「同一労働同一賃金」 57年前、他国でできた法律を取り入れる…ってこと
きょうは、法律のお話しを少し
追い詰められたのは?
今年、大企業向けに「同一労働同一賃金」が施行されました。でも、これって…アメリカでは「同一賃金法」として57年も前に誕生しています
半世紀もなかった法律が、なぜ今頃、この国で必要なのか…
不思議です
法律とは、
※グルになってる集団を徹底的に解体して、追い詰められた一人の人に徹底的に肩入れするもの、それが本来の…法である
とあるのです
ムムム…
それなら、いったい誰が追い詰められて、この法律ができたのでしょう…
気になりますよね?
え、気になりません?
まあ、そうつれないことをおっしゃらず
よかったら少しお付き合いくださいね
引用:※ 木庭顕『誰のために法は生まれた』朝日出版社p63
雇う側 / 雇われる側
さて、この「同一賃金法」、最初に法律にしたのはアメリカの「労働組合」※
アメリカには労働組合が古くからありまして…
その組合が、「職務」の明確化や、それに対応する賃金の設定などを企業側に要求しています
それが、産業別標準賃金を求め、同じ「職務」なら同じ「賃金」をというルール
もちろん、新しい法律が生まれるわけです。そこには、ちゃんと、追い詰められた一人の人に徹底的に肩入れする、そんなわけがありました
その昔、アメリカの工場労働者たちは、雇用主から仕事を請け負う「職長」の下で働いていて。その「職長」、裁量権を一手に握っていたわけです
もちろん、問題がおきます
つまり、
☑ 賃金に差をつける
☑ 気まぐれに解雇する
☑ 労働者から賄賂を受け取る
そんな、やり方がまかり通ってしまうわけです
その「職長」、もちろん経営側。ですから、働く人より力がある
そんな一方的な力関係に反発したのが労働組合です。そう、働く人たちが集まって、声を上げる仕組みです
その組合が「同一労働同一賃金」を求めた
だから、アメリカで、世界に先駆けて「同一賃金法」が誕生したのです
※ 小熊英二『日本社会のしくみ』講談社現代新書2528 P59~212
人種差別
じゃあ、この「同一賃金法」成立後、誰もが平等に働けるようになったのかといえば、アメリカの歴史はそれほどシンプルではありません
遠い昔、自由の国アメリカでは、南北戦争がおこった
ちょうど日本では、黒船が来航して~大政奉還へ至る、そんな頃です
その南北戦争後、奴隷制度はなくなります。けれど、アメリカには人種を分ける法律が残っていたのです。今まであったものが、すっかりなくなれば問題はないのですが、それほど簡単には、人の心に線は引けないのです
だからこそ、南北戦争後も人種差別は続きます
それから、さらに時が過ぎ…あの公民権運動がおこります
人々が、ふつうにバスに乗りたい、トイレや図書館を使いたい、学校に通いたい、働きたい、一市民として生きたいと声をあげて、それが大きな運動となって。1964年、ついに「公民権法」が制定されます
人種差別 / 労働の差別 / 女性差別
それから、アメリカでは1963年に「同一賃金法」が誕生します
そして、その翌年の1964年に「公民権法」が制定されています
そう、働く人の賃金の平等と、人種がちがっても平等という法律です
そう、まだ男女差別は残ったままでした
男女差別を禁じる法律はアメリカには、いえいえ、世界のどこにもありませんでした
だから女性解放運動がおこったのです
アメリカで。それが欧州へと飛び火していきました
そうして、ようやく1972年「雇用機会均等法」※が誕生します
そう、職場で男性女性平等に、という法律です
つまり、職場の男女平等が立法化されたのは「公民権法」より凡そ10年も後だったのです
そして、この法律、「公民権法」の一部を改正したものです
引用: ※雇用職業研究所編『女子労働の新時代』東京大学出版会 p252
さいごに
アメリカで「同一賃金法」が誕生し、それから「公民権法」が制定されますが、性差別を禁じる「雇用機会均等法」が誕生したのはそれから約10年後のことでした
この3つ、いずれも不平等を許さないための運動がおこり、そして立法化されています
けれど、日本には、まだ産業別標準賃金という概念も、同じ「職務」なら同じ賃金をというルールもありません
労働組合のある企業は、日本では一割弱。しかも、日本の労働組合の大半は社内にとりこまれています。欧米の労働組合とは異なり、産業別に手を繋ぐ形状にないのです
そもそも社会構造が違うのです。この国は
そんな形の違うこの国に、アメリカや欧州の法律がやってきた…
これではだめなのです
なにをもって平等とすればいいのか、どこにも基準がありません
だからこそ、この法律がその力をどう発揮するのか、怪しいのです
こうした疑問を考えるのは、当事者
体裁を整えた社会
そこで苦しむのは当事者です
形ばかりの政策が整っていく
そこで救われないのは決まって当事者なのですから
#公民権法
#雇用機会均等法