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世界は分たれて、未来は輝いている
……しかしそれでも、私たちの元に訪れるのは昨日までと変わらない日常なのです。だから皆さん、恐れないで。喪ってしまったかもしれない物に想いを馳せないで。きっとそれだけが、私たちに残された歩むべき道なのです……。
ラジオから流れる託宣が僕らの間を裂いていたから、僕はラジオを掴んで、目下に広がるグラウンドに向かって投げつけた。錆びた銀色のラジオから流れる声はドップラー効果で低くなり、やがて硬質のプラス
SNS (掌編小説)
知人にSNSの利用を勧められたので、登録し、母校のコミュニティに入ると、穴空きではあるが、学生名簿を思わせる、懐かしい名前が並んでいた。名前を指で撫でると、個人のページで、めいめいが仕事の愚痴や家族への思いを、誰に宛てるでもなく洩らしている。しかし、薄情ながら、彼らと交わした会話や共に成し遂げた事など何も思い出す事が出来なかった。彼らの、よそ行きの言葉の中に、郷愁を揺さぶる物は無かった。致し方ない
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