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烏賀陽弘道 ~フクシマからの報告~

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京大卒の元朝日新聞記者が、フクシマの今をレポートしています。 福島の一部地域は、もう人の住める場所ではありません。マスコミが報じない衝撃の事実が沢山レポートされております。 記事…
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2021年9月の記事一覧

フクシマからの報告 2021年夏    「あれはすべて幻だったのか」      帰りたくても帰れないふるさと     「文字盤のない時計」が回り続ける    俳人・中里夏彦さんの原発事故の物語(上)

フクシマからの報告 2021年夏    「あれはすべて幻だったのか」      帰りたくても帰れないふるさと     「文字盤のない時計」が回り続ける    俳人・中里夏彦さんの原発事故の物語(上)

 福島県・双葉町出身の俳人・中里範一さん(64)と知り合ったのは偶然である。

 福島第一原発が立地する双葉町の北隣に「浪江町」という街がある。そこの中心部に「サンプラザ」というショッピングセンターがあった。福島第一原発から8キロほどの距離だ。

 中里さんはその総務部長だった。

下は同社ホームページから。

 サンプラザがある浪江町中心部の強制避難が解除され、中に入れるようになったのは、201

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フクシマからの報告 2021年夏    俳人・中里夏彦さんが語る原発事故・下 頭では帰れないとわかっていても    心は帰りたいと願い続ける       奪われたふるさとの記憶

フクシマからの報告 2021年夏    俳人・中里夏彦さんが語る原発事故・下 頭では帰れないとわかっていても    心は帰りたいと願い続ける       奪われたふるさとの記憶

前回の本欄で、福島県・双葉町出身の俳人・中里夏彦さん(64)のお盆のお墓参りに同行した報告を書いた。

中里さんが生まれ育った家は、福島第一原発から西に5キロ(道路沿い。直線距離で3キロ)にある。噴き出した放射性物質の雲(プルーム)の直撃を浴び、10年後の現在も立ち入りが禁止されている。いやそれどころか、双葉町全体が人口ゼロの無人地帯である。

 2021年8月13日に撮影した冒頭の写真でもわかる

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