VET X Talks

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VET X Talks(ベット・クロストークス)は、動物好きの幅広い皆さんに獣医学研究の面白さをご紹介する連載です。東京大学・獣医臨床病理学研究室の前田真吾先生がホストとなり、さまざまな獣医学研究者をお招きして、カジュアルな対談を通じてその魅力をお伝えしていきます。

最近の記事

X Talk 5.4- 異文化の中で暮らして学んだ"寛容"である大切さ

大きく異なる死生観 前田先生(以下、敬称略):アメリカは、動物の治療費も高いそうですね?   福島先生(以下、敬称略):高いですよ。例えば糖尿病のケトアシドーシス(*)で入院すると、一晩で1000ドル以上はかかります。 前田:それは高い!   福島:だから、払えなくて安楽死ということもあります。「助かるかもしれないけどな…」と思いながらも、「妥当な判断だと思います」とお話します。残念ですが、それもご家族の選択です。   前田:そこは難しいですね。   福島:安楽死のハー

    • X Talk 5.3- 日本の獣医療がもっと良くなるためには?

      進路を決めるシステムにも学ぶべきものが --:ところで、アメリカでは獣医師の給料が高いと聞いたことがあります。   福島先生(以下、敬称略):僕が教えていた学生の1人は、救急病院に就職しました。週4日勤務で、日本円に直すと1200万円くらいの年収だそうです。救急は忙しくて人気がないから給料が良いらしいですが、新卒で救急の専門医でもないのに、そのくらい稼いでいる獣医師は実際にいます。   前田先生(以下、敬称略):ひえ~、新卒でそのお給料はすごい。為替が円安なのもあるとは思

      • X Talk 5.2- 理想的な環境で幅広い学びが得られるアメリカ

        対等な獣医師として若手にも敬意を払う --:前回、アメリカでは日本よりも臨床研究が評価され予算も確保しやすいとうかがいました。向こうに行かれた最大の理由は、臨床研究ですか?   福島先生(以下、敬称略):日本での診察や臨床研究に閉塞感を感じていたのは事実です。でも、一番の決め手はアメリカの専門医と会ってお話しする機会があったことです。知識の広さと深さが桁違いなのが衝撃でした。「このまま日本にいたら、こうはなれない」と思ったんです。   --:アメリカの環境は、福島先生の期

        • X Talk 5.1- 日本も見習うべき?アメリカの獣医学教育と教員評価システム

          ベット・クロストークスでは、これまで4人の獣医学研究者に登場していただきました。“研究”という観点から前田先生と語り合う様子を通して、獣医学の魅力をご紹介しました。今回のSeason 5では少し角度を変えて、動物とその飼い主に向き合う“臨床獣医師”として、福島先生と前田先生にお話していただきます。   「僕はどこまでいっても臨床獣医師です。ヒト医学の役に立たなくても、『目の前の犬や猫が助かればいいじゃん』って。そんな獣医学の臨床研究がやりたいんです」とおっしゃる福島先生。5年

        X Talk 5.4- 異文化の中で暮らして学んだ"寛容"である大切さ

          X Talk 4.4- “共育”に大切な「知る」と「分かる」

          時代に合わせた分かりやすさ --:最近は、考えることを省略する傾向が強いのでしょうか?   前田貞俊先生(以下、貞俊先生):課題を与えられた時、学生さんはまず、何を解決しなければいけないかを考える必要があります。「この部分に問題がありそうだ。まずここを明らかにしないと次のステップに行けないな」というような。昔の学生は、10分くらい考えると、ある程度それができていた印象があります。   今は、それができない傾向があります。じっくり腰を据えて、問題を深く考えることに慣れていない

          X Talk 4.4- “共育”に大切な「知る」と「分かる」

          X Talk 4.3-人生は研究だ!試行錯誤で切り拓く

          研究をもっと魅力的に --:「トランスレーショナルリサーチセンター」は、獣医療が他分野と連携した研究を進めるのが目的ですね。   前田貞俊先生(以下、貞俊先生):もう一つ狙いがあります。獣医学を学んでいる若い人たちに、研究に興味をもってもらう場にしたいとも考えています。(センターでの経験を通じて)学生が研究の道に進んでもらえたらな、と思っています。   前田真吾先生(以下、真吾先生):それ、すごくいいですね!きっと学生さんも興味を持ってくれるんじゃないでしょうか?僕が学生だ

          X Talk 4.3-人生は研究だ!試行錯誤で切り拓く

          X Talk 4.2-点と点を情熱でつなげる

          “たまたま”の産物? --:前回おうかがいしたように、トランスレーショナルリサーチセンターでは、獣医学と医学や薬学などが連携して研究をされるわけですね。前田(貞俊)先生が何十年も温めて来られたアイデアとのことですが、実現に至ったきっかけは何だったのでしょうか?   前田貞俊先生(以下、貞俊先生):岐阜大学の方向性が大きく変わったのがきっかけでした。地方の国立大学は今、生き残り競争が熾烈になっています。国からの運営費交付金が減額される中で、(結果が分かりやすい)プロジェクト型

          X Talk 4.2-点と点を情熱でつなげる

          X Talk 4.1- 獣医学がヒトの病気を治す

          Season4は、そんな旧知の“マエダ・マエダのおふたり”に、獣医学研究の目指すべき道について語り合っていただきました。ざっくばらんに、でも熱く。 “トランスレーショナル” というアプローチ 前田真吾先生(以下、真吾先生):前田先生、お久しぶりです!最後にお会いしたのはコロナ前でしたね。久しぶりに膝を突き合わせてお話しできてワクワクします。変わらずエネルギッシュでお元気そうですね。うれしいです!   前田貞俊先生(以下、貞俊先生):元気ですよ!前田君の活躍も聞いてます。早

