小泉 雨音。(こいずみ うおん。)

作詞家。作家。言葉を紡ぐのが好き。

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最近の記事

月の壁 ~ミナコの月 7

■印象。 御「出席」させていただきます。 どうぞよろしくお願いします。 青木ミナコ ミナコは、使い慣れたペンで、同窓会の葉書に書いた。 手に持つと、ちょっと重たいけれど、 実際に書き始めると、その重さがあるから書きやすくて、 綺麗に文字が書ける、 ずっと使い続けてきた愛用のペン。 仕事での大事な契約事のサインや、 今、住んでいるマンション契約の際にも使った、 ミナコにとっては、大事なペン。 キャリア女性であ

    • 月の壁 ~ミナコの月 6

      ■私は、私。 同窓会の案内は、 今までも、時々、来ていたけれど、 なんやかんや仕事でバタバタしてて、 返信も、いつもこんな感じでほったらかして、 気付いたら、いつも、終わってた。 …というか、 正直、 そこまで行きたくなかったから うっかり忘れたついでに 行かないことを選択してきた。 青木ミナコ。39歳、独身。 同窓会に行きたくなかった一番の理由。 相

      • 月の壁 ~ミナコの月 5 

        ■静かな夕食。 ユリと食事をしたあの夜、 同窓会の案内が届いた日から 一週間が経った。 年初の挨拶だの、 年間の予算組、新たなプロジェクトの立ち上げで、 朝起きてから、会社に出勤し、 ひと段落ついて、ふと窓の外を見ると、 すっかり日も暮れて、 夜景と化した、外の風景よりも、 会社の中のデスクだの、 蛍光灯だのが反射して、映り込む。 それが帰宅の合図になっていた。 19時を過ぎて会社を出て、 駅の近くのスーパーで、

        • 月の壁 ~ミナコの月 4

          ■17年。 高校の同窓会の案内状が届いた翌日、 ミナコはいつものように、いつもの電車で出勤した。 1月の、冷たく乾いた風が、 ミナコの白いコートの裾を、 幾度となく、ひるがえしていく、そんな朝だった。 会社のロビーを抜けて、エレベーターに向かうミナコの靴音に 前を歩いていた、黒いコートを着た、若い男性社員が振り向いた。 「あっ、おはようございます、主任。」 彼は、つかさずミナコを見るなり、軽く会釈をして挨拶した。 「おは

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        • 月の壁。~ミナコの月
          7本
        • lyrics (new)
          2本
        • つれづれなるままに。
          4本
        • オリジナル楽曲
          13本

        記事

          アナタガイテモ イナクテモ。

          星が星として 夜空を流れていくように 雲が雲として 形を変えていくように 空気のように漂っていて ただそこにあって  意識もしない 気づきもしない 当たり前にあるように 忘れてしまいたい わけじゃない 忘れてしまった  わけでもない アナタガイテモ イナクテモ わたしの普通が あるように 私は私のままで 此処に居るだけ。 透き通る光 分かれて色めく世界 分離のprism 赤橙黄緑青藍紫 空気はいつも漂っていて ただそこにあって  当たり前だと 無いかのようで 当た

          アナタガイテモ イナクテモ。

          月の壁 ~ミナコの月 3

          ■葉書 月がすっかり西に沈み、 街灯の明るさで、星のあかりも消された頃、 ミナコは自宅マンションに戻っていた。 エントランスをくぐり、郵便受けを確認すると、 青木ミナコ 様 と、 自分の名前が印刷された封書が一通、 投函されていた。 ミナコはポストの鍵をあけ、 封書を取り出し、すぐさま差出人を確認した。 どこか、見覚えのある名前… …だけど、一体、この人、 どこの誰だったっけ? ミナコは エレベーターに乗り、 自分の部屋が

          月の壁 ~ミナコの月 3

          月の壁 ~ミナコの月 2

          ■記憶のペイジ。 女性の私から見ても、ユリは可愛い。 それも、幼稚な可愛らしさじゃなくて、 なんというか、 こう、ちゃんと大人なんだけど、 ちょっとした仕草とか、 ふとした表情とか、 まなざしとか、 人に可愛くみられたい とか、 そういう、したたかな計算じゃなく 自然の可愛らしさ。 それなりにしっかりもしててるけど、 いい感じで抜けてもいる。 このバランスが絶妙で、 愛さずにはいられないというか、 自然と誰からも愛されて

          月の壁 ~ミナコの月 1

          ■ 約束。 「ねぇ、あのさ、ミナコ、 ほら、この前さ、 一緒に観に行こうって言ってた映画、あったでしょ。 あれさ、 ちょっと、ワケあって、別な人と行くことになっちゃって… 一緒に行けなくなっちゃった。 …ごめん。」 ユリは、ほんの少し、肩をすぼめて、 ミナコを覗き見るようにしながら、 申し訳なさそうに、ごめんと小さく手を合わせた。 ユリとは、高校時代からのつきあい。 ミナコは、申し訳なさそうにしているユリとは対照的に、 表情一つ変えず、

