梅田ぬむ

言語と歴史に関する学術的な話題を発信します。翻訳/研究/教育の現場のお話しも。

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最近の記事

Q. 語族って何?【多言語学習への道】

A. 言語を分類した時の大きなグループのこと。 語族について (A) Artículo 30 Nada en esta Declaración podrá interpretarse en el sentido de que confiere derecho alguno al Estado, a un grupo o a una persona, para emprender y desarrollar actividades o realizar actos t

    • Q. 世界一難しい言語は?

      A. 母語次第。 言語学に「難しい言語ランキング」はない。 もちろん、日常生活で盛り上がる話題ならばみなさんそれぞれ一押しの言語があるだろう。「最強〇〇ランキング」のようなもので、絶対的な答えは出ない。 だがこれは関心がある人が多いテーマであるのも確かだ。ブログやXで発信すると反応が多い話題だ。日本以外の地域でも事情は似ている。今回はこのテーマについて掘り下げていく。 まず、何をもって「難しい」というのかを決めないといけない。一般に私たちが何かの言語

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      • Q. お金をかけずに外国語を勉強するのってどう?

        A. 何かの技術を修得するにはカネを遣った方が有利 「先生、語学が上達するのに必要なものはなんでしょうか」 「それは二つ、お金と時間」(千野栄一『外国語上達法』岩波新書、1986年、38頁) 以前に別の記事で取り上げた文章だが、今回はカネと時間のうちカネについて書く。 インターネットが発達した現在、無料でできることが多いのは確かだ。ネット上に様々なコンテンツがあるのはもうよく知られている。しかも優良なものが多い(私も利用する)。半面、何百万円も英

        • Q. 今から始めるならどの外国語?

          A. 関心のあることば。 このような質問が出るということは、英語はとっくに習得したか愛想を尽かした(尽かされた?)かのどちらかで、しかも仕事や生活で使わなければならないことばがあるわけでもないということになるだろう。 長期タイ駐在が決まった、TOEIC850点を取らないといけない、義両親と話すのにスロヴェニア語がいる、新しい上司がフランス人だ…というのならそれをやるしかないが、選べる状況にあるというのは喜ばしいことだ。 それならばお勧めは「学びたいと思うことば

        Q. 語族って何?【多言語学習への道】

          Q. 辞書はスマホで十分じゃない?

          A. スマホに触るな。 スマホの辞書は避けるべきだ。絶対に余計なことをするから。 スマホもSNSも、世界最高峰の頭脳を持つ人たちが本気になってユーザーの気を惹く方法を日夜考えて作り続けている。通知が赤で表示されること一つでも大いに意味がある。そんなものに意志の力で勝てるわけがない。見たら終わりだと思え。 紙辞書か、電子辞書(専用端末としての電子辞書のこと)を使うか、どうしてもアプリがいいならばたとえばiPadを機内モードにして使う。とにかく勉強の

          Q. 辞書はスマホで十分じゃない?

          Q. 外国語を日本人に習う意味はある?

          A. ある、第二外国語として学んだ先達に学ぶことは多い 我々日本人が「西洋」を意識し始めたのはとりわけ明治以降とされる。以来約150年にわたって、我々は「西洋」の文化と技術を畏怖し、憧憬し、そして模倣してきた。ときに「名誉白人」と揶揄される(あるいは自虐)ほど、その必死さは鬼気迫るものがあった。 しかしこうした西洋受容の歴史を振り返ってみると、何も我々は明治以降突如として「文明開化」に目覚めたわけではない。幕末ペリー艦隊が浦賀に来航し、にわかに海外への関心が高揚した185

          Q. 外国語を日本人に習う意味はある?

          Q. 外国語力が伸びやすい生徒の特徴は?

          A. 勉強量が多い、反復練習する、システムを考える、モノを知っている。 この記事は「これをやれば伸びる」「こういう生徒でないと伸びない」という趣旨ではない。 仕事でもスポーツでも学習でも、たとえエビデンスは少ないにしても当てになる経験則というのがあり、それは外国語教育/学習でも同じである。今回は「外国語が伸びやすい人の特徴としていえそうなもの」について考えてみる。 【①勉強量が多い】 これはもうあらゆる学習にも技芸にもいえる。 「やれば→成

          Q. 外国語力が伸びやすい生徒の特徴は?

          Q. どんな教師がよくない外国語教師?

          A. ①知識・技量がない、②指導が下手、③魅力・熱意がない 苦手だった科目もあの先生の授業だったから好きになった。 苦手な勉強もあの先生のおかげで好きになった。 この先生は面白いからとりあえず授業にでてみるか。 誰しもこのような経験がないだろうか。あるいはその逆もあるように(好きな科目だったも教師と水が合わずに断念した)、何を学ぶかということは「誰に学ぶか」に大きく左右される。この点では物理も数学も歴史も、そして外国語もまるで同じだ。 この問題に対するアプローチは複

