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アオハルVチューバー〜連載まとめ(全42話 完結済)

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連載小説です。ゲーム関連のYouTube公式動画を埋め込んでいます。普通の書籍では実現できないことができて楽しいです。kei02様のイラストが素敵なので使用させていただいています。
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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第42回配信 アオハルVチューバー、完結!

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第42回配信 アオハルVチューバー、完結!

 式場に着いたら、シャワーを浴びて、新しい燕尾服を着た。そう都合よく式場にシャワーがあるのは、転ゲーがプレイヤーの願望を叶えてくれる設定になっているからである。

「入場は派手なのがいいな」

 一言そう言っただけで、僕はステージの下からドゴーンと飛び出され、マイケルジャクソンよろしくピタッと着地した。

「ユメオーっ!!」

 チュンチュンとエドはるみの黄色い歓声が飛ぶ。エドはるみはグーググーを

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第41回配信 いざ結婚式場へ!

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第41回配信 いざ結婚式場へ!

 いよいよ結婚式の日を迎えた。

「やっぱり眠れなかった」

 エリスが言い、

「僕も」

 このときほど、転ゲーを始めるのに緊張したときはなかった。

 ベッドギアを被り、ベッドに横になる。

 右耳のボタンを押して、ゲームスタート!

 * * * * *

 僕はバッターボックスにいた。

 燕尾服を着て。
 
「あ、もう着替えちゃってる」

 僕は慌ててタイムしようとしたが、大谷選手はス

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第40回配信 相手に求める条件は、生きてることだけ

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第40回配信 相手に求める条件は、生きてることだけ

 ゲームを終了して、エリスを見た。

 エリスの顔は、幸福そうに見えた。

 僕はベッドに坐ったまま咳払いをした。

「今日の視聴者数は、どうだった?」

 話のとっかかりとして、まずはそれを訊いた。

「30人」

 エリスの答えを聞いて、さすがにガッカリした。

「30人かー。前回は150人までいったから、5分の1に減ったね」

「仕方ないよ。3日も休んだし」

「ゲームも進まなくて、ほとんど

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第39回配信 交際0日で結婚?

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第39回配信 交際0日で結婚?

 翌日、ようやくお互いの気持ちが落ち着き、4日ぶりにユメエリちゃんねるのライブ配信を再開できた。

 1回裏の攻撃、ツーアウトランナー1塁、リアル二刀流大谷投手との初対決のシーンからだった。

 するとすぐに、チャットが入った。

♠︎ザクロ石:よっ、お久しブリーフww

♣︎タマゴかけご飯:待ってました!

♠︎糖尿病:高校生だから、テスト勉強でもしてたかな?

♣︎顔しゃもじ:なにしてたの?

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第38回配信 大きければ大きいほどいいのか?

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第38回配信 大きければ大きいほどいいのか?

 その日、エリスの家から帰るとき、玄関でお父さんに呼び止められた。

「これで3日間、ライブ配信を休んだね。部屋でなにしてたの?」

 僕はヒヤリとしたが、お父さんの目は笑っていた。

「なーんてね。ユメオくんのことは信頼しているよ」

「ありがとうございます」

「しかし問題はエリスだ。昨日、あいつのきみを見る目は、女になっていた。ユメオくんも気がついたろ?」

 僕はこの会話が、リビングにいる

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第37回配信 男と女の好きなところ

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第37回配信 男と女の好きなところ

 その日は、エリスが好きなことをご両親に告白したり、エリスの部屋でもう少しでキスしそうになったり、HGのモノマネが全力でスベったりしたので、配信をする時間がなくなった。

 なので翌日は、ビシッといつもの時間に準備を整えた。

 しかしーー

「ユメオ」

 昨日の告白が生み出したムードは、今日も続いていた。

「好きよ」

「僕もだよ」

「ウフフ」

 エリスの目が、色っぽくなっている。

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第36回配信 チッパイエリス

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第36回配信 チッパイエリス

 エリスがキスを求めている。

 どうすればいいのか?

 もし、キスをすれば、それはもう、付き合ってるということだ。

 ついにエリスが、僕の彼女になる。

 夢にまで見たハッピーエンド!

 でも……

 本当にいいんだろうか?

