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2024年1月15日 「殺しへのライン」感想 ネタバレあり

Audibleで、
アンソニー・ホロヴィッツの「殺しのライン」を聞き終えての感想です。
ネタバレはしておりますので、
まだ読んでいない方は、ここでブラウザバックが正解です。
またの機会にお越しください。


さて、今作は年末から年をまたぐ形で聞きました。
なので、カウントは2023年です。
いつもは仕事の通勤時間に聞くので、少し、時間がかかりました。
細切れの家事とジムへ行くときだけでは、なかなか進みません。
通勤時間にかなり時間をかけているということを思い知らされました。

今作も非常に面白かったです。
面白かった点を記載していきます。

・いつもと違う始まり


これまで、ホーソーン&ホロヴィッツシリーズでは
起きた殺人事件に、
名探偵であり、警察顧問であるホーソーンが呼ばれる…という形が
多かったのですが、
今回は一味違います。
本書の始まり、3分の1は誰も死にません。
今回は、ホーソンとホロヴィッツが到着してから事件が起こります。
誰が殺されるのか、そして誰が犯人になるのかを気にしながら、読み進めました。

・今回の舞台は孤島の文学フェスティバル

今回の舞台は、孤島、オルダニー島の文学フェスティバルです。
これまでで一番、本格ミステリらしい、舞台といえるでしょう。
有名な小説や漫画を思い出す、舞台です。
主催者から招待されたホーソーンとホロヴィッツが出かけていくまでが
冒頭で描かれます。
前作「その裁きは死」でも文学フェスティバルについては言及されており、
作者であるアンソニー・ホロヴィッツ自身、
文学フェスティバルには思い入れがあることがうかがわれます。
英国での文学フェスティバルというのは、
ファンを集めて、トークショーやワークショップをしたり
そこで本の即売会とサイン会をしたり、
作家同士が交流できるパーティーに出たりするもののようです。
日本ではまだ、あまり知られていないイベントのように思いますが、
英国、ひいては海外では頻繁に開催されているようです。
映画祭とかコミコンのようなものでしょうか。
日頃、自宅で執筆している作家にとっては、
社交の良い機会である、というようなことを
作中のホロヴィッツは言っています。

日本でも開催したらいいのに…と思いますが、
行われていないのには、何か理由があるのでしょうかね。

・相変わらず登場人物は皆、いけ好かない


犯人はもちろん、誰も殺されていない時点から、
今回も登場人物は皆、いけ好かない…
いやいや、癖のあるキャラクターぞろいです。
孤島の文学フェスティバルに集まってくる作家が空港で集合した時点で
「ホロヴィッツ・・・またかよ」と突っ込みたくなるような
メンバーです。
マッチョな雰囲気のジャンクフードシェフとそのドジっ子助手、
お母さんみたいな雰囲気で最近作品を出していない児童文学作家、
フランス語と謎の古語をあやつる詩人。
もうこれだけでも、お腹いっぱいなのですが、
島についてからも
怪しい登場人物がどんどん出てきます。
なんと、ホーソーンの宿敵デレク・アボットも出てくるのです。
予想していた通りの嫌な奴でした。
ホロヴィッツ、読者が気になる登場人物を繰り出してきます。
このあたりのキャラクター造形は、さすがだなぁと思います。
全員、犯人にも被害者にもなりそうなのです。

・犯人当ては成功

さて、今回は、初めて、犯人当てに成功しました。
これはなかなかうれしかったです。
今回は、なんと
1人目の殺人事件が起こった時点で、
犯人に目星がついていました。
ただし、正確な推理ができていたわけではありません。
動機はぼんやりとしか当てられず、
殺人事件をどのように実行したかなどの細かいところは
推理できていませんでした。
共犯を当てることも出来ていませんでした。
(というか、あれが共犯なのか主犯なのかは議論の残るところ)
それでは、なぜわかったというかというと
書き方、でしょうか。
「ホロヴィッツが信用するものは、危ない」というのが一番の理由です…。
もう一つ言えば、アンソニー・ホロヴィッツのパターンがわかってきたかもしれません。
次作が楽しみです。次作でもまた犯人を当ててみたいと思います!

・またしてもか!ホロヴィッツ!


さて、今回も、ホロヴィッツの行動が、
事件をややこしくしてしまいます。
またしても、犯人の行動の背中を押してしまう、ホロヴィッツ…。
今回は、名探偵コ〇ン以上の疫病神と言ってもいいでしょう。
殺人事件に居合わせるだけでなく
さらなる殺人事件を起こしてしまうトリガーになっています。
このあたりは、アンソニー・ホロヴィッツが確信犯的に書いているのだと
思うのですが、
読者はホロヴィッツにいらつきつつも、
妙に同情もしてしまいます。
ちなみに、ホロヴィッツの推理は相変わらずの期待通りのポンコツです。

・華麗な伏線回収

今回も、ホロヴィッツは丹念に伏線を記述しており、
謎解きの際には、ホーソーンが華麗に回収してくれます。
ホロヴィッツの本領発揮です。
書いてなかったことで、推理が進む、完了することはありません。
まさしく本格ミステリといっていいでしょう。
もやもやすることがない推理はこのシリーズの素晴らしさです。
その意味で、伏線回収の際にやや、はっきりしなかった、あの共犯は怪しいです。今後またまたどこかで登場しそうだと思っています。

・ホーソーンの過去


ホーソーンの宿敵が登場するということは
ホーソーンの過去が明らかになるのだろうかと楽しみにしていたのですが
ほとんど明らかになることはありませんでした。
残念です。
またもや、次作に期待ですね。
個人的には、ホロヴィッツの小説では繰り返し出てくる、
「私立の寄宿学校」がホーソーンな過去に関係しているのではないだろうか、と
推理しています。
ホロヴィッツ自身も、私立の寄宿学校出身のようなのですが
そのシステムについては常に批判的です。
また、ホーソーンアンドホロヴィッツシリーズ、そしてカササギ殺人事件で繰り返し出てくるのは、
「寄宿学校」、「同性愛」、「作家」というテーマなので
ホーソーンの秘密もそれに関連している可能性があると思っています。
さて、この推理が当たりますかどうか。

・Audibleへの要望

読み手のかたは、すっかりなじんで、聞きやすくなってきました。
ホーソーンを演じている時の声とホロヴィッツが全く違う声に聞こえるのも素晴らしいです。
しゃがれた声の聞き取りにくさというものはなくなりました。
今後も、続投してくださるといいなぁと思っています。
唯一の欠点は、いまだ登場人物をPDFでなく、音読にしている点です。
聞きながら見返したいので、文章化してPDFに付けてくださると助かります。
ぜひ!

(この記事、10日前に書きました。珍しく、ストックできていた記事です…ストック記事よ、さらば!!)



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千歳緑/code
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