【読書メモ】『「変化を嫌う人」を動かす』ロレン・ノードグレン/デイヴィッド・ションタル(著)
▶今回の書評本:『「変化を嫌う人」を動かす』ロレン・ノードグレン/デイヴィッド・ションタル(著)
『「変化を嫌う人」を動かす: 魅力的な提案が受け入れられない4つの理由』
ロレン・ノードグレン (著), デイヴィッド・ションタル (著), 船木 謙一 (監修)
草思社
▶感想
何か「新しいことを始めようとする」場合は、必ず「変化を嫌う人を動かす」必要が出てくるので、その際のヒントがたくさん散りばめられており、必読の書だと思いました。
▶3行要約
魅力的なアイデア、製品、サービスが相手に受け入れらないのは、魅力が足りないからではなく、相手が受け入れたくない理由=「抵抗」があるから
「抵抗」は①惰性、②労力、③感情、④心理的反発の4つ
アイデアのメリットをアピールするより、魅力をさらに増やす努力を重ねるより、「抵抗」を減らすアプローチの方が、ずっと効率的で低コストである
▶読後メモ
○人の心を支配するのは「燃料」より4つの「抵抗」
新しいアイデアの受け入れを阻む4つの「抵抗」
「惰性」自分がなじみのあることにとどまろうとする欲求
「労力」変化を実行するために必要な努力やコスト
「感情」提示された変化に対する否定的感情
「心理的反発」変化させられるということ自体に対する反発
「促進型燃料」:7P:アイデアの魅力や説得力を高める力
Product
Place
Price
Promotion
Packaging
positioning
people
「回避型燃料」:FILRR:懸念、疑念、不安を引き起こす
Fear(恐怖心):何もしないことや間違った選択をすることに対する恐怖から来る心配や懸念
Impatience(苛立ち):今すぐ変わってほしいという強い願望
Loss(喪失感):自分の所有物が奪われたときに感じる苦痛
Risk(リスク):新しいことに挑戦したら何が起きるか分からないという認識
Regret(後悔):決断を過たときに抱くと予想される気持ち
①「惰性」を克服するポイント
「惰性」がどの程度のものになるかを判断する3つのポイント
改革レベルか/改善レベルか
新しいアイデアになれる時間を与えたか
提案した変化は徐々に起きるか/1回で大々的に起きるか?
「惰性」を克服する2つの戦術
「アイデアにならす」ための戦術
時間延長:新しいアイデアについて知らせてから、意思決定を求めるまでの時間を延ばすことはできるか
多頻度:どのくらいの頻度でそのアイデアのことを思い出させているか。アイデアに繰り返し触れることで親近感が高まる。機会を見つけてはメッセージを発する
段階的:変化のプロセスを段階的にし、混乱を招かないようにすることはできるか
典型的:そのアイデアは、それが属する分野の典型的なものと一致しているか。それとも今までに見たことがないものだろうか。
変化の顔:変化の顔は見慣れた好感の持てる人か
見た目や雰囲気:そのイノベーションの見た目や雰囲気はオーディエンスに合っているか。ミラーリングを行い、オーディエンスと同じ言葉やスタイルを取り入れる
喩え(アナロジー):一般になじみのないアイデアである場合は、よく知られているアイデアで喩えに使えそうなものはないか。喩えを使うと、初めての場所でも身近に感じさせることができる
「相対化する」ための戦術
複数の選択肢を用意する
極端な選択肢を加える
→他の選択肢が合理的に見える劣った選択肢を基準点として使う
→それとの対比で他の選択肢が良く見える
②「労力」を克服する方法のまとめ
「労力」がどの程度のものになるかを判断する2つのポイント
苦労:その変化を取り入れるために、どの程度の肉体的・精神的な苦労が必要か
茫漠感:やってもらいたい行動の実践方法を人々は知っているか/茫漠としてよく分かっていないか。
「労力」を克服する2つの戦術
「ロードマップを作成」する戦術
やってもらいたい行動の実践方法・手順を1つ1つ示す
やってもらいたい行動を起こすタイミングを明確に区切って示す
→その行動を忘れずに実行してもらえるようになる行動を誘発するきっかけを設定し、「タイミング」と「取るべき正しい行動」とを明確に結び付けて記憶に定着させることで、うっかり忘れを防止する(例:「Xの状況になったらYを行う」)
「行動を簡素化」する戦術
アイデアを実現するためのすべてのステップを、重要そうでないものも含め挙げてみる
→体験タイムライン(↑良い体験 ↓悪い体験 →時間経過 でグラフ化)を活用すると、イノベーションの妨げになっている隠れた問題点を見つけ出すことができるどうすればそのイノベーションを実行しやすくなるかを考える
→一見すると小さな「抵抗」でも、それを取り除くことで大きな成果を得られる場合がある。「No」と言いにくくする
→「簡素化」は一般的には「やってもらいたい行動をやりやすくする」プロセスを指すが、一方で「Noと言いにくくするやり方」もある「デフォルト」にする
→実践してもらいたい行動が「労力」を全く必要としないものになるように「労力」の計算法を変えるUXデザイナーのように思考する
負担を軽減する
デザインをシンプルにする
選択肢を増やし過ぎない
進捗状況をユーザーに知らせる
③「感情」を克服する方法のまとめ
「感情」がどの程度のものになるかを判断する2つのポイント
恐怖や不安:変革案を提示したら、オーディエンスはどのくらい恐怖や不安を感じそうか
別ニーズを損なう:機能面の価値を高めることで、感情面や社会面の重要なニーズをうっかり脅かすことがある(ジョブ理論)
→例:ケーキミックスは簡単・便利すぎて、時間・手間をかけてケーキを焼いた感じがなく、心のこもっていない行為だとみなされていた
「感情」面の抵抗を発見する3つの手法
「なぜ」にフォーカスする
人々がイノベーションを「雇用」するのはなぜか? アイデアが生み出す機能面・感情面・感情面の価値は何か?
