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俳優・新山はるの カナダのサムライガール、凛とした佇まいと不屈の心【SHOGUN出演】

今回インタビューさせていただいたのは、カナダのバンクーバーを拠点に俳優として活躍されている新山はるのさんです。2月からディズニープラスで配信されている「SHOGUN 将軍」にも出演されています。俳優活動を目的にカナダに来たわけではなかったが気がついたら演技する環境にいた。そして自分が行動しないと始まらないと力強くインタビューに答えてくださった新山さん。そんな新山さんの生き方や想いを少しおすそ分けしてもらった記事がこちらです。

主な出演作
SHOGUN 将軍(2024)
Perfect Blue(2022)
ウルトラマンタイガ(2019)
新米姉妹のふたりごはん(2019)

artistcastingexplorer.com

ダンス、ミュージカルを経て本格的に俳優へ

写真提供@新山さん

——俳優の道を志したきっかけは何でしたか?

5歳のときにクラシックバレエを始めたのですが、そこの発表会で舞台に立つ機会があったり、母はミュージカルが好きだったので劇団四季にもよく連れて行ってくれていました。そもそもはバレエで舞台へ立つことに抵抗がなかったことや、ミュージカルをよく見ていたので自分もやりたいと思ったのがきっかけですね。

——人前で何かをすることが好きでしたか?

好きだったんだと思います。住んでいた地域に子供ミュージカルがあって、小学校6年生の頃に自分で応募しました。オーディションへ行って、役を決めるプロセスも結構楽しいなと感じて、もっとやりたいなと思いました。そして高校進学を決めるタイミングで大阪に初めて演劇学科ができたんですよ。全国でも珍しい公立の演劇学科で、絶対にそこに進学したい!と思って勉強や実技試験に向けて練習しました。2倍以上の倍率でしたが、無事に入学することができ、学校では舞踊、声楽、演劇論や演劇史、日本の伝統芸能の狂言や日本舞踊など色々なことについて教えてもらいました。私は2期生なんですけど、全てが新しく綺麗で機材や環境が整った本当に良い学校でした。

——そこを卒業された方たちの中には演劇の道に進んだ方もいれば、卒業して別の進路に進まれた方もきっといらっしゃいますよね

そうですね。その学校の目的は、演劇を通してコミュニケーションを学ぶことだったので。でもほとんどの生徒さんはやっぱり俳優や声優さんになりたい、〇〇志望という子たちが多かったと思います。入学試験でも筆記試験に加えて実技試験もあるんですよ。歌やダンスの審査があって、その上位何名までが入学できるというシステムでした。

同期の中には有名なテーマパークや劇団に入っているパフォーマーもいます。他にもダンサーさん、舞台のプロデュース側の仕事についた方、また学校の先生、デザイナーなど芸能とは全く関係のないお仕事をしている方もいて色々です。

——演技やダンスを幅広く学ばれた中で最終的に演技をメインに決めたきっかけは何でしたか?

確かに授業では演劇に関して一通り学びますし、私は元々ダンスから始まってるんですけどミュージカルをやっている時から歌とお芝居が好きで、やっぱりできるようになると楽しいじゃないですか?楽しくてもっと頑張ると先生に褒められたり、パフォーマンスを見てくださった知らない方が声をかけてくれたり。それが楽しくて嬉しくて。在学中は演劇部に入っていたんですけど、私が所属していた演劇部ではミュージカルはなかったので、自然にお芝居をする時間が増えて、卒業してもお芝居を続けて行きたいなと思いました。

海外でのキャスティングで外見は重視されるか

写真提供@新山さん

——俳優の見た目はキャスティングに影響すると思いますか?

私の日本での経験では、俳優さんの認知度やファンの多さなど芝居以外の要素もキャスティングに大きく影響すると感じていました。容姿もその一つに感じることも少なくはなかったです。CMのオーディションに行くとモデルさんが8割くらい参加されていたりもしました。コメディータッチな内容や芝居が必要なものだと俳優の方が選ばれやすかった気がします。映画やドラマなどでのサポーティングポジションのキャラクターは書類だけで決まることもあったので、そうなると宣材写真と経歴のみでキャスティングされます。日本の業界では全ての役に対してオーディションを行う予算と時間が無いなどの問題も関係していると思います。

カナダでも、最初の書類審査では日本と同様に宣材写真と経歴を参考にしますが、こちらではセリフが一言の役であったとしてもオーディションを通じて芝居を見てから決めてくださいます。どちらでも書類選考の段階では宣材写真/見た目もキャスティングの最初の選考要素にはなりますね。

——それが良い悪いというお話ではなく業界の傾向として、ですね。

はい。そしてそれは容姿の良さということではなく、募集しているキャラクターに合いそうかどうかも見られます。例えば「真面目なサラリーマン役」「堅い弁護士役」「迷惑なおばちゃん役」という役があるとすると、宣材写真を通じてキャラクターに合いそうな方が次の芝居選考に行くことができるので、自分が当てはまりそうなジャンルがあればその系統の写真を用意しておいたりします。また、カナダではいろいろな人種の方がいるので、バランスよく幅広いルーツの方が必要とされたりします。

