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「光」

僕は見たよ僕は見たよ あの暖かい光
もうだめだと弱音を吐いた君が少しだけ微笑んだんだ
僕は見たよ僕は見たよ あの美しい光
君が君でいてくれたその瞬間 心が照らされたんだ



2023年1月
当たり前に存在させられてしまっている日々の中で、得体の知れない哀しみに苛まれていた。多分絶望ではない。分かっていることは、今わたしは生きているということと、いつか死ぬということ。そしてあの子もいつか死ぬらしいということ。生きていても死んでいても大切なものは変わらないから、正直どうだっていい。ただ、ひとりひとりの人間によって作られているはずの世の中というものに、そのひとりひとりの存在は何の影響ももたらさないのだと思うと、どうしてか虚しいのだ。今日の失敗も、仕事の連絡も、公共料金の支払いも、明日の起床時間も、時々すべてがどうだってよくなってしまうのだ。あれこれ考えなければ惰性で生きていられるのかもしれないけど、そんなの死んでるのと一緒だし。でも考えたってこの身も心も変わりはしないから結局は一緒。知ってる。生きてても死んでても変わらないよ。だからどうってわけじゃない。わたしが、あなたが、生きていようがいまいが世の中には何の影響もないんだよね。
あの日。そんな話をした。

「ちっぽけなんだよね、私たち。でも、私が死んだら少なからず私の知ってる人たちには私が死んだ事実が残る。その人たちの "私がいたはずの未来" はなくなる。私はそれがすごく大切で、しあわせなことだと思ってるの。変な話だけど。だから、これでいい。」

あの子がそう言って笑ったんだ。あなたが死んだらわたしの、あなたがいたはずの未来がなくなる。しばらく死んだように生きて、でもきっといつかまた前を向こうとするんだと思う。生きるために生まれちゃってるから。死んだように生きても、惰性で人生やってても、寿命が来たとき考えるあたまがあれば、まあ悪くはない生涯だったとか思おうとしちゃうんでしょ。そんな感じ。私たち、そんな人生を送りたかったんだよ。
でも本当は、世の中には何の影響もないけどわたしの人生にひどくしあわせな影響をあたえているあなたが、光を見せたあなたが、今ここに、わたしの人生に存在していることが、いつかわたしたちが消えてなくなるということが、ずっとかなしいんだよ。かなしい。かなしい。かなしい。生きよう。生きて、生きて、足掻いて、誰かに死ねって言われても生きるんだよ。一緒じゃなくてもいい。あなたがあなたを生きていけるならなんでもいい。わたしがあなたをどう思っていても、あなたには何の関係もないよ。だからお願い。あなたはあなたを、わたしはわたしを生きる。愛してる。ほんとうに。


2023年1月
東京。線路沿いの道。ここは比較的建物が低いから空の広さに気付いた。右に曲がって坂道、地味にしんどくて下を向いて歩いてた。でももう疲れたから止まったの。どれだけ歩いたかと思いながら振り返って空を見上げたら、飛行機が大きく大きく見えたんだ。小さくなってもまた次が飛んできて、空にいくつも、大きな飛行機が浮いてた。手振ったら見えるかな。見えないだろうな。こっちからはこんなに大きく見えるのに。あーあ。わたしってなんてちっぽけな存在なんだろう。しかも世の中に何の影響もないんだよ。酸素吸って二酸化炭素出してんのに。
ちっぽけだね、わたしたち。



闇の中で時を刻む 針の音に合わせ
僕と君が出会えたその瞬間 心が輝いたんだ
心が輝いたんだ


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