃないし、24時間のうち23時間50分くらいは彼女のことを忘れているのだが、どうしても1日に10分くらいは彼女のことを考えてしまう。これって未練がましいのだろうか。

夢の中でぼくは高校の体育館にいた。舞台の上ではなぜか映画が上映されていて、ビーチチェアのようなものに横たわりながら、高校の友達とみんなでそれを見ていた。彼女はぼくたちのグループの横に、友達と2人でいた。

なぜか突然トイレに行きたくなって、体育館の後ろのドアをそっと開けてトイレに行こうとしたら、千葉先生(小6のときの算数の先生。教え方はうまかったが口臭がひどく、気に入らないことがあるとすぐに怒鳴るひとだった)がぼくを呼び止めた。

「おい、どうしてトイレに行くんだ。映画の上映中だろう!」

「すいません、ちょっと具合が悪くて……」千葉先生にひるみ、とっさに嘘をついてしまった。

「具合が悪いのに、どうしてここに来たんだ!それなら帰れ!!」先生もずいぶん滅茶苦茶なことを言うものである。しかしそのときのぼくはなぜか千葉先生を恐れていたので、嘘をついたら取り返しのつかないことになると思い、勢いよくスライディングしながら土下座をかましてこう言った。

「具合が悪いのは嘘です、すいません!本当はY(彼女の名前)に告白したくて、その前におしっこしておかないと漏らしちゃうと思ったのでトイレに行きたいんです。お願いします!!」

急に何を言っているんだ。さっきまでそんなこと微塵も考えていなかったじゃないか。しかし夢の中の出来事に脈絡などあるわけもなく、そのときはなぜかこの会話に違和感を覚えなかった。このとき多分ぼくは、結構デカい声で「好きだ!!!」という寝言を言っていた気がする。

「そうか、頑張れよ!!」千葉先生もやはりネジが飛んでいて、ぼくの熱い思いを受け取ってくれた。そうしてぼくは無事に用を済ませると、体育館に復帰し、彼女のところへ駆け寄った。

「ね~ね~」今となっては信じられないほどの馴れ馴れしい口調で、ぼくは彼女に話しかけた。

「…………」もちろん彼女はガン無視である。ぼくは、彼女が気に入らない人間を拒否するときに見せる冷酷な表情が好きだったのを思い出した。現実なら確実にここでくじけているが、夢の中のぼくはどこまでも積極的で、すぐさま二の矢を放った。

「あそぼ~よ~」文字にすると本当に気色悪いが、夢の中のぼくはこのセリフを完璧な間で言い放ち、すごく面白い感じになっていた。本当に面白かったんだよ。信じてくれよ。

ぼくのおもしろセリフに彼女の表情もくずれ、思わず笑顔になる。彼女の隣にいた友達すら笑っていた気がする。もうすっかり当初の「告白をする」という目的を忘れ、なんだか満足したぼくは、そのまま目を覚ました……

朝の6時だった。一限があったので、夢の余韻に浸る間もなく、慌しく家を出た。通勤ラッシュに揉まれながら、「有吉弘行のサンデーナイトドリーマー」を聴いた。上島竜兵が亡くなったあとの放送だったので覚悟を決めてはいたが、やはり重苦しい雰囲気のオープニングだった。さすがの有吉弘行も、上島の死をイジる気にはなれなかったのだろう。声が震えて泣きそうになりながら話していた。

自分は誰かが死んだときに、ここまで悲しむことができるだろうか?

もしも数少ない親友のうちの1人が亡くなったらどうだろうと考えたが、残念なことに、泣くことはないなと思った。薄情なやつである。だから友達が少ないのだ。そういう自己嫌悪みたいなことを繰り返しながらぼーっと電車に乗っていたら大江戸線の乗り換えを間違えて若松河田まで来てしまった。まだ朝の8時半なのに、悪い一日になることが決定したような気がした。

これはラーメン二郎に行くしかないな。

こういう気の淀んだ日は、ラーメン二郎に行くしかないのである。摂取カロリーが足りないのがいけないのだ。これはぼくが受験生時代から信仰しているジンクスで、調子が悪いときは二郎に行けばだいじょうぶになるのである。科学的な根拠はもちろんない。

空腹を耐え忍び3限までなんとかやりすごして、すぐさま二郎へと向かった。午後2時半に二郎を食べようなどという酔狂な人間はそう多くなく、並んでいる人の数はかなり少なかった。

今日のコールは「ヤサイ少なめ」である。
うまかった。とてもうまかった。二郎のことを豚の餌などと揶揄する輩もいるが、豚の餌でなにが悪いのか。スープの味とか麺の食感とか、細かいことを考えながら食べるラーメンなんて味がしないだろう。「なんかうまいな」くらいの解像度のまま、ただ豚のようにがっつけばいいのだ。不満足な人間のほうが満足な豚よりもいいのかもしれないが、満足しているのは豚のほうである。

帰り道、思わず歩きながら「ウマカッタナア」という声が漏れてしまった。

またラーメンに救われた気がする。










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