写真提供@新山さん

——それは興味深いですね。

例えば私の場合、外見からアジア人としてジャンル分けされます。話の設定にもよりますが会社や学校など沢山の人がいるシーンには、いろんな人種の方がいますよね。特定のルーツ、言語やアクセントの必要がなければキャスティング段階で、幅広いルーツの方を選考し、オーディションに呼んだりします。またCMなどでもいろいろな国で使われている商品であれば消費者に近いルーツの方がいると親近感が湧きやすいですよね。なので制作サイドが最終まで幅広いタイプの方を残し、最終決定をクライアントがしたりします。そういう意味では外見は選考に影響すると思います。

——外見での審査が全くないというとそれは嘘になりますね。

そうですね。私たちキャストの場合は世界中でオーディションが行われて、その人がキャラクターに合う俳優であれば何処にいてもキャスティングされる可能性があります。

海外作品での「日本人俳優」の立ち位置

写真提供@新山さん

——例えば海外で役者として挑戦するとき、日本人であるということは個性の一つになるんでしょうか?

それは作品によるんじゃないでしょうか。「SHOGUN/将軍」や「●●●●●●」(まだ情報未公開ハリウッド制作ドラマ)に出演した際、私が演じた役のオーディションでは、話やキャラクターの設定から日本語でお芝居ができる俳優を探していました。特に今ハリウッドではキャラクターに対してなるべくオリジナルルーツが近い方を探している傾向にあると思います。

——作品による、とはそういう意味だったんですね。

そういう作品では日本人で育ち、日本語が話せるということがもちろん有利になります。ご存知の通りバンクーバーにはアジア系の方が多いです。日系カナダ人にはバイリンガルで、日本語も英語も流暢な方もいますし、他のアジアンカナディアンの方々や私のようにアジア圏からカナダに来た俳優も沢山います。英語を話すキャラクターで、アジア人を探している場合のオーディションの競争は厳しく、激しくなります。

SHOGUNの撮影現場にて- 写真提供@新山さん

——なるほど。アジア系の見た目ということでいえば、英語と中国語を話せる中国系カナディアンの方はバンクーバーでとても多いですから層は厚いかもしれないですね。

私のように英語が第二言語の人が同じアジア人枠で戦うのであれば英語力とアクセントのコントロールを身に付けないと英語のネイティブスピーカーの俳優さんと同じ土俵に立てません。そこで日本人だからといって不利になることはありませんが、お芝居は言葉を使うのでやはり自分の英語がキャスティングの方に伝わらなければ選ばれるのは難しいですよね。キャスティングで日本人だから得をすることは何だろう・・・。やっぱり日本を題材にした作品でない限り、条件は他の方と一緒じゃないですかね。

——はるのさんの中には、海外で活動する中で自分が日本人だからという意識がそもそもないのかなと感じますがどうでしょうか?

カナダはいろいろなルーツや文化を持つ方が一緒に暮らしています。私は日本を離れて暮らしている今の方が自分の文化に関しても大切にしていきたいと思う気持ちが強くなりました。殺陣のショーをするときも、イベントのお客さんは日本文化や日本の侍が好きで見てくださっている方が多いので、私が日本で培ったものをシェアしていきたいという思いがベースにあります。

——それを前面に出すのではなく、持ち合わせているものを活かしていらっしゃるということですね。アクションや殺陣も俳優を始めてから出会ったんですか?

これは日本とカナダで異なるところなんですけど、日本ではアクションができる俳優さんを起用する機会が多かったり、俳優にトレーニングをしてアクションをさせることが結構あるんですね。私がアクションができればオーディションの枠が広がるということで始めたのがきっかけです。

——今では殺陣のパフォーマンスチームHitotoseとしてイベントやワークショップなど、活躍の場を広げていらっしゃいますね。

ワークショップで私達がやってるのは俳優のための殺陣というよりも、いろんな方に殺陣を楽しんでもらいたくて始めたクラスなので、趣味で来ている方やエクササイズとしてやりたいという方も参加されてます。あと現地で活動中のスタントさんが刀の使い方を知りたくて参加してくださったり、日本人やカナダ人の俳優さんも最近では参加されていますね。海外にいるとやっぱり日本にまつわるスキルが特技になったりするので、それで習いたいんだとおっしゃる方もいらっしゃいます。参加してくださった方の口コミや、イベントをみてくださった方からお声をかけていただいて生徒数が自然と増えてきました。

Hitotoseでのパフォーマンス、生徒さんとのパフォーマンス
写真提供@新山さん

——人のご縁ですかね。

そうですね。カナダに来る際はお芝居も英語でできたら楽しいかもと思っていた程度だったんですけど、一応刀や道着など殺陣で使える道具は一式持ってきてはいたんですよ。それまでカナダに来たことも無ければ、知り合いも1人もいなくて練習ができるかどうかも分からなかったのに。でもこんな風に教室を開くとは全然思っていなかったです。

