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【すっぱいチェリーたち🍒】宇利盛男 「PAIN」

「先生、お腹なのか胸なのか、

痛い部分がどこなのか、

わからなくなってきました‥」


確かにお腹はぴちぴちだった。

できれば大きな声で言わないでほしかったが、

それを止める強いツッコミもできないほど

痛みに耐えられず、

文化祭の演劇の主役を

まさかの垣野先生に代わってもらったオレ。

無事に演劇が行われたどころか、

垣野先生のパフォーマンスの凄さに引っ張られ、

みんなが普段よりイキイキしていたらしい。

劇後に仲間が心配して保健室に来てくれたが、

優しい仲間達に囲まれて、

一緒に演劇の成功を喜んだ反面、

悔しい気持ちでいっぱいだった。

みんなが演劇の片付けで保健室を出た後も、

しばらく保健室のベットで再び横になっていた。



「宇利、だいぶ薬も効いてきたやろ〜」

カーテンを半分開けて、

顔を覗かせた茶保先生

「ミックスジュースを飲む自信はないけど、

おかげさまでだいぶ落ち着いてきました」

と答えるオレ。

先程までは

ざわついていた保健室だったが、

今の保健室は

茶保先生が机の上のペン立てに、

ポンッと

ボールペンを投げ入れる音が聞こえるくらい

静まり返っていた。

茶保先生と俺の

静かな2人の世界。

いつも勢いよく喋る茶保先生の声が、

優しい大人の女性のトーンに変わっていた。


思えば、

オレが好きな女の子に気持ちが高ぶったり、

フラれた時などは、

いつもお世話になっている保健室。

普段は勇ましいほどの

マシンガントークで高らかに笑う茶保先生が、

オレがひどく落ち込んでいる時は、

とても優しいトーンの声で話しかけてくれる。

「オレがピンチの時は

いつも優しく寄り添ってくれるよな」

学園生活を振り返ると、

かなり俺のことで、

時間を割いてくれているような気がする。

それに茶保先生、

何度もオレに

「いつでもここに来ていいから」

と笑顔で言ってくれる。

どうしてだろう。

今まで深く考えたこともなかった。

そんなことを考えていたら、

なんだか身体が火照りだし、

再び身体に強い痛みも感じ始めた。

またお腹が痛くなってきたのかと

少し焦ったが、

どうやらさっきの痛みとは違う感じがした。

「あれっ、

何だろう、

お腹の部分というより、

少し上のあたりがギュッと

締め付けられる感じ‥」


「せ、先生、

なんか変な感じなんですっ!」

思わず茶保先生を呼んでしまった。

頭で考えるというより、

身体が反応してしまった感覚。

「ん、どないしたんや?」

と優しい声で

再びカーテンを開ける茶保先生。


驚いた。

普段、

髪の毛を束ねた姿の茶保先生。

ベットから見上げると、

髪留めのゴムを手首にスライドさせ、

束ねた髪を

ちょうど今下ろしたばかりのような雰囲気で

こちらを見つめている。

今まで見たことのないような、

大人の色気を醸し出す茶保先生がそこにはいた。

オレの心臓が

激しく恋のリズムを刻んでいく。

そして茶保先生は、

そのまま私のおでこに

ゆっくりと手を当てた。

「ん、熱でも上がってきたか?」

その優しくて

セクシーな茶保先生に触れられて、

私の心の熱が

驚くほど一気に高まった。

脳内で流れ出す、

「抱きしめたい」のメロディ。

歳の差なんて

頭で考える余裕もなかった。

もう、

我慢できなかった。


「やっとわかった!」

思わず声が出たオレ。

「えっ、何がよ?」

欲しがる茶保先生。

溢れるほどの想いがこぼれてしまう前に、

2人だけの夢を胸に歩いていこう。

「茶保先生!

オレ、

茶保先生のこと、

前から好きだっ‥

ドスッ!!、

ウグッ、ゴホッ‥」


茶保先生が振りかざした拳は、

オレのボディに叩きつけられた。

そしていつもの茶保先生の

廊下へ響き渡るような大きな声で

「はいっ、しっかり振る〜!」

と告げられた。



ぴちぴちの下痢痛でもなく、

恋する胸の痛みでもない、

また新たな痛みで、

オレはしばらくの間、

保健室でお世話になることになったのだった。



<参考にさせてもらった記事はこちら>


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