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①狐野彩人 大学生YouTuberが地方局アナウンサーになるまで

「笑いのツボが合う」
恋人に求める条件ではありません。
UHB北海道文化放送(弊社)に入社した理由です。
はじめましての方、はじめまして。お久しぶりの方、お久しぶりです。
狐野彩人(このさいと)と申します。この度2024年度のUHB新人アナウンサーになることができました。


特にアナウンサーを目指してみたい人向けに書いてみました!

1.とあるアナウンサー試験にて

「札幌市出身です。高校は札幌南高校。大学は東北大学法学部です。」

このセリフを就活中、何度も言いました。北海道の方や東北の方、学歴に敏感な方は賢いと思ってくださるかもしれません。ですがアナウンサー試験中、これを言えば「真面目さは伝わってきた。でも他の面ももっと見せてほしい」と言われて落ちました。

「大学では1年の時にボランティア団体を立ち上げて代表をしていました。学生に無償で食料提供をしていました。クラウドファンディングでは40万円集めることができました。」

コロナ禍で行動制限がかかる中で始めた試みも、就活で話す材料になってしまいました。ありがたいことに団体の活動は新聞やテレビに取り上げていただきました。アナウンサーのエントリーシートには「メディア出演歴」という謎の項目があります。他の方は何を書くのかわかりませんが私は堂々と「日経新聞」と書きました。面接でもいわゆるガクチカ(学生時代に力を入れたこと)としてカードを切りました。面接官から返ってきたのは「狐野くんは入社しても3~4年で辞めそうだね」という寂しい言葉。

「言葉のプロになりたいからです。自分の言葉でたくさんの人を楽しませたり心を動かしたり命を救ったり…。一生かけて伝え方を勉強したいです。」

これはキー局の面接にて。学校の家庭科室くらいの広さで、無駄に天井の高い部屋で言いました。面接官の机の上にはアクリル板があり、パーテーションで簡易的に仕切られた壁の向こう側ではラグビー部と野球部と応援団長が叫んでいました。声がかき消される中でなんとか伝えるべく、私はかがんで面接官の机とアクリル板の間のわずかなすき間を狙って言葉を発しました。次の週、私は某報道番組のスタジオでテストを受けていました。どうやら茶道部の姿勢と言葉は届いていたみたいです。

(高3から入部。4カ月間の練習の末、学校祭でお点前を披露し引退。)

自己紹介と愚痴のブレンド。何を伝えたいのか。アナウンサー就活は世間とかけ離れている、ということです。一般的に就活で有利とされる学歴・ボランティア経験・体育会系であること。アナウンサー受験において「これがあれば強い」というものはありません。無理やり1つ挙げるなら「自己プロデュース力」でしょうか。差別化できて、それを上手く伝えられるのなら全てが武器になる世界。アナ受験のネット掲示板で「アナウンサーになるのに有利な学校はどこですか?」と聞く高校生がいます。もしこれを読んでいる方の中にいるなら私は真面目に「NSC(よしもとの養成所)」と答えると思います。ちなみに私は1度パンフレットを取り寄せました。

2.YouTubeを就活に持ち込む

話を戻します。アイドルもミスコン受賞者もモデルもいる中、大手アナウンススクール(アナウンサー受験用の予備校のようなもの)のない仙台でできることは「YouTube」だけでした。撮影・ナレーション・編集・投稿を全て一人でする。テレビマンの苦悩や楽しさを体感できるかもしれない。もし登録者が多かったら自分に箔をつけて売り込むことができる。こんな「打算」で大学2年の時から週1本のペースで旅動画を投稿していきました。バイクが好きなこと・食と景色のリポートができることなどから旅動画をチョイス。一番の名作は宮城県から原付旅をしていていた道中、鹿児島で転倒する動画です。

結局、登録者は200人くらいで就活がスタート。「大学生 仙台」と検索しても出てきません。チャンネル名「まきばのあや」は1度もエントリーシートに書けませんでした。にもかかわらず私のチャンネルを見つけたテレビ局が1社だけあります。そうUHB(弊社)です。人事部の採用担当から「YouTube見ました。」というメールが来た時、私は驚きのあまり膝から崩れ落ちました。「特定されている…。逆に怖い…。」とちょっとだけ引きましたが、続けて「ファンになりました。」と書かれていました。この時、東京・大阪・名古屋と、各地で面接に落ち続けていた私の就活の風向きが変わりました。「打算」が「戦略」に変わった瞬間です。