          Q. どんな教師がよくない外国語教師?

          Q. 外国語を自然に身につけるには?

          A.自然に身につくことはない 私たちはそう考える。経験上、自然に外国語が身につくことはない。例えばバイリンガル家庭にでも生まれないかぎり「自然に身につく」のは無理であろう。なぜならば、自然とは「おのずからそうなっているさま」(新村出『広辞苑』第6版)だからである。 話が終わっちゃったじゃん、と思ったそこのあなた。焦ってはいけない。 この「環境」さえうまく作りだすことができれば、「自然に」外国語を身につけることも夢ではない。 環境そのものを作り出すことがいかに大事か

          Q. 外国語を自然に身につけるには?

          Q. リーディングよりスピーキングの方が重要じゃない?

          A. 多くの人にとって即効性があるのはリーディング。そもそも二項対立で考えないこと。 別の記事でも書いたが、日本の学校英語はスピーキング/リスニングではなくリーディング/ライティングに伝統的に主眼を置いてきた。「小中高で10年くらいやっても英語が話せるようにならない」のは哀しいが当たり前である。 さてリーディングとスピーキングだが、究極的にはどっちも大切だ。言語学習というのは四輪車を動かす作業であって、4つのタイヤ(話・聴・読・書)が揃っているのが理想だからだ

          Q. リーディングよりスピーキングの方が重要じゃない?

          Q. 留学すれば必ず話せるようになる?

          A. なる、ただし留学中に「快適空間」からとびだせば かつて筆者は留学生としてドイツ語圏のある国に滞在していた。留学先は日本からの留学生を受け入れるような国際大学で、当然他の日本国内の大学から渡欧してきた学生たちも複数名いた。 こうして集まった我々外国人学生は、セメスターの正規授業が始まる前、ドイツ語訓練講座の受講を勧められる。ドイツ語の運用能力に一抹どころではない不安があった私は、一も二もなく受講をきめた。クラスメイトには、国籍でいえばフィンランド人から中国人まで、

          Q. 留学すれば必ず話せるようになる?

          Q. なぜ外国語の文章が読めないの?

          A. 語彙が足りない、構造把握ができていない、テーマを知らないから 「寄宿舎では、その日の講義のうちにあった術語だけを、希臘拉甸(ギリシャラテン)の語原を調べて、赤インキでペエジの縁に注して置く。教場の外での為事は殆どそれ切である。人が術語が覚えにくくて困るというと、僕は可笑しくてたまらない。何故語原を調べずに、器械的に覚えようとするのだと云いたくなる。」(森鷗外『ヰタ・セクスアリス』青空文庫) 「単語を一生懸命覚えた」のに文章が読めない。勉強しているのに読めない。英

          Q. なぜ外国語の文章が読めないの?

          Q. どうやったら話せるようになる?

          A. 聞く練習と話す練習をする 近頃の外国語学習に幽霊が出る。「ヨンギノー」という幽霊が。 一般に、言語活動は「読む」「聞く」「話す」「書く」の四分野に分けられる。「ヨンギノー」(4技能)を育てるとは、この4つの能力をバランス良く育てようという試みだ。 擦り切れるほど繰り返されてきた話題だが、この背景には「学校の授業では英語を話せるようにならない」という主張がある。 「学校で10年以上習っても英語を話せるようにならないのはなぜだ」という熱い思いに一旦応えてお

          Q. どうやったら話せるようになる?

          Q. 日本にいて外国語を使う職業は?

          A. すでに一定数あり、これからも増加する 「外国語 and 職業」。単純すぎる検索ワードをGoogleに打ち込めば、生成AIが「外国語を活かせる職業には、次のようなものがあります」と答え、その具体例をずらりと提示してみせる。生成AIは発展途上であるとはいえ、こちらの意図を汲んだ優秀な解答だ。 AIが示すには、外国語運用能力を活かせる職業とは次のようなものである。通訳、翻訳家、外国語教師、客室乗務員、アナウンサー、外交官、入国事務、貿易事務、ホテルスタッフ、留

          Q. 日本にいて外国語を使う職業は?

          Q. 人前で外国語を話すのが恥ずかしいんだけど?

          A. 何か目標があるなら、恥じらっている場合ではない 「生きるとは何ですか?」 「恥を恐れないことかな。」 (サッポロ生ビール黒ラベルCM《大人エレベーター》より) 俳優の妻夫木聡氏が「大人エレベーター」なる架空のエレベーターに乗り、各階(=年齢)で待つ「大人」に会いに行く。そんなテレビ・コマーシャルの一幕だ。「生きるとは何ですか?」とたずねた妻夫木氏に、「恥を恐れないことかな」と答えたのは77階で待つ俳優の仲代達矢氏である。 いやに大きく出るじゃないか

          Q. 人前で外国語を話すのが恥ずかしいんだけど?

          Q. 時間をかけたくないんだけど?

          A. 何かの技術を修得するには必ず時間がかかる 「先生、語学が上達するのに必要なものはなんでしょうか」 「それは二つ、お金と時間」(千野栄一『外国語上達法』岩波新書、1986年、38頁) 『外国語上達法』は日本のチェコ語学を築いた言語学者の手による本だ。出版以来かなりの時間がたっているが、今でも読み継がれる名著である。千野先生のおっしゃる通り、外国語学習には資金と時間が必要だ(今回は資金の話は置いておく)。世の中には「~カ月であっという間に」「学校/留学に行か

          Q. 時間をかけたくないんだけど?