記事一覧
2024/07/10ブックガイド 素粒子
素粒子
ミシェル・ウエルベック
ウエルベックを一躍スターダムにのし上げた本作。ミシェルとブリュノという異父兄妹のクソ長い人生記。を何者かが語るという構図。虚構と現実。2人が見つけた天竺。でも幸福は過ぎていく。乱行パーティーやらNTRばっかだけどこれは紛れもなく愛の物語。生物学者のミシェルは自分の人生を生き、未来に何を残したのか。SF的な話の飛躍で終盤は一気に駆け抜けていく。本書は人間に捧げられる
2024/07/07ブックガイド セミ
セミ
ショーン・タン
我々読書家にとって最高の相棒とは?そう聞かれたら答えは一つ、絵本だ。体感40秒で読み終わるセミの一生。「セミ おはなし する。よい おはなし。かんたんな おはなし。ニンゲンにも わかる おはなし。」セミって思ってたよりもシニカルなんだな。このセミはチキショウ…とは泣かない。トゥク トゥク トゥク!
2024/06/25ブックガイド 無分別
無分別
オラシオ・カステジャーノス・モヤ
おれの精神は正常ではない、の一文から始まる本書。主人公は、千百枚に及ぶ大量虐殺の報告書の校閲という仕事に従事するなかでバッコリ精神を病んでいく。想像力はさかりのついた犬だ、の言葉通り、妄想が妄想を呼び分別を失っていく。それは勘繰りすぎじゃないか?というこちらの気持ちを完全に無視して暴走する姿にシリアスな笑いを感じた。夜勤明けでしんどい時の気持ちとフィール
2024/06/11ブックガイド クエーサーと13番目の柱
jgバラードのクラッシュからインスパイアを受けているとされている本書。作中でも言及されている。ネットでの評判は散々だが普通に面白かった。久保帯人ばりのライブ感とドライブ感。細かいことはいいんだよ!不思議なタイトルも最後まで読むと納得できる。終わり方がクソ純文学っぽくて余韻が残る。ラストの引用はRadioheadのAirbag。エンディングに相応しい。
2024/06/09ブックガイド モナドの領域
モナドの領域
筒井康隆
筆者曰く最後の長編。河川敷で女性の方腕が発見されて、その後パン屋さんで、美大生が女性の腕を模したパンを焼き上げ販売される。ミステリーっぽい導入から雲行きが怪しくなり、SFになって哲学に着地して時をかける。終盤はかなり小難しいが、展開自体は最後までワクワクさせられて流石筒井康隆と言わざるを得ない。すげー面白かった。