「感情面の抵抗」の症状ばかりに目を向け、抵抗の裏に潜んでいる原因への対処がおろそかになっていないか?
「イノベーションは、イノベーターとオーディエンスとの間の交渉である」と考える。
「ノー」は「抵抗」の症状だが、抵抗する本当の理由を明らかにする必要がある。
理由を聞き出す質問の方法
(「なぜ」という言葉そのものを使って質問する必要はない)オープンクエスチョン:
「価格がどのくらいであれば良いとお考えなのか」
「このプラットフォームのどのような点が気になっているのか、もう少し詳しく教えていただけますか?」探りを入れる質問
「前回はどのような感じでしたか?」
「それは興味深いですね。詳しく教えてもらえますか?」問題を浮き彫りにする質問(「新しいアイデアが相手のニーズや目標と対立しそうな部分はどこか?」という点に絞る)
「このプラットフォームのどのような点が気になっていますか?」
「前回の商談で一番細かく調査されたのはどの部分だったか、おぼえていらっしゃいますか?」
行動観察者になる
行動を観察することで「感情面の抵抗」への理解を深める
他者を実地に観察することで、オーディエンスが口に出さないニーズや懸念について重要な洞察を得ることができ、「感情面の抵抗」が発生する前にそれを予測できるようになるオーディエンスの置かれている状況を理解する
何の脈絡もなく行動する人はおらず、さまざまな社会的、感情的、物理的背景の中で行動は起こされる。普段過ごしている環境で人々を観察すると、彼らの求めているものやそれを手に入れるために妥協しても良い(あるいは妥協したくない)ものに関する深い洞察を得ることができるオーディエンスが自ら考え出した対処法にはどのようなものがあるか
人は自ら対処法を編み出して「感情面の抵抗」を克服しようとすることがよくあり、そうした対処法を突き止めたら、それを大いに参考にして、オーディエンスのニーズを満たすことが可能な、より洗練された、抵抗を引き起こさない解決策作りに着手できる行動観察者のマインドセット
進歩を志向する:製品志向でいると、製品から発生する「抵抗」しか想像できない。進歩志向になると検討範囲が広がる
偏見を捨て去る:事実の解釈を誤らせる可能性がある「自分の偏見の目録」を作成し、自分自身に偏見がないか問いかける
他者を批判しない:相手を否定するのではなく、彼らの目・実体験を通して、何が起こっているのかを理解しようと最善を尽くさなくてはならない
外部の人を引き入れる
イノベーションのプロセスにオーディエンスを積極的に参加させ、巻き込む
顧客を従業員として雇う
④「心理的反発」を克服する方法のまとめ
「心理的反発」が強くなる3つの場合と、「心理的反発」の程度を判断する3つのポイント
人々の強い信念(政治、宗教)を否定するようなアイデアの場合
→私のアイデアは人々の核となる信念を脅かしていないか人々が変化を迫られていると感じる場合
→変化を迫るようなアプローチをしていないか。変化しないことに対する罰則、時間的制約、要求の厳しいメッセージはすべて強い「心理的反発」を発生させる原因となるアイデアづくりに人々を巻き込まなかった場合
→オーディエンスを締め出していなかったか?
「心理的反発」を和らげる2つのテクニック
・心理的反発を克服するための秘訣は、変化の無理強いを止めること
・相手を説得しようとするのではなく、相手が自分自身を説得できるよう手助けをした方が良い(=「自己説得」)「イエス」を引き出す質問をする
質問しているのか/指示をしているのか
・何をすべきかを人に指示するのは一種の圧力である
・質問すると「心理的反発」はなくなる合意点や一致点を明らかにする質問から始める
・対立や意見の相違から会話を始めるのは過ち
・合意点・一致点を明らかにすることから始めると、新しいアイデアが受け入れられやすくなる約束を発表させる
・人前で約束すると自己説得の力は一段と強くなる
コ・デザイン
プロセスに積極的に関与させる
新しいアイデアをデザインするプロセスに人々を積極的に関与させると、デザインが出来上がった時にそのアイデアを受け入れたい、実行したいと、より強く思ってもらえる実質を伴う参加をさせる
簡略版の参加や内容を伴わない参加をさせて思わせぶりをしても自己説得は始まらない。
参加することに意味があり、人々が期待する以上に関与できる場合に、コ・デザインの効果が最大化される。
以上です。
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