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140字小説集

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投稿した140字小説をまとめました
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2024年5月の記事一覧

140字小説「別人の成り代わり」

140字小説「別人の成り代わり」

彼は昔から遅刻が多かった

今でこそ誰かと会う日は
カレンダーの日付に印をつけて
遅刻対策をしているらしい

今日の待ち合わせにも遅刻せず
効果があるものだと感心する

彼から話があると部屋に招かれた

準備が必要らしく部屋で待っていると
壁に掛かったカレンダーが目に入る

今日の日付に印はついていなかった

140字小説「脚を取られる」

140字小説「脚を取られる」

男は見知らぬ部屋で目を覚ました
部屋を見渡すと脚の壊れた机が散乱している

脚が壊れていない机は男が寝ている長机だけだった

男は長机から降り部屋を調べていると
壊れた机に脚を捕られて転倒しそうになる

男は咄嗟に手を伸ばし長机の脚を強く掴んだ

男の頭に声が響く

『これより脚の引っ張り合いを始める』

140字小説「お先真っ暗」

140字小説「お先真っ暗」

女は日常の中で既視感を覚えていた
人との会話、人との出会い
それらを夢で観た気がする

確認のため
毎日夢の内容を記録していくと

3日毎に
女が翌日の予知夢を観ているとわかった

そして予知夢の内容は
女が何をしても必ず実現した

前回の予知夢から3日後の朝
女は夢を観ずに目覚める

そして絶望し悲鳴を上げた

140字小説「カムバックキャンペーン」

140字小説「カムバックキャンペーン」

久しぶりに
君のもとを訪ねると決めてから

共に過ごした
楽しかった日々を思い出すよ

僕が君に興味を持ったから
僕たちは出会ったんだよね

でも僕は君との出会いや
一緒に過ごした思い出は覚えているのに

君と交わした二人だけの大切な言葉を忘れてしまったんだ

「パスワード忘れてソシャゲにログインできない」

140字小説「致死量の記憶」

新種の花が発見された
触れた人の記憶を奪い、白い花弁を黒く染める花

学者達は様々な実験により

この花は奪った記憶を花弁に蓄える事
花弁が黒いほど蓄えている記憶量が多い事
花弁を食べると蓄えてある記憶が頭に流れ込む事

それらを発見した

その結果

漆黒に染まった花弁を食べさせる『黒花刑』が施行された

140字小説「叶えるとは言っていない」

140字小説「叶えるとは言っていない」

女は明日の試練を突破させてほしいと神に願った

試練の結果次第で経済的に窮地へ陥ってしまうと必死に訴えた

神は女の必死な願いを聞き、一日怪我をしない体と危機察知の加護を与えた

翌日の夕方

女は神に怒りをぶつける

「算数のテスト全然できなかったじゃん!!」

女のおこづかいは両親によって減らされた

140字小説「未完により打ち切り」

140字小説「未完により打ち切り」

人生の書は付属のペンで書き込んだ願いが実現する本

そんな本を人から譲り受けた男は、不思議に思いながらも自分の為に使うことにした

数日後、男が願いを書き込んでいるとペンのインクが無くなり、何も書けなくなってしまった

人生の書には、まだページが残っている

その後、男を見たものは誰もいなかった