——このお話を聞いて、やっぱり準備している人のところにはちゃんと運やご縁が来るんだなと改めて思いました。

これも演技をどうして続けているのかへの答えと一緒で、私たちのパフォーマンスをみるために時間やお金を使っていただいたりだとか、教室に興味をいただけたりすると私自身がもっと頑張らないといけないな、自身の技術を磨いて期待に応えたいな、もっともっと向上したいなと思うんですよね。それで次の段階へと思って日々活動しています。自分が動かないと始まらないですから。

好きなことを仕事にして生きていく

写真提供@新山さん

——新山さんは10年以上演技に携わっていらっしゃいます。ストイックな自己管理もあるでしょうし、演技、アクションや殺陣に関してもスキルを常に磨いていかなきゃいけないと思いますが、ここまで走り続けられたモチベーションって何だったんでしょうか?

何でしょうね(笑) 演劇科だったので初めに学んだことはどちらかいえば舞台のことなんですよ。でも映像のお芝居もしてみたいと思って卒業後はアクティングスクールに通いました。普通の学校で資格をとって欲しいという親の希望もあったので、演技とは関係ない学校で資格を取りつつ、週末はアクティングスクールに通う生活を続けていました。そこを卒業してから上京し、事務所が決まって芸能のお仕事を始めました。そこでもワークショップに参加したり現場で仕事をしながら学び続けていましたし、結局カナダに来てからも現地のアクティングスクールやワークショップで勉強したり、ずっと芝居を続けていますね。「気がついたらやり続けていた」っていうのが一番しっくりくるかもしれないです

——競争が激しく厳しい業界だと推察しますが、気持ちは切れませんでしたか?

それが切れなかったんですよね。オーディションが決まらない時期も、悔しい思いをしたことも沢山ありましたが、芝居が好きでやりたい気持ちの方が強かったんだと思います。
だからこそ今も続けていられるんだと思います。

——自分は俳優、アーティストとして生きているという意識は常にお持ちだったりしますか?それとも努力し続ける状態が当たり前であったり。
何でもそうですけど「続ける」って大変なことも多いですよ。実は自分のやりたいことがわからないと仰る方に「新山さんはなぜそんなに夢を追いかけられるんですか?」ってよく聞かれるんですけど、なぜなんですかね。

ただ、日本で芝居をやっていて自分の将来を考えた時に、海外へ行ってみたい!と思ったのでそこが他の道を選ぶタイミングだったのかもしれないですけど、結局カナダでも好きなことをやりたいと思った時に同じことを違う場所でも続けていますね・・・。周りにその環境がある、というよりも自分でその環境を選んでいたんだと思います。

あとは、何だかんだ言ってやっぱり楽しいです。例えば私が今後、他の職業に就く機会があったとして、仕事をすることはできると思うんですけど、続かない未来が何となく見える。他の仕事ができないというか、情熱がないから続かないと思います。それが演技だったから続けられているんです。

——また、様々な作品に関わってそこで何かすごい達成感や成功体験があったのかもしれないですね。

小さい頃から褒められると嬉しいというのは自分の中にありました。今回は上手くできた、ちょっと良い役がもらえて嬉しかったとか、俳優としての日々の中でそういうことが積み重なって今があるんだと思います。カナダを選んだ理由は深くはなかったですが、仕事が決まって事務所にも所属して、違う環境でやってみるとすごく楽しいからここでもやっていきたいなって思いました。今は日本にいるときよりも熱量は上がっています。日本でモチベーションがなかったということではなく、アーティストが仕事としてアートを表現できる環境というのが、日本では本当に厳しいと私は感じていました。カナダでも難しいことに変わりはないですけど、それでもできています。

——最後に、今ご自身から一番遠い目標って何ですか?

私はカナダでお芝居をやるぞ!と意気込んで来たというよりも、日本で芝居をやっていてその中で海外作品に関わったり、ハリウッド作品のオーディションも受ける中で、英語でお芝居することや英語自体に興味が湧きました。それで実際に来てみたらいろいろな出会いがあって、気がついたら思った以上にお芝居に夢中なっている状態です。私はここでお芝居をやるのが好きだと思ったので今は海外をベースに続けていきたいと思っています。

そして遠い目標としては、やっぱりアーティストとして生きていけたらそれが一番かなと思います。それが殺陣であったり、お芝居であったり、自分のやりたいことを仕事として生きていくことですね。お金が全てではないですが、やっぱり続けていくためには生活していく必要がありますから。アーティストとしての形はいろいろあると思いますが、私自身がワクワクすること、好きなことを続けながら生きていくことが私の目標です!

——新山さん、今日はありがとうございました。

ありがとうございました!

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