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俳優・祁答院雄貴 過ぎた日々も糧に向上し続ける俳優でありたい【SHOGUN出演中】

今回インタビューさせていただいたのは、日本とカナダのバンクーバーを拠点に俳優として活躍されている祁答院雄貴さんです。祁答院さんは俳優として数多くの舞台や映像作品に出演し、2021年からはカナダを新たな拠点として日加で俳優活動を行っています。2024年2月27日にディズニープラスで配信された「SHOGUN 将軍」では「竹丸」役として全話出演している傍ら、バンクーバーでは殺陣パフォーマンスグループ「Hitotose」としての公演も精力的に行っています。そんな祁答院さんの生き方や想いを少しおすそ分けしてもらった記事がこちらです。

※祁答院の祁の正式表記は「礻阝」しめすへんにおおざと

主な出演作
映像作品:
SHOGUN 将軍(2024)、Okuribi(2023)、Ippo(2022)、Usogui(2022)、 
徒然甘々(2021)、漫画誕生/The Manga Master(2019)、全裸監督(2019)、
銃(2018)

舞台:
Proof(2023)、ベンガルの虎(2022)、バロック(2020)、ピアニシモ(2020)、悪魔を汚せ(2019)、渡りきらぬ橋(2019)、ドイツの犬(2019)、
少女都市からの呼び声(2019)

出典:artistcastingexplorer.com

きっかけはカナダ戯曲と文化庁の海外研修制度

写真提供@祁答院さん

——はじめに、カナダへいらっしゃったきっかけをお伺いしてよろしいですか?

日本で一緒にお仕事をした演出家の小林七緒さんから、文化庁の「新進芸術家海外研修制度」でカナダに来たことがあるというお話を聞きました。これは日本で活動している美術、音楽、舞踊、演劇、映画、舞台美術、メディア芸術など、芸術分野に関わる仕事をしている人たちが、海外の芸術団体や劇場などに行って実践的な研修などをして、日本の文化芸術振興を担う人材を育成するための海外研修制度です。その時の体験談が刺激的で輝いていて、僕もこのプログラムに応募してカナダに行くことを選択しました。

カナダ戯曲に日本で触れる機会があって、有名な劇作家ですとモーリス・パニッチ氏など面白いと思った作品がありました。もし現地に行くことができたらもっと色んな作品に触れることができるのかなと思ったことがカナダを意識したきっかけでもあります。あとは、まだ出会ってないだけで、世界には面白い人たちと戯曲が沢山ある。と前に話してくれた演劇の先輩がいました。だからきっと、行けばその面白い人たちと一緒に芝居や作品作りができる。そして、そういう作品に関わることはきっととても楽しいだろうなとも思いました。

——作品に対する好奇心が祁答院さんを突き動かす原動力だったんですね。

カナダの俳優や演出家がどんな風に役作りや作品を作るのかも見てみたかったんです。日本だったら、もちろん人によりますが、どんな風に作っていくかなど、なんとなくわかるのですが、カナダの人たちがどう作品に対してアプローチしていくのか、過程を知りたい、そして知るだけでなく一緒に作品を作ってみたいとも思いました。そして、アーツクラブシアターという劇場で研修を受けました。

作品を制作する程に芝居が好き

Ippo(2022)より 写真提供@祁答院さん

——作品を作りたいとお話してくださいましたが、それは俳優としてですか?祁答院さんは監督やプロデュースもなさっていますよね?

ベースは俳優としてです。以前は作品を作るのは監督や演出家で俳優は役をオーディションでとったりオファーをもらって演じるのが仕事と思っていましたが、俳優も作品の作り手の一つでみんなで作品を作る!という意識がより強くなりました。

COVID-19で決まっていた仕事がなくなり、当然その後オファーも来なくなって、それこそオーディションもなくなって、業界にいるみんなの仕事がなくなりました。そんな時に、俳優仲間と一緒に「仕事がないんだったら自分たちでその機会を作れば良い」と自分たちでプロデュースをして映画を撮ったのが始まりでした。でもそもそも何故それをやったのかといえば芝居がしたかったからなんです。プロデューサーや監督をやりたいからではなく、俳優として作品に関わりたかったからです。でもいざ自分たちで作品を撮ってみると、とっても大変でした(涙) 僕は機材の知識も乏しいし、撮影に関してもプロではないので、各部署のプロを探して、たくさん助けてもらいました。アドバイスをもらいながら、試行錯誤で続けて行きました。でもCOVID-19で業界が忙しくなかった時だったからこそ、第一線で活躍されている各部署のプロの方と一緒にお仕事をさせていただくいい機会になりました。

