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繋がらない権利

あなたはどんな働き方をしていますか?

今日は在宅勤務の働き方について考えてみたいのです。




自分の時間が消えていく…

さて、仕事を終えて、食事の支度にとりかかろうと思った途端、携帯がプルルル。上司から。見なかったこと、聞こえなかったことにして、取り合えずキッチンへ向かおうとするのですが、上司はまた掛けてきます。それでもこちらとてやらねば回っていかない家の事情が山ほどあります。だからスルーさせてもらう。すると今度はメール攻撃。そうなると食事の支度どころではなく、そのまま深夜まで仕事に引きずり込まれて行く…。

そんなことが、あなたの日常に起きていませんか?

もしも起きているとしたら、それは大問題です。

でも、それはあなただけではないようです。在宅で働くと、世界中で同じような状況が起きる、そんな2つの新聞記事※を参考に、少し家で働くことについて考えてみたいと思います。

参考:日本経済新聞20210927 
「コロナ後の職場 出社・在宅柔軟に」p29  
「広がる「つながらない権利」」p17




働く人には自分を守る権利がある

そこで出てくるのが「繋がらない権利」です。これは就業時間外にメール等での業務連絡を受けないことを働き手の権利とし、雇用主にこの権利を尊重する義務を課すというもの。

目的は、自宅を年中無休のofficeにしないため


それを最初に導入したのはフランスです。う~ん、さすがはフランス。働く個人を守るための動きは迅速です。2017年、労働法でこの権利を行使するための条件を労使交渉で取り決めることを決めています。まだ感染症が始まる前、フランスでは既にリモートワークが定着していたということです。さらにコロナ禍で在宅が増えると、euの欧州議会は加盟国が繋がらない権利の法制化を進めることを求める法案策定を促す議案を可決しています。

実際フランスでは、従業員に時間外の業務連絡への対応を求めた企業に対して損害賠償責任を求めた判例もあるようです。




繋がり続けることとメンタルとの関係

イギリスの労働組合が4月に調査してたところによれば、テレワークを始めた人の35%がメンタルヘルスが悪化したと答えています。そして、そのうちの4割公私の切り替えができないと答えているのです。

あゝイギリスの人もメンタルに来るのか…などと呑気に思いがちですが、これはとても身近な問題です。

たとえば私も以前、終日仕事と繋がっていた時がありました。それは私が大学院時代に働いていた小さな事務所でのことでした。私は大学で、家で、絶えず仕事のメールをチェックしていました。そういった生活を送るうち、次第に体力を奪われていきました。

先の新聞に、労働法に詳しい弁護士の先生の言葉があります。それによれば、この国の特徴として、テレワークでは働き手が業務時間外であるにもかかわらず自発的に連絡することが普通になると言われています。

なるほど、とうなずいてしまいます。

実は私も、自発的にその行為を始めた一人でした。時間内でさばけないメールへの返信を代わりにやる人が居なかった。そんな状況下で自発的に選択したのが、オンオフが完全に崩れた働き方でした。もちろん雇い主には感謝されたのですが、その感謝も徐々に負担になり、やがて仕事そのものが重荷になっていきました。

小さな会社だから仕方ない、私がやらなければ社長が困る、そう考えて動いていましたが、冷静に考えれば他に対策はあったはず。社長であれば、感謝の言葉を添えてほんの僅かな時間外手当てを支払うより、短時間でも人を雇う必要があったはずです。たったそれだけのことを、私は口にできませんでした。そしていつしか私は消耗し、全てが回らなくなっていきました。

その後、あれほど無理を重ねて誠意を尽くして働いていたはずが、その会社への印象は、消耗品にされてしまったという感情だけが残りました。



日本は特殊。でも人は同じ

残念ながら、この国は長時間労働で有名な特殊な国です。仕事とプライベートが一体化していて、境界線など、なかなかススっと引ける社会ではありません。そもそも時間外の業務連絡にさえも抵抗感が薄い傾向があるのですから。

上記の新聞記事に、日経ウーマノミクスが小学生以下のお子さんを持つ男女119人を対象にアンケート調査をした結果がでています。それによれば、テレワークをしている人の不満は、自宅が職場となってオンオフの切り替えができないというものでした。そう、世界の労働者と同じ悩みだったのです。

