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反動

雲海を眺め、切り取った先から始まる落下を塩気の強い風が浚うように昇っていく。我と我が身と肉体の集合を引き連れて、一直線の死相を流れ星に転移し見立てた。件の肉体は集合体、されど魂は一つしかない。無限に分離する我が身を知りながら、空中の軌跡を振り返らない。月夜見よ死よ訪れたなら悲壮の魂はきっと中空を貫いて雲海の隙をほとばしる。彼の肉体が水面に鮮血をはじけとばせば、死んだものを足蹴にして魂は再び飛翔を開始する。もっとも死んだ肉体がただ一つの魂を押し上げる。

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