その後カナダに来て、現地の人たちと一緒に作品を作りたくて、カナダの俳優やスタッフとの出会いを求めて、現場に写真を撮る裏方BTSとして入って、この俳優さんいいな。撮影監督さんいいな。と思ったらインスタグラムを交換したりしました。

——ご自身で裏方として現場に飛び込んだんですか?

はい!行きました!台本は自分で書いたので、英語のセリフをネイティブの俳優に読んでもらって、違和感があるかないかを俳優さんとディスカッションして、「これは違和感はないけど、日常では言わない」など、力を借りながら一緒に作っていきました。

——とある海外作品では1年以上制作に関わっていらっしゃったとお伺いしました。

9ヶ月くらいは俳優として撮影現場に入って、撮影終了後もADR *セッションでたまに呼ばれて行っていたので、それも含めると2年近くお仕事させていただきました。

* Additional Dialogue Recording/アフレコ

——撮影の進め方や現場の雰囲気の違いについて何か印象はありますか?

僕が現場に入って感じたのは、心にゆとりがあるということでした。これは撮影の現場だけじゃなくてバンクーバーがそういう雰囲気なのかなと思いました。日本の現場だと予算も限られていて人も少ないので、スタッフさんたちが1人で色んな役割をこなさなきゃいけない現場が多いです。こちらの現場ではたくさん人がいて、みんなで役割を分担して1人1人の負担がとても少ないんです。それもあってか、とてものんびりしている印象を受けることも多々あり、日本では見なかった光景なのでそれは新鮮でした。

——もちろんみなさんプロフェッショナルだと思いますが、よりリラックスした撮影現場の雰囲気だと聞いたことがあります。予算の規模が違うことも関係しているかもしれませんね。

日本ではより限られた予算と人数でベストを作ろうとしてるので1人1人の負担が多いけど、その分個々の能力は高いと思います。一方、こちらは予算が多いからたくさんの人を雇えるから、個々の負担が減る。両方が混ざると最強だなと思います(笑)

バンクーバーには劇団ってあるの?

Hitotoseでの公演の一幕 写真提供@祁答院さん

——祁答院さんと女優の新山はるのさんがHitotoseとして公演された殺陣パフォーマンスを見に行った際にスピーカートラブルがあったんですけど、アドリブで場と観客を和ませていらっしゃったのですごく場に慣れていらっしゃるなと思いました。

和んでいたならよかったです。日本ではずっと舞台をやっていて音声トラブルを経験したこともあったので。

——これもお聞きしたかったんですけど、バンクーバーには日本でいう劇団はあるんでしょうか?

はい。カナダ人の俳優仲間で自分たちのシアターカンパニーを立ち上げてやっている人たちがいます。

——そういうライブアクティングの場所自体は結構あるんでしょうか?

それなりにあります。ただ、日本ほど小劇場とかがいっぱいあるという訳ではないと思います。

——俳優さん達が観客の目の前でやる舞台でいうと、バンクーバーで「Peter Pan Goes Wrong」という舞台を観たことがあります。とても面白かったです!

まさにそのショーを公演していたアーツクラブというシアターカンパニーで僕は1年間文化庁の研修させていただいて、さらにそこから1年間アーツクラブがバックアップしてくれたので合計2年間お世話になりました。そのアーツクラブはバンクーバーに3つ劇場を持っています。ピーターパンを観たところが一番大きい劇場で、ブロードウェイミュージカル、サウンドオブミュージックやキンキーブーツなど有名な作品の公演もやっている劇場です。

Hiro Kanagawaさんと 写真提供@祁答院さん

——祁答院さんの周りには舞台メインで活動されている俳優さんはいらっしゃいますか?

