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VUCA時代に対応するマネジャーのスキル #72 コンセプチュアルスキル

人は一人で成せる目的には限界があります。
そのため、より大きな目標を達成させるために、同じ目的を持った人たちと組織を形成します。

しかしながら、同じ目的を持った人たちとは言え、人格も、実現させるための方法論も、それぞれです。
また、それぞれの能力も均一ではありません。

そのため人材に限らず、あらゆる経営資源を駆使して、マネジメントを機能させる必要があります。
マネジメントとは、組織の目的を果たすために、まるで、異なる形のたくさんのピースをハメ合わせて、大きなパズルを完成させるようなものです。

目的を果たすための必須機能 マネジメント

組織においてマネジメントを司るのが、マネジャーです。

米国の経営学者であるロバート・カッツ氏は、組織における職層に応じた職務スキルの違いをカッツモデルとして提唱しています。

その中で、マネジャーには3つの能力が求められるとしています。
①テクニカルスキル
②ヒューマンスキル
③コンセプチュアルスキル

テクニカルスキルとは、業務を遂行する上で必要となる専門的知識や技術、業務遂行能力などのことで、内容は職務内容によりさまざまです。

また、ヒューマンスキルとは、他者との良好な人間関係を構築・維持するために必要な能力や技術です。

最後のコンセプチュアルスキルは、概念化能力ともいわれますが、その意味を表現するのが難しい言葉です。
ここでは、様々な文献からの引用で「知識や情報など複雑な事象を概念化し、抽象的な考えや物事の本質を見極める能力」と私なりに表現させていただきます。

さらに、カッツ氏は、マネジメントを、ローワー(下級)、ミドル(中級)、トップ(上級)の3階層に分け、上位であればある程、つまり経営者層であれば、コンセプチュアル・スキルの重要性が高まると指摘しています。

現代は、VUCA時代とも呼ばれる通り、変動的(Volatility)で、不確実(Uncertainty)、さらには複雑(Complexity)で曖昧(Ambiguity)な環境下にあります。

人的問題では、労働力不足、働き方改革、多様性、賃金是正などの課題があります。
また、以前より普及が求められていたデジタルですが、コロナ禍の環境変化によって加速化したと言えます。
更に円安などの為替問題などの金融課題も多岐に渡ります。

これらの状況は、労働者が、与えられていた仕事をこなすだけの単純労働(ルーチンワーク)だった時代から、知識労働(ナレッジワーク)の時代に変えようとしています。
ナレッジワークとは、クリエイティブジョブなどともいわれる、知識により付加価値を生み出す創造性のある仕事を意味します。

故に経営学者のピーター・ドラッカー氏は、カッツ氏が提唱したモデルに対して、マネジャーに限定することなく、すべての労働者層にコンセプチュアルスキルが求められる時代だと説いています。

VUCA時代が求めるコンセプチュアルスキルですが、テクニカルスキルなどとは異なり、答えがないだけに、画一的な学習で習得できるものではありません。
多くのコンセプチュアルスキルを発揮すべき実践機会と対峙して、成功するにしても、失敗するにしても、体験値を高める以外にないと考えます。
勿論、その過程で、テクニカルスキルもヒューマンスキルも習得しなければなりません。

そのための方法論ですが、様々であると言えます。
例えば、マネジメントの定番的なフレームワークともいえるPDCAサイクルもその一つであると捉えています。

そもそものカッツモデルもですが、PDCAサイクルも、既に古い理論とする方々も少なくありません。
私は既成の理論を古いと切り捨てるだけではなく、現代に適合できる部分が多いのであれば、アレンジして活用する派です。

そもそもPDCAサイクルとは、目的あるいは目標を達成することを前提として、PDCAを何度も回し続けることで、最短距離を探りながら、前進を続けるフレームワークです。

そのために仮説である計画(PLAN)を立て、実行(DO)でやり切ることで、素早く検証(CHECK)することが大切です。

そして、一般的に、4つめのフェーズは改善(ACTION)ですが、私は、調整(ADJUST)という考え方を取り入れています。

・計画(PLAN):目的や目標を達成させたり、問題を解決するために何をすべきか仮説を立てる企画力。
・実行(DO):失敗を恐れるのではなく、それも含めて仮説を立証するためにやり切る実行力。
・検証(CHECK):計画に対する実行結果のギャップを頻繁に振り返るロジカルシンキング(論理的思考)力。
・調整(ADJUST):検証を基にして、次のサイクルにつなげるラテラルシンキング(水平思考)力。

その他、応用力、洞察力、直感力、決断力、俯瞰力、柔軟性、受容性、先見性、あるいは、虫の目・鳥の目・魚の目などの複眼視点、さらには、知的好奇心、探究心、チャレンジ精神など様々な能力を蓄積、磨かねばなりません。

その意味でもPDCAサイクルを回し続けることで、様々なスキルが蓄積され、自然と発揮する機会も増え、自ずとコンセプチュアルスキルが習得されて行くと考えております。

故に、組織では、マネジャーは当然ながら、個々が、常にPDCAサイクルを回すことを意識することを推奨させていただきます。

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