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12月13日の手紙 小さなチャレンジ


今日も暖かいのだろうとたかをくくっていたら、何となくひんやりしていました。
冷え込むというほどではありませんが、昨日ほどぬるくはありません。
昨日はぬるま湯のような上に、しとしと雨まで降っていました。
それに比べるなら今日の天気はずっと冬らしいように思えました。
顔を上げて、今日は良い天気だ、とほっとすると美しい朝焼けです。
そう言えば、清少納言は「冬はつとめて」と書いていたと思い出しました。
清少納言の時代、平安時代も比較的気温が高い時代だったようですが、さすがにもう少し寒かったでしょうか。
とはいえ、清少納言も冬の朝焼けを眺めたでしょう。もし眺めていないにせよ、こういう冬の朝焼けあっただろうと感じ入って、しばし、じっと空を見上げましま。
紺というよりは薄墨(うすずみ)に近いような天頂の色は、地上に近づくにつれて黄が混じり、木々の背景となる頃には東雲色に変わっています。
東雲色とはしののめいろと読み、柔らかい赤系の色を指します。
東雲という言葉そのものの響きが美しく、何より夜明けや明け方をさすのですから、ぴったりです。

今日の仕事はさほど忙しくはなかったのですが、
予定通りには進みませんでした。
まだまだ、年末進行モードに飲み込まれている脳が、昨日と打って変わった、そのややのんびりしたテンポに驚いて、小さな火花をあげています。
暇なわけではないですが、昨日とはあまりに脳の使い方が違うので、うまく切り替えられない感じです。
書類仕事を片付け、やるべきことを順番に片付けていきましたが、仕事が終わっても、スッキリ終わったという気持ちにはなりませんでした。
同様に忙しい友人と夕食を共にとったのですが、
お互い疲れすぎているのかたいした会話にもなりません。
まあ、友人は5倍は働いていますから当然です。
同席しているものの、必要な話以外はほとんどせず、黙々と食べ物を口に運びました。
こういう食事が許されるのも長い付き合いの友達特権でしょう。
しかし「友達と食事をしても、これか…」と少しがっかりしたのも事実です。

友達と別れ、帰途につくものの、スッキリしないままでした。
コンビニに通りがかって、ハッと思い出しました。
先日、コンビニのガラス窓に張り紙が貼られ、店の前に小さな黒板が置かれていたのです。それはどちらもスムージーを宣伝していました。
このコンビニスムージーとやらに挑戦してみようという気持ちが湧いてきました。

そもそもコンビニスムージーの存在を知ったのは結構前の話です。
聴いていたラジオで紹介されていて、気になって調べたところ、一部の地域のコンビニだけでの先行発売としてがっかりした覚えがあります。
特別、スムージーが好きというわけではありませんが、一体どんなものなのだろうと気になっていたのです。
ラジオというのは面白いメディアで、視覚で見えるわけでなく、話し手の語りによって想像するしかありません。
そのラジオでは、「カップに凍った野菜や果物が入っていて専用の機械にかけるとできる」と言葉で説明していました。しかし、見たわけではないので、どうしてスムージーがそれでできるのか、どんな機械なのかはよく分からずじまいでした。
よし、今夜こそ、コンビニスムージーを体験するには良い機会かもしれません。

基本的に好奇心が強いくせに臆病者、
その上プライドが高いので、
情報は集めるくせに、体験は後回しになります。
しかし、この脳がぼんやりした状態なら、いつもなら避けがちな新しい体験に飛び込めそうな気がします。
妙に鈍感な感じで、失敗しても、あまり落ち込まずに済みそうです。
しかも、もしかすると新しい体験で、このぼんやりした頭が少しはスッキリするかもしれません。
馬鹿げているようでなかなかいい思いつきなのでは?と
暗闇の中で光るコンビニに意気揚々と入店します。緑色の制服を着た店員が、店内を掃除していました。
コンビニへ来ると何故だか、雑誌コーナーをのぞいてしまいます。買うことはほとんどないのですが、妙にそそられるのです。そこからお茶やソフトドリンクがぎっしり詰まった冷蔵庫に行き当たるまで歩き、今度はその冷蔵庫を左手にアルコールの棚に行き当たるまで歩きます。いつもながら、アルコールの棚には縁がありません。
上部が開いたままの据え置き式の冷凍庫が2つ並んでいます。
そこにお目当てのグリーンスムージーのカップを発見しました。
プラスチックのようなケールとくすんだ黄色のパイナップルが見えました。持ってみてもさほどの重さはありません。
これが本当にスムージーになるのだろうかと思うほど、軽いのです。
レジに持って行き、支払いをすると、白髪の店員さんが、「機械にバーコードを見せてくださいね」と言って、カップの蓋と太めのストローを渡してくれました。
プラスチック削減とは何なんだろうとふと頭によぎりますが、気にしてはいけません。
少し、浮ついて、あっちの機械ですかなどよく分からないことを口走ってしまいました。
コーヒーメーカーの隣に、同じ高さの黒い機械がありました。ディスプレイがついており、その下に透明のカーブがついた扉があります。左下にはバーコードを読み取る窓があります。ディスプレイには繰り返し操作方法の動画が流れています。

さあ、緊張の一瞬です。
まずは言われた通り、そして、ディスプレイに流れている通り、プラカップの蓋に記載されているバーコードを読み取ります。
これで、スムージーの中でも何を選んだかが機械に伝わるようです。
そして、プラカップの蓋を剥がして、機械下部にあるゴミ入れに入れます。
そして次は透明な扉を開けます。
カップを入れて閉じます。カップは見える手前から奥にぐっと引き寄せられました。
ディスプレイには、スムージーが出来上がるまでにしばらく時間がかかることが表示されています。
ダウンロードバーのような表示があり、それを眺めているうちに、スムージーは完成しました。
しかし、取り出してみると、ちゃんとドロリとした緑色の液体が入っています!!
おお、グリーンスムージーです。
こぼさないように蓋をはめこみ、ストローを刺して、完成です。
飲みやすいですが、しっかり野菜とパイナップルの味がします。

スムージーを飲みながら、
小さなチャレンジができたことに小さな興奮と満足がありました。
今日は頭がぼんやりした一日だったけれど、新しいチャレンジをひとつはやり切れたたのです。
馬鹿馬鹿しいでしょうか?
いいんです、これくらいの感じで小さなチャレンジをして行く方が、きっと。

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