見出し画像

Q. どうやったら話せるようになる?

A. 聞く練習と話す練習をする
 
近頃の外国語学習に幽霊が出る。「ヨンギノー」という幽霊が。
 

一般に、言語活動は「読む」「聞く」「話す」「書く」の四分野に分けられる。「ヨンギノー」(4技能)を育てるとは、この4つの能力をバランス良く育てようという試みだ。


擦り切れるほど繰り返されてきた話題だが、この背景には「学校の授業では英語を話せるようにならない」という主張がある。

 
「学校で10年以上習っても英語を話せるようにならないのはなぜだ」という熱い思いに一旦応えておこう。明治以来日本の外国語教育は「読む」と「書く」の育成に力を入れてきたのであって、「話す」ことを前提とした設計になっていないからだ。

 
そしてこの教育では特に「読む」が重視された。なぜか。簡単にいえば、列強の文献を輸入して翻訳し、制度や科学を移植するためだ。こうした教育の是非はまた別に考えよう。それよりも、話せるようになりたいのならば話す練習自体をすることが必須だという、当たり前に見える事実が大きい。

 
だが注意すべきなのは、話す練習の前に「聞く」練習がいるということである。相手が何をいっているかわからなければ文字通り話にならないからだ。


「話す」ことは外国語を使った動作の花形といってよいかもしれない。「英語がぺらぺら」になりたい人は数多い。


だがいくら表現を覚え、自分のことについて話せるだけの文章のストックができても、相手が何を言っているかつかめなければ会話は続かない。一方的に自分だけが発信し続けるということはあり得ない(発話のピッチングマシンになりたいのだろうか)。


まずは「人の話を聞くこと」。日本語でも何語でも、コミュニケーションの基本だ。

 
以上の意味で、リスニングは非常に重要だ。教材を買うなら、音声が手に入るものを選ぶようにしよう。そして実際に聞いてみよう。これが話せるようになる第一歩だ。(「聞く」についてはまた別の回で深く取り上げる)

 
続いて話す練習について考える。一人で勉強する場合、「話す」は一番勉強しづらい。何しろ話すには相手が必要だ。独習でも色々とできることはあるだろうが、どんなに工夫したところで、その言葉を話す人と実際に話すのに勝るものはない。ここは金と時間をかけるべきところだ。
 

話す練習をする上で注意しておきたい点がいくつかある。


【①発音をネイティブに近づけるよう努力する】

日本語は音素(音の最小単位)が非常に少ない。

日本語は母音5個、子音14個だが、たとえばアメリカ英語は母音16個、子音24個だ。日英ともに個数には若干の揺れがあるが、いずれにせよ大差があるのは確かであり、一般に日本語話者がrとlの聞き取り/発音に困難を覚えたり、英語が聞こえない/通じないことが多発したりすることの一因となっている。

完璧である必要はない。それでも抑揚やアクセントを含め、母語話者の発音に可能な限り近づけるように練習することだ。 それには対面で母語話者の口の動きや声量を観察するのが有効である。もちろん、発音矯正をしてもらうのもいい。
 

②日本と世界、自分の専門分野について理解を深めておく

日本語母語話者同士であっても、共通の話題がなければ会話は続かない。海外の人からは自分の仕事や専攻、日本について尋ねられるだろう。自分はどこまで知っていて、説明できるだろうか。また相手の出身国や都市についてなにがしかの知識があれば話のタネになるだけでなく、きっと喜んでもらえることだろう。
 

【③別の言語に頼らない】

例えば英語を一通り身につけた人が別の言葉を身につけようとした場合、英語ができるばかりについつい英語で様々なことを済ませてしまうと、中々次の言葉が習得できない。つい日本語を使ってしまって英語が…という場合の次の段階といってもいいかもしれない。何か新しい言語を話せるようになり
たければ、とにかくその言語で頑張ってみること
だ。


【④正しい文法を意識する】

どれだけ「ぺらぺら」でも、崩れた言葉遣いの日本語はいい印象を与えるだろうか。発音と同じく、文法も完璧である必要はない。それでも完璧に近づけていく努力は必要だ。もちろん、求めているのが「伝わればいい」水準であるならばこの限りではない。それでも、「次いつの打ち合わせあなたたちいい」と「次回の打ち合わせはいつがよろしいでしょうか」のどちらの印象がよいかは自明だろう。


結論:まず相手の言っていることを理解できるようにする。次に話す練習をする。
 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?