VET X Talks

VET X Talks(ベット・クロストークス)は、動物好きの幅広い皆さんに獣医学研究…

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VET X Talks(ベット・クロストークス)は、動物好きの幅広い皆さんに獣医学研究の面白さをご紹介する連載です。東京大学・獣医臨床病理学研究室の前田真吾先生がホストとなり、さまざまな獣医学研究者をお招きして、カジュアルな対談を通じてその魅力をお伝えしていきます。

最近の記事

X Talks 7.4 - 共に育ち、育む

「挑戦」から「教育」のフェーズへ --:では最後に恒例の質問です。栗原先生にとって獣医学とは? 栗原:僕にとっての獣医学は、ここまでは ”挑戦" でした。これからの僕にとっての獣医学とは、"教育" です! --:人生のフェーズが変わったということですか? 栗原:はい、ここまでの僕にとっては、獣医学って挑戦だったんです。レジデントに応募するのも、色々な試験を受けるのも、それから会社を作るのも。米国獣医画像診断専門医の資格を取ったので、欧州獣医画像診断医も取ろうと

    • X Talks 7.3 - 過去を生かすも殺すも "いま" 次第

      過去は変えられる --:前田先生の泌尿器に関する研究は、岐阜大から東大の大学院に行って、その後さらに環境が変わったからこその出会いなんですね。 前田:岐阜大から東大(の大学院)に行った時にも、分野が変わったんです。学部時代は皮膚とアレルギーを研究していました。東大の内科に来た時にも、アレルギー(の研究)を続けられると思ったんですが、その時も当時の教授から「アレルギーはダメだ」と言われてしまって…(笑)。 --:前田先生のコントロールが効かない状況だったわけで、運命

      • X Talks 7.2 - 運を掴む鍵:挑戦、縁、最大限の努力

        ベストフレンズ --:栗原先生の人生に影響を与えた "3人のおじいちゃん" について、教えてください。 栗原 学先生(以下、敬称略):ロンとポールとボブっていう3人です。ロンが一番年上で、55歳までテキサスA & M大学の教授だったんです。なんですが…、いきなり「スイスに住んでみたい」って大学を辞めて移住しちゃったクレイジーな人です。しばらくしたらスイスにも飽きて、イランで獣医師のレジデントシステムを立ち上げたりしていて…。バイタリティ溢れるすごい先生です。 釣り

        • X Talks 7.1 - "The logic" の画像診断と "3人のおじいちゃん"

          病気の原因を探る画像診断 --:「画像診断専門医」というのは、どんなお仕事なのですか? 栗原 学先生(以下、敬称略):病気には原因があります。(ヒトを診る)医療でも獣医療でも同じですが、それを突き止めるのが診断です。血液検査と並び、病気の原因を突き止める大きな役割を担っているのが画像診断です。 画像診断によって病気が治ることはありませんが、診断なくして治療はありません。もちろん、すべての病気とその原因がわかっているわけではないので、診断がつかない場合もあります。

        X Talks 7.4 - 共に育ち、育む

          X Talks 6.4 - みんなが幸せで楽しい社会に

          医学部のような体制に向けて --:これまでうかがったお話から、獣医学研究者も臨床獣医師も、それから女性も男性も、キャリアを積むうえで解決すべき制度面での課題はまだまだ多いですね。藤原先生は、今後も臨床研究の中で後進を育てながら、女性の研究者がいればサポートしていかれるのですね? 藤原亜紀先生(以下、敬称略):引き続き、女性の獣医師が臨床を長く続けられるような環境づくりに取り組みたいですね。私はある程度の立場もできたので、色んなことを気にせず言えるようになりました。たぶ

          X Talks 6.4 - みんなが幸せで楽しい社会に

          X Talk 6.3 - 安心してキャリアを積むためには?

          産休・育休中とその後の課題 --:前回の対談で藤原先生がおっしゃったように、女性の場合、やはり出産という現実的な問題で仕事を続けることが難しいこともありますね。 藤原亜紀先生(以下、敬称略):出産は、本人が納得したタイミングが一番良いと私自身は思っています。私はキャリアアップが遅くなると焦りを感じると思ったので、少し仕事の経験を積んでからにしました。 でも生物学的な観点から言えば、何も考えずに妊娠したタイミングで産むのが苦労しないと正直なところ思います(笑)。もしも

          X Talk 6.3 - 安心してキャリアを積むためには?

          X Talk 6.2- 誰もが働きやすい社会に

          「男だから」「女だから」 --:今回、初めて女性の先生をお迎えしました。センシティブな話かもしれませんが、獣医学研究者や大学教員として「女性だから」という理由で不自由を感じることはありますか? 藤原亜紀先生(以下、敬称略):私の場合、何かの時に「女性だから選ばれた」と言われるのが嫌だったので、明確に実績を残すよう常に努力するようにしていました。そういう女性はたぶん多いんじゃないかなと思います。 時には、「あ~、女性だからね」みたいな雰囲気を感じる時もありますが(笑)、

          X Talk 6.2- 誰もが働きやすい社会に

          X Talk 6.1- 呼吸器疾患に悩む動物たちを救いたい!

          たくさんの動物たちを救うために --:藤原先生は臨床研究に熱心だとうかがいました。前田先生も同じですが、藤原先生も臨床だけでなく、研究だけでもなく、どちらにも携わっておられるのはなぜですか? 藤原亜紀先生(以下、敬称略):臨床だけだと、目の前の子(動物)しか助けられませんよね。臨床現場で「おかしいな」と思ったことを解決して、自分が直接診ていなくても、世界中で同じ病気に苦しんでいる子たちを助けるための研究が大切だと思います。特に私の分野は論文数なども限られているので、

          X Talk 6.1- 呼吸器疾患に悩む動物たちを救いたい!

