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「頼むっ、助けてほしいっ!」

介護の現場で、

私がフロアを歩いていると、

後方から大きな声で呼び掛けられた。

声の主は、

サービスを利用してくださっている、

男性の高齢者の方で、

帰り支度でジャンパーを着たのだが、

その動作の途中、

立ちくらみをされたようで、

不安を感じた高齢者の方が、

私に声をかけてくださった。

私は次の仕事があり、

少し急いでいたのだが、

すぐに振り向き、

お手伝いさせて頂いた。

特に騒ぎ立てることもない、

よくある出来事だったのだが、

それと同時に、

昔の出来事を思い出した。


「頼む、助けてほしいっ!」

高校生の頃、

同じクラブの友達と2人で、

休みの日にランニングをしていた。

私は当初、

長距離走が苦手で、

なんとか克服しようと、

長距離が得意な友達に引っ張ってもらう形で、

ランニングの練習を続けていた。

いつもは前方で快走している友達に、

なんとかついていく形で、

ハァハァ言いながら走っていた。

ただ、

その日は違っていた。

しばらく友達は私と並走していたが、

少しずつ、少しずつ、

私がリードしていく形となった。

「あれ、俺、速くなったのかな‥」

そんなはずはないさと思い直し、

しばらくペースを維持して走り続けた。

がむしゃらに走っていたら、

知らず知らずのうちに、

自分の走るペースも、

自然と上がっていたのかもしれない。

するとだんだん、

斜め後ろに見えていた友達の姿が、

視野から完全に消えた。

かつてない状況に、

舞い上がる自分は、

更に前へと進む。

すると、

後方から

大きな声で、

例のセリフが聞こえてきた。

「頼む、助けてほしいっ!」

初めて友達より先を走り、

気持ち良くなっていた私は、

この楽しい状況を止められたことに、

少しイラッとした感じで、

「えっ‥」

と言葉を発した。

ただランニングに付き合ってもらっているのは、

この私だ。

イラッとしてしまった私は、

すぐに思い直し、

それでもスッキリしない態度で、

仕方なくペースを落とし、

後方で止まっている友達の近くに駆け寄った。

「どうしたん?苦しいん?大丈夫?」

と声をかけると、

その友達は普段は見せない、

とても堅い表情で答えた。


「もう‥、

 これ以上動いたら‥、

 排泄物、

 漏れるわ‥」


意表をつかれた。

言われたことがすぐに理解できなかったが、

やがて理解できると笑いが込み上げてきた。

ただ、

思い詰めた表情の友達を見て、

すぐに笑うのをやめた。

「どうしよう、

 近くの公園のトイレに

 行こうか?」

と、

私は声をかけた。

すると友達は、

「歩くともう、

 出る。

 おんぶしてほしい‥」


高校生の男子2人が、

汗だくになりながら、

重なり合って、

公園のトイレまで、

なんとかゴールした。

互いに疲れ切った出来事だった。


自分のことも大事だが、

相手を思いやることは、

この歳になってようやく、

心から、

できるようになっている。

歳を重ねることは、

悪いことばかりではないようだ。




<スタエフライブの告知です>


「さぼ姉&アークン&うりもの

 ふ・き・だ・す・か・もライブ」

今回は、

エピソードを1人ずつ披露する形ではなく、

3人でフリートークする感じで、

ライブをしてみようということになりました。

12月1日(金)21時〜。

トークテーマは、

「『好き』について」

〜好きこそ最強!!〜

是非、コメント欄に来て頂いて、

一緒に楽しみましょう!

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