『最高の図書館』5
一九時四五分。閉館十五分前のアナウンスが館内のスピーカーから流れてくる。没頭していた意識が戻り、視野の焦点が分散していく。どれくらい読み進めたのだろうかと手を止めてみれば、ちょうど、一〇八頁に差し掛かるころだった。大きく息を吐く。
「閉館だ」
声のほうを振り返ると、川上さんが書架に本を並べている。顔は書架に向けたまま、口と手だけが淡々と動いていた。
「判ってますよ。帰ります」アナウンスの瞬間を狙ったかのように喋り掛けるものだから、自然と次いでの文句を警戒する。
「生活に本の必