          X Talk 5.4- 異文化の中で暮らして学んだ"寛容"である大切さ

          大きく異なる死生観 前田先生(以下、敬称略):アメリカは、動物の治療費も高いそうですね? 福島先生(以下、敬称略):高いですよ。例えば糖尿病のケトアシドーシス(*)で入院すると、一晩で1000ドル以上はかかります。 前田:それは高い! 福島:だから、払えなくて安楽死ということもあります。「助かるかもしれないけどな…」と思いながらも、「妥当な判断だと思います」とお話します。残念ですが、それもご家族の選択です。 前田:そこは難しいですね。 福島:安楽死のハー

          X Talk 5.4- 異文化の中で暮らして学んだ"寛容"である大切さ

          X Talk 5.3- 日本の獣医療がもっと良くなるためには?

          進路を決めるシステムにも学ぶべきものが --:ところで、アメリカでは獣医師の給料が高いと聞いたことがあります。 福島先生(以下、敬称略):僕が教えていた学生の1人は、救急病院に就職しました。週4日勤務で、日本円に直すと1200万円くらいの年収だそうです。救急は忙しくて人気がないから給料が良いらしいですが、新卒で救急の専門医でもないのに、そのくらい稼いでいる獣医師は実際にいます。 前田先生(以下、敬称略):ひえ~、新卒でそのお給料はすごい。為替が円安なのもあるとは思

          X Talk 5.3- 日本の獣医療がもっと良くなるためには?

          X Talk 5.2- 理想的な環境で幅広い学びが得られるアメリカ

          対等な獣医師として若手にも敬意を払う --:前回、アメリカでは日本よりも臨床研究が評価され予算も確保しやすいとうかがいました。向こうに行かれた最大の理由は、臨床研究ですか? 福島先生(以下、敬称略):日本での診察や臨床研究に閉塞感を感じていたのは事実です。でも、一番の決め手はアメリカの専門医と会ってお話しする機会があったことです。知識の広さと深さが桁違いなのが衝撃でした。「このまま日本にいたら、こうはなれない」と思ったんです。 --:アメリカの環境は、福島先生の期

          X Talk 5.2- 理想的な環境で幅広い学びが得られるアメリカ

          X Talk 5.1- 日本も見習うべき?アメリカの獣医学教育と教員評価システム

          ベット・クロストークスでは、これまで4人の獣医学研究者に登場していただきました。“研究”という観点から前田先生と語り合う様子を通して、獣医学の魅力をご紹介しました。今回のSeason 5では少し角度を変えて、動物とその飼い主に向き合う“臨床獣医師”として、福島先生と前田先生にお話していただきます。 「僕はどこまでいっても臨床獣医師です。ヒト医学の役に立たなくても、『目の前の犬や猫が助かればいいじゃん』って。そんな獣医学の臨床研究がやりたいんです」とおっしゃる福島先生。5年

          X Talk 5.1- 日本も見習うべき?アメリカの獣医学教育と教員評価システム

          X Talk 4.4- “共育”に大切な「知る」と「分かる」

          時代に合わせた分かりやすさ --:最近は、考えることを省略する傾向が強いのでしょうか? 前田貞俊先生(以下、貞俊先生):課題を与えられた時、学生さんはまず、何を解決しなければいけないかを考える必要があります。「この部分に問題がありそうだ。まずここを明らかにしないと次のステップに行けないな」というような。昔の学生は、10分くらい考えると、ある程度それができていた印象があります。 今は、それができない傾向があります。じっくり腰を据えて、問題を深く考えることに慣れていない

          X Talk 4.4- “共育”に大切な「知る」と「分かる」

          X Talk 4.3-人生は研究だ!試行錯誤で切り拓く

          研究をもっと魅力的に --:「トランスレーショナルリサーチセンター」は、獣医療が他分野と連携した研究を進めるのが目的ですね。 前田貞俊先生(以下、貞俊先生):もう一つ狙いがあります。獣医学を学んでいる若い人たちに、研究に興味をもってもらう場にしたいとも考えています。(センターでの経験を通じて)学生が研究の道に進んでもらえたらな、と思っています。 前田真吾先生(以下、真吾先生):それ、すごくいいですね!きっと学生さんも興味を持ってくれるんじゃないでしょうか?僕が学生だ

          X Talk 4.3-人生は研究だ!試行錯誤で切り拓く

          X Talk 4.2-点と点を情熱でつなげる

          “たまたま”の産物? --:前回おうかがいしたように、トランスレーショナルリサーチセンターでは、獣医学と医学や薬学などが連携して研究をされるわけですね。前田(貞俊)先生が何十年も温めて来られたアイデアとのことですが、実現に至ったきっかけは何だったのでしょうか? 前田貞俊先生(以下、貞俊先生):岐阜大学の方向性が大きく変わったのがきっかけでした。地方の国立大学は今、生き残り競争が熾烈になっています。国からの運営費交付金が減額される中で、(結果が分かりやすい)プロジェクト型

          X Talk 4.2-点と点を情熱でつなげる

          X Talk 4.1- 獣医学がヒトの病気を治す

          Season4は、そんな旧知の“マエダ・マエダのおふたり”に、獣医学研究の目指すべき道について語り合っていただきました。ざっくばらんに、でも熱く。 “トランスレーショナル” というアプローチ 前田真吾先生(以下、真吾先生):前田先生、お久しぶりです!最後にお会いしたのはコロナ前でしたね。久しぶりに膝を突き合わせてお話しできてワクワクします。変わらずエネルギッシュでお元気そうですね。うれしいです! 前田貞俊先生(以下、貞俊先生):元気ですよ!前田君の活躍も聞いてます。早

          X Talk 4.1- 獣医学がヒトの病気を治す