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短編小説集

84
短編小説を挙げています。
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#深夜

深夜の本音

深夜の本音

 テレビを点ければ、似たような番組構成で、同じようなことを話し続けていた。不安を煽る情報の数々が、ただでさえ疲弊している心身の上に乗っかっていく。土台が揺らいでいる状況では堪える内容に辟易して、テレビに向かってクッションを投げつけた。気付けば日常は取り上げられて、新しい生き方を強要されている。洗脳に近い方法論の中で視覚や聴覚、更には思考回路まで毒されていくような恐怖心が芽生え始めていた。
 このま

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明け方の乾杯

明け方の乾杯

 部屋に着いた途端に、屋根が雨粒を弾き始めた。好きな音に耳を傾けながら、僕は乗っていたロードレーサーを部屋の片隅に置く。フローリングの上に、通販やスーパーで貰った段ボールを敷いたスペースは異彩を放ち、違和感を体現していた。
 エアコンのリモコンの電源ボタンを押して、冷風を求めた。瞬時に涼しさを手に入れられないのが難点だな、と呟きながらも唯一の冷暖房器具が動く出す時を背負ったカバンを下し、着替えなが

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深夜のコインランドリー

深夜のコインランドリー

腕時計の針は0時を示しいている。
昼間の喧騒とは異なる
ドリルでアスファルトを砕く
騒音レベルの道路工事の音と
昼間の太陽にも負けないくらいに
明かりを灯す照明が秋夜を彩る。
僕はコインランドリーの入口へと繋がる
短い階段に腰かけ、読みかけの小説を片手に
タバコをふかしていた。
「あと、どんくらいかな?」
タバコを吸いながら店内に戻る。
近頃増えた空き地を有効利用しているような
立派で綺麗で、ドラ

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