「Prayer」
天使の歌はその日 陽射しの様にたゆたう
それを知ってか知らずしてか 男は歩き疲れていた
この世界の果てには そんなことはどこにでも溢れていた
涯にて果てて いつかこの身は果ててくれるだろう
もう眉さえも何も動かずに 目蓋の脈の鼓動でさえ動かさず
ただ天を仰いで果てたいものだ
人が転がるように大地に逝った姿を私は見たことが無い
戦場では兵士が転がっているそうなのだが私はそれを見たことが無い
あらゆる災いの地でもまた同じで
またそれを見て涙を流す者がいると聞くが
それは本当であろうか
涙を流す そんな心境に至るものだろうか
すでに出会ったときにはもう動かないものとしてそこにあるもの
そこに途方もなく 何も無くしてただ立ち尽くし
そしてまた私は歩くのだろう
しかし少しでも生きていた姿を知っている者の形がそこにあったのなら
甲斐も無くして 私もその場に嘆き崩れるだろう
愛されない者はいるだろうか
子を愛せない親がいるとは聴いた事はあるが
私はそれをいまだ見たことがない
なぜ私にはそれが見えないのだろう
思えば確かに 私はこの世界を知る事はないのだ
見たことも無いことばかりで
それでも知っているのだろうか
なにを知り なにを知らずして
私は歩いているのだろうか
もっとも汚れた天使が もっとも汚れた天地に
その日だけは その瞬間は 歌をうたった
時間は応えるように 見えないスピードで空間を奏でる
街並は静止したように ゆっくりとゆっくりと流れ
誰の目にも その姿は映らずに
誰もが その歌を捉えることはできない
途方も無く 甲斐もなく
涯にて果てて いつかこの心も朽ちてくれるだろう
その日は一日ただずっと
ただ天を仰いで果てたいものだ
ありがたくてさ
ありがたくて ありがたくて
こまっちまうよ
そういう愚か者のように成り果てて
ただの微塵の願いなども無くして
ただの祈りのように果てたいものだ
天使の歌よ
天地に響け
祈りよ
ただ 命に こだまする
20120506 3:05 / 20170302 8:55