3.アナウンサーか制作か

私はお笑いが大好きです。ネタを見るのも書くのも。YouTubeの動画には私なりの「面白い」を込めています。面白いことを考えて発信したいという思いでテレビ局を志望しました。YouTubeをしている中、裏方に気持ちが傾いた時があります。カメラの前で話すよりも友人を撮影してその様子を編集する方が楽しかったからです。アナウンサー職と並行してバラエティ制作の募集にもエントリーしていました。そんな中で参加したある局の制作のインターンのことを強く覚えています。チームで考えた番組案をディレクター・プロデューサーにプレゼンして評価を受けるというもの。結果、チームは2位。講評で「話すのが上手い。」と言ってもらえた時、私は「企画力×話術」の両方を極めたいと思いました。「面白いことを考え、自分の言葉で伝えたい」これが私の就活軸です。

(内定後は5分間で本を紹介して競い合う「ビブリオバトル」にのめりこむ。)

4.私は就活を終えた

UHBの試験で「どんなアナウンサーになりたい?」と聞かれた時、「アナウンス界の大泉洋になりたい。」と答えました。伝統的な番組の司会もコミカルなボヤキも浅草のぶっきらぼうな師匠もできるふり幅。「どんな場面でも的確に立ち回り、人の心を動かすアナウンサーになりたい。」

とはいえ「アナウンス界の大泉洋」と試験で答えるのは明らかな大博打。何とか爪痕を残したいにしてもふざけていると思われても仕方ありません。そんな私を受け入れて「面白い」と言ってくれた、もっと言うと「アナウンス界の大泉洋」と言っても許されそうな雰囲気を試験中に醸し出すUHBに魅力を感じたのかもしれません。(敬称略)

アナウンサーはまだ人気職ゆえに足元を見てくる会社も少なくありません。交通費は出さず、年末年始だろうと関係なく「来週また来てください。」と急に試験に呼び、情も無く落とす。そんな中で「この会社に入りたい!」と心から思えたのはUHBが最初でした。

UHBの魅力は、交通費を2次試験から出してくれた所や、試験日を1カ月以上前から伝えてくれた所だけではありません。良い意味でとがっている所です。情報番組は生活に身近であることが求められます。以前、土曜日の夕方に「お葬式特集」を放送していました。テーマは確か「突然喪主になったらどうなるか」。確かに生活に身近で大切な話題です。YouTubeはもっとすごい。アナウンサー全員でアカペラをしたかと思えば、セクシー女優にインタビュー。競馬番組はほぼ裏方の趣味の延長です。そもそも社名のUHBは「UHF波 Hokkaido cultural Broadcasting」の略です。覚えさせる気がありません。というか英語の略語に漢字が出てくることなんてあるのですね。『水曜どうでしょう』でおなじみのHTBは「Hokkaido Television Broadcasting」です。わかりやすい。
ちなみにUHF波はultrahigh frequencyの頭文字。ウルトラハイフリクエンシィって何ですか皆さん!!!大事な社名にウルトラとか入れちゃう辺りがとてもキュートですよね。 

我が家では昔からずっと某他系列の番組が点いていました。当然第一志望は某系列、北海道なら他局でした。しかし、UHB(フジテレビ系列)から内定を頂いてすぐに、控えていた道内他局の面接は辞退し、某系列のキー局の本選考にはエントリーしませんでした。完全に虜。

UHBから内定の電話を頂いた瞬間。小6の時に着ていたジャージで電話に出てしまう。

5.最下位からのスタート

「UHBは自分の目標の足がかりを作れる場所だよ。」と先輩が言っていたので私の目標を書いて自己紹介を締めます。私の目標は「この業界で生き残ること」です。とにかくすごい方が多すぎます。社内の男性アナで最も年齢が近く、気さくに話しかけてくれるので「お兄ちゃん」のように感じていた江上太悟郎先輩は夕方の帯番組のMCを務めております。さらに上を見ると社内外問わず、「こんな風にどうやったらなれるの…!?」と憧れと諦めを同時に抱かせてくるような方で溢れています。加えて昨今は芸人や声優が台頭し、「アナウンサーの仕事」が変わりつつあると感じています。

 横を見ると同期からはもう遅れをとっています。私はアナウンススクールに通っておりません。正確には就活中に3日間基礎コースを受講したのみです。腹式呼吸など基礎の基礎を大学1年生に交じって3年生の時に参加しました。他の同期は皆早くからスクールに通い、アナウンサーに求められる発声やスキルを獲得しています。「スクールに通わずにアナウンサーになったこと」が伝家の宝刀なのは今くらいです。ここからは実力不足の証明、なまくらになってしまいます。

スタートラインで出遅れる、振り返れば様々な場面で感じてきました。高校最初の数学のテストは100点満点で23点でした。アナウンサーテストがあるなら二桁とれるのでしょうか。ただ数年かけて努力するのは好きだし得意です。結局数学は東北大の二次試験で83%取るほど武器になりました。テレビ離れが進む中で「インフルエンサー」ではなく「アナウンサー」になりたかった私を、これから少しでも気にかけていただけると嬉しいです。ご一読いただきありがとうございました。

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