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短編現代SF小説「ワクチンバッジ」

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20xx年、全世界を襲ったウィルスのワクチンを打ったことを開示することが暗黙の義務になった時代。人類を最も殺しているアレを超えるモノがその頭角を現し始めた。
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短編現代SF小説「ワクチンバッジ」⑤

短編現代SF小説「ワクチンバッジ」⑤

前回④からの続き。

さながら、エドワード・スノーデンのようだ。
彼が、就業先だったCIAが、世界の国々や大企業と結託して個人情報へのアクセスしていることをリークした時のように。
それでも世界は変わらなかった。人々は自らのSNSが国や運営企業に自由に扱われていることを、頭の片隅で知っていながら、それを許容してでも、SNSと共に過ごす生活を選んだのである。
スノーデンが告発した事実は、人々にとっての

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短編現代SF小説「ワクチンバッジ」④

短編現代SF小説「ワクチンバッジ」④

前回③からの続き。

「... 私は、確かにワクチンを接種しませんでしたが、ウィルスの保有者でもありません。こちらをご覧ください。私が一昨日検査をした時の診断書です。」

カメラに向かって話していた彼が、手元からその診断書らしき書類をカメラに向けた。確かに一昨日の日付と、「結果: 陰性」の文字が確認できた。英語だった。
どうやら彼は国外逃亡した先で検査をしたらしい。

「皆さんがワクチンバッジで安

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短編現代SF小説「ワクチンバッジ」③

短編現代SF小説「ワクチンバッジ」③

前回②からの続き。

ちなみに大国同士の争いの影響で、特定のSNSはある大国内では使えない。政治的な理由で。
しかし10億人以上の人口を有するその国でもとんでもない数字が生まれていることだろう。
もはやその国の中で発生している数字に関しては確認することができない。
いや、もとい、このSNS時代、いかに隠し通そうとも、スマホを持つ人間は誰しもスパイになり得る。本気で見つけ出そうと思えば、そこまで手間

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短編現代SF小説「ワクチンバッジ」②

短編現代SF小説「ワクチンバッジ」②

前回からの続き。

晒し首にされる人物の、正に首から上の顔写真だ。
どこにでもいるスーツ姿の一般人男性の姿が映し出される。

確実に恣意的な意図を持って、画面に映る写真以外の背景は排気ガスを彷仏させるどす黒い黒のグラデーションがウネウネと動いている。まるでその写真から悪いウィルスが放出されているかのような見事な演出エフェクト。
ここに国民の仮想敵、いや真の悪役が誕生した瞬間だ。

この日のこのワイ

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短編現代SF小説「ワクチンバッジ」①

短編現代SF小説「ワクチンバッジ」①

人間を最も殺しているのは蚊なのだそう。

血を吸うついでに、マラリア・デング熱・黄熱病というオマケ付きで。
その数年間725,000人。
(ビルゲイツのgatesnotes.com参照)

ちなみに第2位は人間。人間が人間を殺している数が続く。年間約475,000人。
そして西暦20xx年。ついにそのデータが覆される時代がやってきた。

『私はワクチンを打ちましたマーク』を、
スーツの襟や、シャツ

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