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自社のポジショニングを把握する #151 競走地位別戦略

現代は、物事の不確実性が高く、将来の予測が困難な環境下にあります。
順風満帆に進んでいたと思えば、突然、嵐に飲み込まれないとも限りません。

それだけに、各企業は、市場における自社の立ち位置を見失わないことが非常に重要となってきます。

例えば、目標設定です。
ターゲット市場において、現状の位置づけと、将来の望むべき位置を具体化する必要がありま。
その上で、それを戦略に反映させなければなりません。

マーケティングの第一人者であるフィリップ・コトラー氏が称えた理論の一つに競争地位4類型があります。
ターゲット市場において、そこに参入する企業を4つのポジション(競争地位)に分けて、その戦略を考えるフレームワークです。

その分類は、経営資源を相対的な(質)と(量)の切り口で分けます。

経営資源独自性(質)とは、製品やサービスのパリュープロポジションの高さを意味します。
パリュープロポジションとは、USPとも言いますが、顧客が望む価値であって、他社が提供できない、自社だけが提供できる独自の価値を意味します。

経営資源力(量)とは、マーケットシェア(市場占有率)の大きさであったり、それに裏づけされた経済力などとなります。

具体的には、次の4類型です。

①リーダー
ターゲット市場でトップシェアを誇る唯一の企業であり、経営資源の(質)が高く、(量)も大きく、競合他社に対して高い優位性を有している企業です。
マーケットシェアでは、寡占市場の場合は、1社で市場シェアの50%前後を占めるケースもあり、一般的には20%前後を占めているといわれます。

②チャレンジャー
リーダーに追従する先頭集団(複数社存在するケースもある)で、(量)は大きなものの、(質)が低い傾向の企業です。
マーケットシェアでは、寡占市場であれば市場シェアの20%前後、一般的には10%前後を占めているといわれます。

③フォロワー
チャレンジャーを追従する複数の企業で、(質)は低く、(量)も少ない企業で、競争力が低い立場にあります。
マーケットシェアでは、寡占市場であれば市場シェアの10%前後、一般的には5%前後を占めているといわれます。

④ニッチャー
(量)は小さいものの、(質)は高い位置にある企業です。
つまり、バリュープロポジションと呼ばれる製品やサービスを保持しています。
シェアや売上高は低いものの、独自の価値を提案できることで、高い利益を生み出すことができます。
マーケットシェアでは、寡占市場であれば市場シェアの10%以下、一般的には5%以下になるといわれます。
コトラー氏は、それぞれのポジション(競争地位)にある企業は、決して同じ戦略を布いてはならず、それぞれが独自の戦い方をすべきと説いています。

そのために自社の置かれた環境を分析した上で、STPを実施します。
STPとは、セグメンテーション(Segmentation:市場細分化)、ターゲティング(Targeting:狙う市場や顧客層の設定)、ポジショニング(Positioning:自社の立ち位置の明確化)の頭文字をとったものです。

セグメンテーションによって、市場や顧客層を様々な切り口で区分して、それぞれの特性を探ります。
そして、セグメンテーションによって、細分化された市場や顧客層のどこを需要獲得のターゲットとすべきかを決定します。
また、ターゲットとした市場で追及すべき競合他社との位置関係であるポジショニングを決定します。

ポジショニングを可視化させる手法で一般的なのが、縦・横の2軸で構成される2次元4象限のポジションマップです。
相関性のない2軸を取ることによって、価値の高いポジションが可視化されてきます。

例えば、以上のポジションマップでは、縦軸を低価格重視に対して、高額ではなくサービス重視に設定してみました。
また、横軸では、デザイン重視に対して性能重視にしてみました。
その場合、既に先行して市場に存在する競合が4社存在するとして、後発参入する自社は、どこのポジションを狙うのかです。
円の大きさは、シェアと考えていただけたらと思います。
イメージとして、高性能ながら、通販やインターネットを最大限活用したサービスでコスト削減して低価格で提供できたら、後発での参入も可能かもしれません。

それらを踏まえて立案させるべきが、競争地位別戦略です。
それぞれのポジション別の戦略イメージです。

①リーダーの戦略=守りの戦略
市場を拡大させることで、大きなシェアを持つリーダーは、売り上げも増大し、より、経営資源力が大きくなります。
また、市場を拡大しても、シェアが低下しては意味がありませんので、既存市場のシェアを維持し、可能であれば拡大して、その地位を一層強固なものにする必要があります。

②チャレンジャーの戦略=攻めの戦略
重要なのは、マーケティングのSTPであるターゲティング(攻撃すべき企業)となります。
リーダーとの(質)や(量)で上回っていたり、差がなければ、リーダーをターゲットにします。
あるいは、リーダーとの格差が大きいのであれば、まずは、同じチャレンジャーの企業やフォロワーの企業を攻めることで、(質)や(量)を高めて行く必要があります。
そのためには、正面攻撃、側面攻撃、包囲攻撃、迂回攻撃、ゲリラ攻撃などの施策例があります。

③フォロワーの戦略=リーダーの模倣戦略
(質)と(量)が共に劣る厳しいポジションにありますので、それを補うために、リーダーの真似をすることで、研究開発や失敗による経費や時間を抑えます。
リターンは少ないですが、リスクも少なくすることが可能です。
具体的には、模倣(カウンターフィター)、酷似(クローナー)、類似(イミテーター)、改良(アダプター)などの製品やサービスを投入します。

④ニッチャーの戦略=ニッチ戦略
市場をマーケティングのSTPであるセグメントをして、特にリーダー企業がカバーできない小規模な隙間市場(ニッチ市場)でリーダーを目指します。
ただし、(量)が小さいだけに、リーダーなどの大きな企業に攻められると、ニッチ市場そのものが消し飛ぶリスクがあります。
そのため複数のニッチ市場を構築することが重要となります。

市場において、リーダーやニッチャーは、比較的、高い収益性を得られるものの、フォロワーは相対的に収益性が低くなる傾向があるとされています。
リーダーは特に経営資源力(量)の大きさを活かして大きなシェアを維持・拡大できますし、ニッチャーは経営資源独自性(質)の高い製品やサービスによって高い利益を上げることができます。
チャレンジャーは、この二者の中間的な立場にあろうかと思います。
対して、フォロワーは、(質)も(量)も優位性を生み出す要素がない中途半端な立場にあります。

結局、市場では、リーダーを目指すべきなのか、ニッチャーを目指すべきなのかの両極で、戦略が異なってくると考えるべきです。
逆に、そのポジショニングが曖昧なまま参入すると、その市場における存在意義がなくなってしまうと考えるべきです。

自社の現在のポジションを理解した上で、それに基づいた戦略を立案するには、ランチャスター戦略に通じる理論でもあると考えます。
正に、圧倒的な兵力の低さを縦に長い地を利用した桶狭間の戦いを思い出させてくれます。

ポジショニングの基本は、競合企業との差別化です。
差別化とは、顧客が望む自社が提供できる独自の価値である「バリュー・プロポジション」に他ならないと考えます。

そもそも顧客が望まない製品やサービスを提供しても価値は生み出せません。
仮に顧客が望む価値を提供できても、それが競合企業に簡単に模倣されるようでは価値は失せてしまいます。
よって、経営にとって、このバリュー・プロポジション(USP)の強化は非常に重要となります。

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