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紙一重

コンパスで丸を描くように都市を切り裂く線路。斜めに走る車窓から見上げるビル群は各々が斜塔の様相を呈している。地表が際限なく反り返り、木肌が捲れるように都市は丸まっていく。車窓は自由キャンバスで席に掛かる重力の仕組みは不変であった。ビル間は天辺を擦り合わせて崩れていく。巻物の都市はシェイクされて、車窓だけが観測主に落ちぶれて…………抉じ開けた瞳に映る世界は平行だった。空気を吐き出すように電車の扉が開いた。僅かに残る眠気を無視して、出勤の道程を飛び降りた。

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