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え? 写真では 伝わらない事….鮎漁師の旅にて

朝四時半
北の大地のあさぼらけ

枕元の灯りは 点いたまま

滞在者と絶妙な距離感のこの宿
細やかな愉しみを 与えてくれる。

早朝五時から 豆を挽く
ギランバレーのリハビリで 毎日毎日 豆を挽いていた。
当初は握力も無くハンドルを回す事さえ
至難の業だったのが 懐かしい

部屋で フル装備に着替え
宿の中を 竿を持って歩く…



川の入り口には ヒグマが出たと….

宿の前後が釣り場
キャッチアンドリリース区間で漁協が
管理している。
ルールは厳しく 仕掛けも限られている。

上流では  フライフィッシングで かかったようだ

ほんの少し歩くと 開けた河原にでる
ここで 釣ろう
後に 鮭を釣ろうと選んだ竿は重たい

ルアーを 打てども 打てども
相手されない

なんと 足元には 大きな 鱒が
泳いでいる

陽が昂ると 温度差で水面に霧がかかる

釣れないけど 足元には居る

目の前 川の中を ザブザブと 歩く釣り人 行ったり来たりが激しい
(マナー違反だけど….)

その中に 大きな大きな熊避けの
カウベルを ガランゴロンと鳴らしながら 短パン姿の 熊みたいな 
おじさんが近寄って来た。

“釣れるかね?”

(釣り場を 荒らしたら釣れんやろ)

“そんな 格好で 何してるの?”と尋ねた。

上流に 野湯があるから入って来たと
寒く無いのかと尋ねたら

“この川の水は 暖かい”

“え?”

水の中に手を入れてみた。
生温い 外気温より 高い水温。

“温泉が流れ込んでるから 暖かいよ”と

確かに あちこちから 湯気が上がり
湯の花が 溜まっている。

ここで 釣るのを諦め
宿に戻りかけた。

目の前に 鹿が寄って来る
何か言いたげに....

“ここで 釣れ?か?”

瀬頭に 打ってみた
すかさず ガツンと 大当たり
でも 魚の姿は 観れなかった。

その瞬間 ハッとなった。


美しい 生温い川 
足元には 魚がいっぱい
こちらと あちらを音を立て
行き来する釣り人
熊みたいな おじさん

ずっと ずっと 何処かで
観た景色だなと 思っていた。

そう 急性期病棟 毎夜毎夜
機嫌良く 三途の川で
魚釣りをしていたら
やっと かかったと思ったら

枕元に 立つ看護師さんに 
“息しなさいって 叩き起こされた”

”……… “

魚釣れなくて 良かった。

宿に戻り
冷えた身体を温めに 温泉へ

朝からハレの食事
普段の二日分の食事が並んでいた。


川の水が 暖かい

手を入れてみなければ 伝わらないな


平安な暮らしをする縄文人
浦島太郎な浮世雲

さあ 今日は 地の涯まで 走る。
続く

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