          月の壁 ~ミナコの月 1

          おかえりなさい。~HUG~

          わたしは なにを 急いでたんだろう? わたしは なにを したかったんだろう? 朝、目が覚めて 昨日の私は どこにもいない。 昨日の私を探しても 今日の私は 昨日にいない。 まっしろな時間が 雲のように流れてく。 私はここに 変わりなく居る。 はるか彼方の アタシのミライが ここにおいでと 手招きしてる。 わたしは どこに 行きたかったんだろう? あれしてこれして、それが一体、何だったんだろう? 生きてる以上に わたしは何かを確かめて 生きてる以外に わたしは何

          おかえりなさい。~HUG~

          「今」が、ある だけ。

          先のことなんて わからなくていい。 先になったら それは 「今」になるから。 今、「今」が あるだけ。 今、「今」が あるだけ。 今、「今」が あるだけ。 今、「今」があるだけで 僕らはいつも「今」にしかいない。 先のことなんて わからなくていい。 わかったときに それは「今」になるだけ。 今、「今」が あるだけ。 今、「今」が あるだけ。 今、「今」が あるだけ。 今、「今」があるだけで 僕らはいつも「今」にしかいない。 今、「今」があるだけで 僕らはいつも「今

          「今」が、ある だけ。

          DUNE

          塗ったマニキュア 待つ間だけ 煙草に 火をつける 束の間 借りた腕と わりきって あなたに 抱かれる 枯れた夜を 潤すように 一瞬(とき)を味わい 馴染んだ あなたの仕草 ほどいても 剝がせない DUNE  今夜も月はめぐり      朝へと堕ちてゆく なぞる薬指 帰る訳なら 聞かない 約束ね まどろむ 月の雫 指先で プラチナ 真似する これみよがし みせる涙は フェアじゃないから 煙にむせたふりして 腕のなか しがみつく DUNE  今夜も月はめぐり      

          TWO HEARTS

          「これが最後だよ」と なだめるようにKISSを交わした 闇のシーツの上  たぐりよせる夜がはじまる ON SUNDAY あなたは隣に迎え入れる 白いドレスの女(ひと)は  私とは似ていない TWO HEARTS  ハートのQUEENを最初に引いたのは彼女 TRUE LOVE  愛なんて真実と同じ数だけありふれてる JUST WAIT  このまま時を止めることなど出来やしないと 百も承知と 分かってるのに  分からずやの TWO HEARTS. もしも彼女よりも 君と早く

          SHOO BE DOO

          消えてく ぎんの月  暗がりが漂う まるで未来さえも  闇にかすめてくように 見えない心なら  ぬくもりで信じる 真実と言葉は  うらはらなネメシス 朝も夜も  おたがいをたぐりよせて… OH, SHOO BE DOO, HA HA HA DARLING, LA LA LA SHOO BE DOO, HA HA HA SMILING, BABY SHOO BE DOO, HA HA HA DARLING DON’T YOU WORRY I’LL BE ALWAYS ST

          Because…

          「君に与えられるものなんてない」と  あなたは肩で息を吐(つ)く 風に怯える子供のまま  私の胸の上で あなたが息を吐(つ)く 夜は黒くふさぎこみ 心のありかを見せつける 見えるものほど不確かなもの まるでつきつめる様に I love you, because you are you. あなたの鼓動さえも いとしく感じるから I love you, because you can’t disappoint me. あなたが傍にいる ただそれだけで 私は強くなれるか

          ドラマにも、ない。

          夕暮れ消えてく  ビルの谷間をくぐり ゆっくり僕は  車 走らす カーブを曲がれば  君はいつもの場所で ちいさく 空を抱えてる 繰り返す 同じ日が終わり  君と僕は また始まる ドラマにもない 小説もない  よくある恋でも 左に座(い)る 君の笑顔  誰より見ていたい どんな辛さも 悲しみさえも  二人いることが 幸せと 言えること  君が気づかせた フロントガラスを  夜のライトが照らし トンネル抜けるように 流れる 肩先もたれた  君の髪がなびいて 優しく頬を  

          MINIMUM STAR

          思い切り背伸び  何もかも精一杯で 頑張っていなくちゃ 駄目だと信じてた ラッシュに消された  私の声だけが STRAY CHILD…  迷子ね 空を覆う雲の向こうには ほら 星が輝く 見えなくても輝きを忘れはしない   MINIMUMなSTARも 海の青い色  同じように映ってるの? 君とはどれだけ  答えあわせられる? 人と違う自分  求めているくせに 違うこと  恐れる 「どんなものも必要だから在る」と  君がつぶやく 生きる意味が分からなくても 太陽は  誰