はい、います。あとは、活躍している俳優さんは舞台も映像も両方やっているという印象があります。バンクーバーにはヒロ・カナガワさんという大活躍されている俳優さんがいらっしゃって、つい先日も現場でご一緒したり大変お世話になっている方なんですが、ヒロさんは映像も舞台もやっているし舞台の台本も書いていらっしゃったりしますね。結局はその人が何を活動の軸にしているかによると思うんですけど、映像のお仕事が好きでやっている人、ハリウッド作品にこだわってやっている人。もしくは僕みたいに映像、舞台とかではなく、面白い作品に関わり続けたいと思って作品自体にこだわってる人もいるんじゃないでしょうか。

アップデートは積み重ねた日々の先にある

写真提供@祁答院さん

——今はバンクーバーと日本、両方のお仕事をされていますよね?

はい、今も日本での仕事がある時には日本に帰っています。この間も「Proof」(作:デヴィッド・オーバーン 翻訳:小林春世 演出:田中壮太郎)というトニー賞を獲った舞台に出演させていただきました。

——日本での経験はこちらの俳優としての活動にどのような影響を与えましたか?

SHOGUNという作品では、10年以上舞台と映像で活動していたお芝居の経験に加えて、殺陣や乗馬の経験がキャスティングに繋がったと思います。でも一番はタイミングが作品と役にマッチしたんでしょうね。運を上げていくように、ご縁が繋がっていくようにずっと心がけてたので(笑)またSHOGUNの現場では共演者の方々やクルーの皆さんに本当に助けていただきました。それもあって全話出演に繋がりました。日本で俳優活動をしていて、それぞれの現場で培ってきたことが海外での俳優活動にも大きく役立っています。

——逆に日本とは全然違う慣習ややり方に戸惑ったことはありませんでしたか?例えば言語は明らかに違いますよね?

英語で演技をするためには英語力だけではなく、英語でお芝居をする力がもっと必要なのと、アクセントなど活動を続けていく中で一生の課題だと思っています。ただし、アクセントが必要な役もあって、役の設定と俳優さんが合わない時でも「この俳優を使いたい!」となれば設定自体が変わることもあります。僕も自分で作品を作るときには俳優さんに合わせて設定を変えたこともあります。でも役に合わせて調整していける人はやれる役の幅が広がって、得る仕事も多くなると思います。精進!!!

そういえば、カナダに来たばかりの頃はオーディションで提出するセルフテープの作り方がわからなかったんです。これは今だから言える話ですけど、セルフテープを求められたときに役とシーンに極力近い方がいいだろうから、森の場面であればそのシーンに合う場所をロケハンしに行って実際に森まで入ってここで撮ろうと思っていました。それを俳優仲間に言うと、セルフテープではまず役作りをしっかりすることはもちろんだけど、基本的にはそのシーンに合ったロケーションではなく雑音が少なくて白壁とかシンプルな背景でお芝居をするんだよ。と教えてくれました。今はハリウッドなど世界的に活躍されている日本の俳優さん達がセルフテープの撮り方等をSNSでも発信していますが、そういう常識的なことを当時の僕は知らなかったんです。

——最後に、これから挑戦していきたいことを教えてください。

常にアップデートをしつづけていきたいです。日本で10年間舞台を中心に自分なりにどうしたらもっと仕事が取れるか、面白い作品に出会えるのかを考えながら活動を続けてきて、本当にたくさんの素敵な人たちと作品に出会ってきました。そして2021年にカナダに来てSHOGUNという作品にも巡り会いました。その後も他のハリウッド作品や、ローカルのプロジェクトにも声をかけてもらったり、こちらでできた仲間たちと一緒に作品を作ったり、日本に加えて活動の場が大きく広がりました。

やる事リストやトレーニングも増えてあっという間に時間が過ぎていきますが、そんな中でも着実に祁答院 雄貴という俳優をアップデートしていき、面白い作品に出会い続けたいです。そして、そんな作品にキャスティングされる人でありたいし、あり続けたいです。僕の場合は英語でお芝居をすること、ハリウッド作品に出ることが海外に出たきっかけではなかったですが、実際にハリウッド作品に出演して面白さと力強さに触れて、もっとやりたいという気持ちになりました。だから今まで以上にアップデートが必要になりましたし、もっと磨かねばというモチベーションにもなりました。これからも魅力的な作品を届けていけるように精進していきます。

——これからもいろんな作品に出会い、そんな祁答院さんを私たちが目にする機会がもっと増えていくことを期待しております。本日はありがとうございました。

ありがとうございました。

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