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Q. なぜ外国語の文章が読めないの?

A. 語彙が足りない、構造把握ができていない、テーマを知らないから
 
「寄宿舎では、その日の講義のうちにあった術語だけを、希臘拉甸(ギリシャラテン)の語原を調べて、赤インキでペエジの縁に注して置く。教場の外での為事は殆どそれ切である。人が術語が覚えにくくて困るというと、僕は可笑しくてたまらない。何故語原を調べずに、器械的に覚えようとするのだと云いたくなる。」(森鷗外『ヰタ・セクスアリス』青空文庫)
 
「単語を一生懸命覚えた」のに文章が読めない。勉強しているのに読めない。英語についていうならば、学校英語では会話はできるようにならなくても読み書きはできるようになっているずなのに。
 
文章が読めないには読めないなりの理由がある。
 
ここでは生徒/学習者の多くが陥る原因を3点挙げておこう。便宜上、英語について話をする。
 

【①端的に語彙力がない】
読めない原因として誰でも思い浮かべるのは語彙力不足だ。英語母語話者(=ネイティブ)は成人ならおよそ20000語から30000語を習得していると一般に見積もられている。
 
ところが英検でいえば1級でも10000語から15000語、日本の英語教育では小中高の合計で4000語から5000語にしかならない
 
「母語話者のように読みたい」と思っても、とてもではないが手持ちの語彙が足りない。
 
さらに落とし穴がある。英語と日本語は言語的に全く異なる言語であるために、語彙がなかなか一対一で対応しない。たとえばtakeの意味は「取る、思う、持っていく、履修する、引く、乗り物に乗る…」と多岐に渡ってしまう。これが英語と近いフランス語であれば、takeに相当するprendreは日本語の場合よりも遥かに重なり度合いが高い。(逆に韓国語や中国語は日本語母語話者にとって学びやすく、英語母語話者にとっては非常に難易度が高い)
 
言語的にまったく異なる言語どうしの場合、語彙の一対一対応はなかなか望めない。ではどうするか。常に文脈を考えるしかない。他の語との関係である語の意味が決まっていく。
 
たとえ単語帳に載っていなくても、文脈上必然性があるのならば、自分で考えた意味が正解であることもよくある。(さて語彙力の上げ方についてはまた別の記事で書くことにする)
 

【②構造把握ができていない】
文法の知識が光るのはここだ。日本語と全く異なることばの並べ方(統語論/統語法という)を持つ英語を読み解くには、語と語の関係がわかる必要がある。語彙の意味だけ分かっても、「~が」「~を」「~の」「~に」といった関係(格という)がわからなければ連想ゲームになってしまう。
 
構造がわかれば語彙を増やすだけでだいたいの文は読めるようになる。「AはBにCした」という関係が分かっているならば理解は早い。逆に例えば「AにBがCした」なのか「AのBはCだ」なのか「AをBしたのはCだ」なのかが識別できないと、文の理解に非常に時間がかかってしまう。
 
「知らない語の上に単語帳で見つけた意味を書いて、それをつなぎ合わせていく」のでは負けは確実である。
 

【③テーマを知らない】
語彙は増えた。構造も分かった。だが何を言っているかわからない。というのは上級者になっても発生する。特に英検やTOEFLのような「アカデミック」な話題が出る試験だと頻出する事態だ。
 
文章は知識が多いほど速く読める。読まなくても知っているから。
 
生物学の知識がなければ、「タンパク質の構造を音楽の視点から把握する」というような実験についての論文はわけがわからない。政治学に疎ければ、移民問題について知らなければ、文章の流れがどうなっていくのか、どこの国の話でどういった歴史的背景があるのかもわからない。
 
実際のところこれが一番難しい問題だ。一朝一夕にはどうにもならないから。「色々勉強しておきましょう」と学校で言われるのはこういう事態への備えでもある。
 
結論:語彙を増やし、構造を一撃で把握し、頻出テーマに詳しくなろう。

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