そんな中、日本でも厚生労働省が3月にテレワークのガイドラインを改訂しています。ただその中で、長時間労働対策に関しては、時間外メールの自粛が有効と記されているのみなのです。そう、この国は欧州とは違います。そのくらいは私でも知っています。けれど、フランス人も日本人も同じです。同じ状況に置かれると同じ悩みで苦しむということです。それでもこの国では、働く環境を整えることが実に軽く扱かわれています。ガイドラインに書かれているのは、自粛が有効と効力もない言葉が並ぶだけです。

今、このオンオフの切り替えは世界的な課題です。誰でも仕事とプライベートに線が引けない暮らしはしんどいのです。もしも、それが自分で改善出来ることであれば、是非意識してやりたいところ。ただ会社がそういったことを受け入れない体質であるなら、そこで働く人は非常に深刻な問題を抱えることになります。

今は、会社を一歩出ると個人に戻れる時代ではありません。たとえ在宅であっても常に会社と個人が繋がり続けている時代です。そのことがどれほど危ないことなのかを働く側の人は自覚しておく必要があります。それだけでなく、人事や経営に携わる人たちもまた、こうした問題に向き合う必要のある時代です。


#つながらない権利


【企画】女性の働き方と生き方に関する記事を書いています。その一覧!(2021年12月3日現在。過去記事一部含む)

☆育児編
ママを悩ます子育ての常識 / 三歳児神話はやっぱり神話なのでした

☆教育編
見えないものを取り出して。教育は女性を教育は女性を救える?そしてそこからSDGsへ


☆企業編
見えてきた、女性の変化!
次は女性 企業は変わります
あなたは、そしてあなたのパートナーは「勤め先の文化」から逃げられますか?
勤め先のすすむ先 会社は投資家に選ばれる時代

☆法律、または権利に関係のあるもの編
繋がらない権利
「同一労働同一賃金」 57年前、他国でできた法律を取り入れる…ってこと
「均等法」 / 誕生の裏側
創り出されたものに、気付いてしまったのなら
わたしの記憶は時代に無頓着/ 男女平等&ルース・ベイダー・キンズバーグ
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言いたいけれどいいにくいお金の話し。あなたならどうしますか?


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☆結婚・長時間労働問題編
自分で選んで決める。未来の自分のために
「ハンサード」イギリス人夫妻とわたしたち
「結婚」が教えてくれた『北風と太陽』

☆意識編
言葉は現実になる
永遠に手放してしまいたいもの
モノローグ「遺品整理士」

☆家族編
noteでエアハグしよう💖💖 家族から、そしてまた家族へ

☆介護編
Long-term care。「一人でも大丈夫」なら、それはさいごの自由
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介護にも上り坂⤴があるのです

☆ジェンダーギャップ編
2021年、あなたはイエの内側?それとも外側?
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ジェンダーギャップ / 語られるものと語られないものの間に横たわる真実

☆女性が働くこと編
20年ぶりの再会 「働く」がその人を輝かせていて
女性の道はどんどん狭くなる / 齢と属性というしばり
Re:たとえ働かなくてもいい時代になったとしても、それでも「働くことは生きること」だと思う
「働く人」をカテゴライズするその前に / 働く女性に垣根はいらない
「気働き」できる人


☆もう一度学ぶこと編
古い上着を脱ぎ捨てるように学ぶ
大人になって大学へ行くことはコンプレックス解消に役立つ?


☆音声配信編

東証が変われば日本が、女性の働き方がきっと変わる!!
企業が目指すのは成長! 企業は日本文化に縛られているわけでは…ないから
どうやって使うんでしょう、この法律 #同一労働同一賃金
その人がいなかったら…世界を変えた人
誰かがバリアを築いたのなら もう一度考えてみたい女子の就職活動
創り出されたものからそろそろ自由になりませんか?
見えなくなったのはいつ頃だったのだろう…わたしたちはそれほど違わなかったはずなのに
いろいろな角度から発信!ようやく走り出しました!

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