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ドーム

金属が収縮するようにスプリングの効いた音の弾みが炎天下の密室にこだまする。蒸発した脳味噌のやがて蒸れた沼の臭気は爪先まで漂い、空の頭蓋を駆け昇る劇薬に変化した。反響に耐えうる骨でなくとも断末魔に満足の気配があれば弦を弾いてみせるだろう。すべては緋いローブを纏った女の指だ。限界をぎりぎりと引き絞り、撃鉄に掛けた紐が漲ったら発射せよ。貴い命をたった一度の音にして、悪魔の契約に身をやつして。

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