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大学受験当日の英語の試験でビートルズに救われた話

 タイトルの通り、比喩でも何でもなく大学受験において、僕は文字通りビートルズに救われた。

 彼らのおかげで受験に合格できた、といっても決して過言ではないくらい、この出来事は僕の人生における重要なターニングポイントだったと思う。

 受験当日。
最後の試験科目は英語だ。

 過去問でも最高で7割の得点しか取ったことのないほど、僕の苦手科目。

 洋楽は普段からよく聴くんだけど、語学に関してはどうしても苦手意識が拭えなかった。

 答案用紙が次々と配られていく中、気分は最悪、心臓はバクバクだ。
喉から吐瀉物が込み上げてきそうなくらい、僕はかなり緊張していた。
浪人してる訳だから、過度の緊張感に苛まれるのも当然なのかもしれない。

 しかしいざ試験が始まると、そんな最低な緊張感などすぐに忘れ、僕は問題に全力で集中する。

 大問1と大問2は長文問題だ。
文法や語法があまり得意でない僕は、この長文を確実な得点源にしなければならない。

 そしてできる限り短時間で、正確な答えを導き出すことが絶対条件だ。

 後の正誤問題や穴埋め問題を考える時間や見直しをする時間を貯蓄するために、到底長文問題に時間をかけてはいられないのだ。

 だが必死にそれを解いている最中、普段の調子が出ていないことに僕は気付いていた。

 ダメだ。
正解していると確信の持てる答案が明らかに少ない。
訳すスピードも普段より若干遅いし、分からない熟語や表現だってそれなりにある。

 なんとか二つの長文問題の回答は全て、答案用紙の記入欄に書き込んだものの、まるで自信はなかった。

 少なくとも僕は、この時点で悲観的になっていた(まだ試験時間中だというのに、今考えたらなんて精神力の弱い奴なんだろうと思う)。

 当初自分で設定した制限時間は大幅にオーバーしてるし、正直言って手応えなんて皆無に等しい。

 そんなネガティブな感情を心の中に引き摺りながら、僕は大問3を解き始めた。 

 その時だ。
大問3の問1を見て、僕の心情は一気にポジティブに変化した。

 ビートルズだ。

 ビートルズには「All You Need Is Love」という楽曲があるのだが、その曲名と全く同じ英文法を使った問題が、その問1で出題されていたのだ。

 僕は普段からビートルズをウォークマンでよく聴いていたし、そもそもビートルズを聴くきっかけとなった曲が、この「All You Need Is Love」だった。

 初めてこの曲を聴いた時、僕はなんて壮大で美しい曲なんだろうと心の底から思った。

 とにかく上手く言葉に表現できないが、本気で感動したのだ。
そしてそれ以降、僕はビートルズを夢中になって聴くようになった。

 だから、そんな曲と絶妙のタイミングで答案用紙の上で対面したのは、運命的な巡り合わせだとすら思った。

 当然その問題は一瞬で回答できたし、悲観的に囚われていた僕の心に、一気に楽観性が押し寄せてきた。

 これを気に僕は自信がついた。
僕の脳内では「All You Need Is Love」が流れ出し、ビートルズが僕を勇気づけてくれているような気がした。

 そんな突如発生した楽観的精神を維持しながら僕は、これ以後の問題を次々と答案用紙に記入していった。

 そして全ての問題を解き終え、やがて試験時間終了のチャイムが鳴った。

 正直言って、7割以上を取れたという確固たる自信はなかった。

 ただ僕はやれるだけのことをやり切った。
途中で挫折しかけそうになったものの、思いも寄らない(個人的な)サプライズ問題のおかげで、最後まで諦めることなく僕は回答に集中することができたのだ。

 達成感というのはまさに、こういう時のために使う言葉なのだろう。

 そして数週間後、合格発表の日。
僕は心臓が口から飛び出るような想いで、スマートフォンで合否結果を確認した。

 結果は、合格だった。

 僕は心の底から歓喜した。
かつてこれほどまでに嬉しいと思えた出来事が、僕の人生にあっただろうか?

 僕はビートルズに救われたのだ。
ビートルズを聴いていたからこそ、僕は試験時間中に不安の波に呑まれず、自分のペースを維持できた。
その結果、第一志望の大学になんとか合格することができたのだ。

 ジョン・レノンの描いた愛が、僕を合格に導いてくれた。
ビートルズという存在が、僕の人生を文字通り変えてくれたのだ。

 こんな経験をしなければ僕は、まさか音楽が人生における具体的な転換点の役割を担うなんて、思いもしなかった。

 ビートルズは歴史上、世界で最も偉大なバンドだと評されているけれど、その時の僕は初めてその意味が分かった気がした。

 ただ楽曲の質が優れているだけじゃない。
彼らの創り出す音楽が、それを聴く人々の人生を何らかの形で決定的に変えてくれるからだ。

 受験という机上の戦争で、不意に訪れた助け舟。
最後に一つ断言できることがあるとすれば、もしビートルズを聴いていなかったら僕は、きっと合格を掴み取ることができなかっただろう。

 だからこそ、ビートルズは僕の偉大なる恩人なのだ。

 P.S.
現在大学生で英語の単位を全て取り終えている僕は、心に決めていることがある。

 この先の人生において、英語は二度と勉強しないと。

 (因みにビートルズには、「All You Need Is Love」以外にも心に響く素晴らしい名曲が沢山ある。「Rain」、「Help!」、「I Am the Walrus」なんかは、個人的に僕が最も好きな曲たちだ。良かったら是非聴いてみてください)



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