          X Talk 4.1- 獣医学がヒトの病気を治す

          番外編-VET X Talks に込めた想い③:与えられるものこそ、与えられたもの

          楽しいからやっている獣医学研究。その先に… --:前田先生にとって獣医学研究とは?   前田:なんでしょうね…。うーん、、やっぱり自分にとっては趣味みたいな感じかもしれないです(笑)楽しいからやっていることというか…。   「動物を助けたい!」という思いから研究を始める人もたくさんいると思います。そういう高い志で研究を始められることは、本当にすばらしいと思います。でも、僕の場合はスタート地点が少し違いました。僕にとっての研究は、まず自分のためというか、自分が興味のあるもの、

          番外編-VET X Talks に込めた想い③:与えられるものこそ、与えられたもの

          番外編-VET X Talks に込めた想い②:共に学びあう“共育”という考え方

          獣医学研究の魅力を伝えようと始めたこの連載ですが、それ以外にも色々なことに気づかされます。私(筆者)にとっても学びが多いこの連載。特に、「“きょういく”は、“上の人間が下の人間に教えて育てる”ことではない」という前田先生の哲学にはとても共感しました。 研究者に共通するのは好奇心 --:「クロストークス」とあるように、前田先生は対談形式をチョイスされました。これには理由があるのですか?   前田:「人生は研究だ!」というのが僕の考え方なのですが、僕以外の先生方は研究をどう考

          番外編-VET X Talks に込めた想い②:共に学びあう“共育”という考え方

          番外編-VET X Talks に込めた想い①:「研究っておもしろい!」を伝えたい

          研究と聞くと、「難しいこと」「私には縁がないもの」と感じる人が多いと思います。でも、前田先生にとっての研究は「人生そのもの」だそうです。“Life is Research!”という考え方には、なるほどと思わされました。 研究は身近で面白い --:改めて、VET X Talksを始めた理由を教えてください。   前田真吾先生(以下、敬称略):純粋に、「研究っておもしろいんだよ!」ということを知って欲しい、という思いですね。学生さんはもちろんですが、できるだけ多くの人にそれを

          番外編-VET X Talks に込めた想い①:「研究っておもしろい!」を伝えたい

          X Talk 3.4- “やれること” から“やりたいこと”へ

          コミュニケーションと“人間力” 前田:「松竹梅のどれ?」って聞いた飼い主さん、佐伯くんは梅ってことを言いたかったのかね? 佐伯:それはもちろん、そうじゃないですか(笑) 当時はまだ若かったですが臨床経験もある程度積んでいたので、飼い主さんと信頼関係がない状態で手術すべきでないことも分かっていました。 なので「僕と飼い主さんに信頼関係がないと、どんな結果でも良いことにはならないと思います。成功する自信はありますが、不安があれば上の先生と代わりますがどうしますか?」と率直に

          X Talk 3.4- “やれること” から“やりたいこと”へ

          X Talk 3.3 - 獣医師に大切なのは人間力

          経験を重ねて一流をめざす 前田:学部生のときだけでなく、大学院を出た後も、アメリカに留学したよね?   佐伯:ロサンゼルスの近くでヒトの乳がんの研究をしました。ヒトの乳がんは、基本的にイヌの場合とはまったく違います。…と同時に、ヒトの乳がんで困っていることが、イヌの乳がんに似ている部分もあるんです。 両方知ったからこそ、できることがあると思います。色んな経験をしていくと、一つ一つが重なって自分ならではの知見、強みが得られるような気がします。   前田:本当にそう思う。  

          X Talk 3.3 - 獣医師に大切なのは人間力

          X Talk 3.2- たくさんの学びをくれた “超絶挫折”

          待ってるだけの日々… --:前回、エジンバラ大学への留学でご苦労をされたとうかがいました。何があったのですか? 佐伯:すごく楽しみにして行きました!でも…、研究が全然うまく行かなかったんです。犬の胃がんの細胞株が新しくできたから、「キミが来たらその幹細胞を探して欲しい」と言われてたんですが。   前田:犬の胃がんって、かなり珍しいね。   佐伯:そうなんです。で、やってみると、できたての細胞株でぜんぜん増殖しなかったんです!普通、がんの細胞株って3日も経てば "コンフル"

          X Talk 3.2- たくさんの学びをくれた “超絶挫折”

          X Talk 3.1- きっかけは「何となく」

          前田先生が少し先輩ですが、同世代のおふたりは波長が合うようです。和やかな雰囲気の中、挫折も含めた経験や環境から学ぶ大切さ、“何となく”といった直感に従う姿勢などがざっくばらんに語られます。ベット・クロストークスの3rd シーズンでは、懐かしい思い出から将来の夢までを4回にわたってご紹介します。 内科と外科の同世代コンビ --:すごく和気あいあいとした雰囲気ですね。   佐伯亘平先生(以下、敬称略):一緒に働いていた時代もあります。付き合いは、いつ頃からでしたっけ?   前

          X Talk 3.1- きっかけは「何となく」

          X Talk 2.4-人生は研究だ!

          研究者は退屈が苦手 --:常に何かを追求するというのが、おふたりにとってのエネルギー源なんですね。   前田:とにかく、自分が「おもしろい!」って思えることをやりたいですね。   茂木:僕もそうですね。退屈がダメなんです。僕にとって辛いのは、同じ作業を繰り返すことです。人生で一番辛かったのは、クリスマスケーキにトリュフ(チョコレート)を3個ずつ乗せる仕事。 「もう5時間は経っただろう」と思って時計を見ると、まだ1時間…。その後は、”うつろ” になりながらやってました。「2

          X Talk 2.4-人生は研究だ!