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EC関係者必見!Thrasio(セラシオ)を始めとするAmazon Aggregatorの動向とビジネスモデルを解説(前編)

1. Amazon Aggregator(アマゾン・アグリゲーター)とは何か?

Amazonのエコシステムでは、Amazon Aggregator(アマゾンアグリゲーター)と呼ばれる新しいプレイヤーが活況を呈しています。Amazon Aggregatorは、従来のEC業界のサプライチェーンにおける各プレイヤーと少し役割が異なります。Amazon Aggregatorは主にAmazonプラットフォーム上でポテンシャルのある優良ブラント/セラーをたくさん買収するものです。買収後は専門的なグローバルチームによる効率的な運営とマーケティングを行うことで、買収されたブランドのバリューアップを図っています。米国のユニコーン企業であるTherasio(セラシオ)社はこの新しいプレイヤーを最も代表する一社です。

ブランドの買収は、Amazonプラットフォームでますます人気が高まっています。これは、Amazonが成熟したECプラットフォームと販売チャネルであることに加え、プロダクトを中心とした運用のメカニズム、および自然ランキングのアルゴリズムルールによって、高品質なプロダクトを提供する優良ブランドがより評価され、勝ち抜くことができるからです。また、Amazon上で蓄積されたビックデータを分析することで、これらのブランドの過去実績及び将来予測のデューデリジェンスも客観的で科学的に評価できます。こうした理由で、AmazonはTherasioを始めとするサードパーティのAggregatorがブランドを買収する絶好な主戦場になっています。

2. Amazon Aggregatorのビジネスモデルは?

Thrasioを始めとするAmazon Aggregatorのビジネスモデルを一言でいうと、”Amazon上のブランド買収+専門的なグローバル運営チームによるバリューアップ”です。

まず、Amazon AggregatorはAmazonのプラットフォーム上で、買収基準を満たす優良ブランドを探します。ブランドに概ねの金額を提示して交渉を行い、お互いに買収意向を確認できたら、デューデリジェンスのプロセスに入ります。Amazon Aggregatorはプロダクトの売上実績・製造コスト・マーケティング費用など全面的に検証した上で、最終的な買収金額を提示します。例えば、Thrasioはバリエーション額として、通常ブランドの過去12か月間の純利益+オーナー給料の2~4倍の金額を提示し、最終合意が得られたら、通常30日以内に買収契約を結んで次のフェーズに移ります。

買収後は、該当ブランドが厳密に決められた一連の分析・改善プロセスに入ります。Thrasioでは、サプライチェーン・マーケティング・法務及び他の部門の専門家が平均1か月間で、あらゆる項目における改善点を洗い出し、その後はAmazonエキスパートが在籍するグローバルチームにより、ブランドのバリューアップと成長を推進していきます。

このようにデータドリブンの分析と豊富なノウハウを徹底的に実行することで、Thrasioに買収されたブランドは通常156%の伸び率で成長しています。Therasioは同じやり方で300回ほどブランドの買収を繰り返していますが、毎回10倍、あるいは20倍以上のバリューアップを実現できており、次世代のP&Gとも言われるようになりました。

※Therasioの具体的な買収基準、買収プロセス及びブランドの詳細な運営手法については、下記後編の記事で深堀って紹介します。

3. Amazon Aggregatorはどんな企業があるか?

Marketplace Pulseの調査によると、現在グローバルで21各国/地域で少なくとも90のAmazon Aggregatorが存在しています。52のAmazon Aggregatorは資金調達ラウンドを発表しており、そのうち、32のAggregatorは1億ドル以上を調達しました。ほとんどのAggregatorは米国を拠点としていますが、ベルギー、カナダ、中国、フィンランド、フランス、ドイツ、インド、イスラエル、日本、ルクセンブルグ、メキシコ、ポルトガル、シンガポール、韓国、スペイン、スイス、オランダ、トルコ、UAE、イギリスで事業を展開している企業もあります。

出典:https://www.marketplacepulse.com/aggregators

Amazon Aggregatorの全てのリストは、下記URLをご参照ください。

2018年に創立されている米国のTherasio社は最大手として業界をリードしており、資金調達額は現在すでに34億ドルに達しています。2021年のAmazon Prime Dayにおいて、Thrasio傘下のブランドのグローバル売上は前年同月比の成長率は約60%であり、Amazon全体の6.1%よりも遥かに高いペースで成長しています。また、2021年にはCNBC Disruptors 50の22位にランクインされました。

日本のAmazon Aggregatorとしてforest社が登場しています。UTEC及びNORDSTARからの約9億円のシード調達を2021年10月に完了しています。

出典:https://www.forest-inc.jp/

中国においては、Nubula Brandsが中国国内初めてのAmazon Aggregatorとして登場しています。北京に拠点を置くNebula Brandsは2019年に創立され、最初は越境ECのフィンテック系ソリューションを提供していましたが、2021年より正式にサードパーティーのブランド買収を開始し、シリーズBで5000万ドル(約57億円)を超える資金を調達したと2021年12月7日に発表しました。

Nebula Brandsは単純にCopy to Chinaのモデルではなく、むしろThrasioを始めとするグローバルの競合Amazon Aggregatorと真正面に勝負することになっています。ただし、Amazonプラットフォームにおいて、最もエネルギーとポテンシャルがあるのは中華系セラーであり、実にTopセラーの約63%を占めているため、中国本土出身のNebula Brandsは海外の競合他社にない地縁的な優位性を持っています。

https://nebula.site/

4. Amazon Aggregatorの出現は、中小規模のAmazonセラーにとっても絶好のチャンス

Amazon Aggregatorの全てのプレイヤーを合わせると、すでに140億ドルの資金調達が完了しています。2020~2021年は、コロナのパンデミックがAmazonでの消費に拍車をかけていたこと、AmazonネイティブブランドのAnkerが上場したこと、Thrasioが数十億ドルを調達できたことも重なり、Amazon Aggregatorが注目されるようになりました。

Amazon Aggregatorの出現は、中小規模のAmazonブランド/セラーにとっても絶好のエグジットのチャンスです。ほとんどのAmazonセラーはレビューを通じて製品が市場での地位とシェアを獲得することがますます難しくなっていると感じています。素晴らしいプロダクトを持つ中小規模セラーは多いものの、Amazonでのマーケティング手法・サプライチェーン構築面では大手企業には太刀打ちできません。そして中小規模セラーが資金の流動性を維持しようとすると、銀行からの融資を受けるなど、多くの負債とリスクを背負うことになります。Amazon Aggregatorは中小規模セラーのエグジットを助け、ブランドのさらなる成長をサポートしてくれます。今後はプロダクトやブランドをゼロから立ち上げて、ある程度事業が形になってきたら、Amazon Aggregatorに早期売却していくようなやり方もあり得ると思われます。

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参考資料

https://www.marketplacepulse.com/aggregators

https://www.marketplacepulse.com/aggregators

https://www.factor-a.com/amazon-aggregators/

https://mp.weixin.qq.com/s/UdCOjD2B4FQKY3qxXwfuMA