 幸せにする自信がないくせに、勢いでキスをして、エリスを彼女にしてしまっても。

 それは、自分の決意したこととちがう。

 ついさっき、ご両親に向かって立派に「宣

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第35回配信 女の子に向かって好きと言うこと

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第35回配信 女の子に向かって好きと言うこと

「さっき話したのは、あくまでも理想論です。現実の僕は、エリスさんに対して、変なことを考えたりします。だから、本当に大切に想っているかと言うと、僕には自信がないのです」

「なんだ、そんなことか」

 お父さんがホッとしたように、膝を崩した。

「思春期なら、当たり前のことだ。僕なんか、思春期をとっくに過ぎたのに、年がら年中変なことを考えている」

「それはお父さんだけよ」

 今度のお母さんのツッ

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第34回配信 そして告白へ

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第34回配信 そして告白へ

 エリスの優しさに、涙が出た。

 僕は、お父さんから振られたモノマネで、とっさにHGをやるという、明らかな人選ミスを犯した。

 だからだろう。次に振られたエリスは、エドはるみさん(最終的にお父さんが当てた)の完コピに挑み、僕のミスが忘れ去られるような独特な空気をつくってくれた。

 あの「コォーーー!!!」の顔は、僕にとって、後光の射した女神の微笑みにほかならなかった。

「でも、エリス。よく

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第33回配信 娘さんをくださいと言いに行ったら、照れ隠しからモノマネ合戦になった件

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第33回配信 娘さんをくださいと言いに行ったら、照れ隠しからモノマネ合戦になった件

 雨降って、地固まる。

 エリスに部屋を追い出されて悩んだ結果、真剣な想いを伝えることができて、逆に2人の距離は縮まった。

「僕、お父さんとお母さんにも、キチンと話したいと思う」

 そう言うと、エリスが電話して、ご両親の都合を確かめてくれた。

「居間で待ってるって。パパもママも、緊張すると思うよ」

 エリスは嬉しそうだった。しかし僕に、それを喜ぶ余裕はなかった。

(誤解のないように、し

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第32回配信 心からの謝罪(K室氏との比較)

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第32回配信 心からの謝罪(K室氏との比較)

 放課後、ようやくエリスと話した。

「昨日はゴメンね。変な冗談言って。デリカシーがなかった」

 冗談だったということにして、謝ることにした。

 そこには触れずに会話をする、という方法をとる人もいるだろう。

 しかし僕は、人間関係がギクシャクした場合、自分から謝るのが、どんなときでも最善の方法だと信じている。

 そうしないと、日本と韓国とか、M迫さんと吉本とか、K室さんと元婚約者の方のよう

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第31回配信 学校にて

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第31回配信 学校にて

 転ゲーは、究極にリアルなゲームである。

 女性が飴を舐めればチュッチュと音がし、豪速球がバットをかすめれば、ツーンと焦げ臭い匂いがする。

 そうすると、ゲームをやめて現実に戻ったとき、音や匂いに対してやけに敏感になったりする。

(世の中って、こんなに音や匂いで充ちているのか。今までそれを当たり前のこととしてスルーしていたけれど、毎日転ゲーから刺激を受けるうちに、日常の音や匂いをやたらと面白

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第30回配信 危険なトーク

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第30回配信 危険なトーク

 ひとしきり頭を殴ったら、だいぶスッキリした。

「エリス、もう大丈夫だよ。スッキリしたから」

「……ユメオ、今日は休もう。ね?」

「平気だって。ほら、もういつもの配信時間を過ぎちゃったよ」

「こんな状態でさせられないよ。ねえ、なんで泣いてたのか話してくれる?」

 エリスが僕を、心から心配してくれていた。

(ああ、エリス。きみはなんていい子なんだ。きみにだけは、僕は隠し事をしたくない)

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第29回配信 彼女の部屋での闘い

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第29回配信 彼女の部屋での闘い

 一晩寝たら、昨日の妄想がバカらしく思えてきた。

(僕はなにを考えてたんだろう。エリスは昔からあんな感じじゃないか。単に人の欠点に寛容なだけだ。僕の性癖を見抜いて、似た者同士だと思ったわけじゃない。勝手に変態にしちゃってゴメンね、エリス)

 放課後、エリスと一緒に家に行き、リビングで紅茶をいただいた。

 エリスがクッキーを食べた。

 僕の心臓が、キュッとなった。

(ボリボリ、ボリボリ、ク

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