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さまざまなアプローチから学ぶ、店舗でのロボット活用

現在、小売店舗では人手不足や業務効率化、顧客体験向上を目的にさまざまなテクノロジーが導入されていますが、今回は「ロボット×店舗」をテーマに取り上げたいと思います。

ひと昔前は「ロボット」と聞くと未来の話のように感じたかもしれませんが、ここ数年で各業界でのロボット活用は一気に進み、小売の店舗内においてもその例外ではありません。

海外では大手小売のWalmartをはじめ、中・小規模の店舗も含めてあらゆるシーンにロボットが導入され、スタートアップの先進的なソリューションも次々と登場しています。

実際にどのような事例があるのか、海外の動向を中心に調べてみました。

スタートアップ企業との連携で様々なロボット活用に挑戦するWalmart

リテールテック分野で常に新鮮な話題を提供してくれる大手小売チェーンのWalmartは、2021年7月に自律型ロボティクスのスタートアップ企業Symboticと協業し、流通センターの仕分けや棚卸し、荷下ろしなどの作業のロボット化を目指すことを発表しました。これは物流倉庫の事例ですが、同社は店舗でのロボット活用にも積極的に取り組んでいます。

例えば、小売店舗のロボット活用がまだ模索段階だった2017年ごろから、同社はロボット製造スタートアップ、Bossa Nova Roboticsと手を組み、在庫管理に関するロボットのテストを開始。このロボットは、店内を移動しながら商品棚をスキャンし、在庫切れの商品や価格間違い、ラベルミスなどを検出。さらに機械学習を使用することで売れ行きの予測や顧客ニーズ把握にも役立てられます。

当時はまだロボットが店内を回る姿が珍しかったこともあって、大きな話題となりましたが、その後コロナ禍でオンライン注文が急増し、多くの店員が商品ピッキングに対応できるようになったことから、このロボットの利用を中止した、という報道も出ています。

Walmartは他にも、AIロボットスタートアップ企業のBrain Corpが開発した店内フロアを自動で掃除するロボットを導入してみたり、物流システムのスタートアップ企業Alert Innovationの商品ピッキングロボット「ALPHABOT」を活用してオンライン食料品注文の自動化をテストしたりと、スタートアップ企業との協業でロボット事業への挑戦を絶え間なく続けています。

大手小売以外でも、スタートアップ企業の店内ロボットが活躍!

店舗でのロボット活用の動きは、大手小売以外にも広がっています。例えばセントルイスを拠点とするスーパーマーケットチェーンSchnuck Marketsは2017年から小売の在庫管理自動化を目指すスタートアップ、Simbe Roboticsのプロダクト「Tally」を活用し、Walmartと同じような在庫管理ロボットのテストを開始、2021年には全111店舗に導入したそうです。その結果、在庫切れ商品を20〜30%削減できたと言われています。

店舗における在庫管理ロボットは、やはりスタートアップ企業のソリューションの活躍が目立っている印象です。例えば、2017年にZippediは、在庫管理ロボットを開発して90店舗以上に提供し、2021年には690万ドルの資金調達を実現したと複数メディアが報じています。

同じ在庫管理ロボットでも少しアプローチが異なるのが、2016年創業のPensa Systemsです。同社が開発しているのは、ドローンを活用した在庫管理システム。ドローンが店内を撮影し、リアルタイムで在庫管理や製品計画の最適化をサポート。すでに30億を超える製品画像を学習し、98%の精度で小売店舗の棚にある製品を正しく認識できるそうです。2021年6月にはシリーズAラウンドで1,100万ドルを調達。小売店向けのデータおよび棚監視プラットフォームの拡張に向けて準備を進めています。

もう一つ、在庫管理以外のロボット活用事例を紹介したいと思います。アメリカ北東部で400店舗以上を構えるスーパーマーケットチェーンStop & Shopは、店内の危険を検出する巡回ロボット「Marty」を導入。ロボットは床を撮影しながら潜在的な危険を見つけたら従業員に報告します。ポイントは、細長い本体の上部に目と口が付いているところです。愛嬌のある表情でロボットの無機質さを払拭し、記念撮影なども歓迎することで顧客に愛されるロボットを目指しているようです。


ロボット活用は、顧客体験向上に大きな可能性アリ!

上記に挙げた事例を振り返ると、ロボット活用で業務効率化や在庫最適化を実現できることはもちろん、店舗の顧客体験向上にも寄与できるかもしれません。ニューノーマル時代における密回避や非接触のニーズ対応もそうですし、ユニークなロボットが店内にいることで「お店に行く楽しみ」を感じてもらえるケースもあるでしょう。実際に日本でも接客ロボットを導入したことで来客数や成約数、売上向上につながったという報告がたくさんあります。

先ほどご紹介した在庫管理ロボット「Tally」を開発するSimbe Roboticsの共同創設者兼CEOのBrad Bogolea氏が登場したRobot Report Podcastでも、小売の自動化におけるカスタマーサクセスの重要性がテーマとして取り上げられていました。

そのポッドキャストでは、「ロボット企業はロボットだけに焦点を当てるのではなく、変革をもたらすビジネス価値や小売業界に提供する機能、そして顧客体験に焦点を当てる必要がある」といった意見や、「例えばパンデミックで世界中の多くの小売店が除菌のために営業時間を調整したり、普段は双方向に通れる通路が一方通行になっていたりする。そのような状況下で“大きくて怖いロボット”が通路を占拠するのではなく、考え抜かれたデザインのプラットフォームが、お客さんやその環境で働く従業員とシームレスに調和することが望まれている」といったことが語られています。

また、COVID-19によって小売業における自動化とデータ改善の必要性もより高まっていることも話題に。「オンラインでの食料品購入が増加した今、小売が注力すべきなのは棚に何があるのかを知り、最新の棚情報を持つこと。パンデミック前の従来の在庫管理では、来店客が購入したい商品の1つが棚にないことがよくあった。パンデミック以降、より良いデータを用いることによって、棚切れの20〜50%は制御可能である。今後、おそらく食料品の大部分がオンラインで購入され、実店舗でピックアップされ、お客さまのもとに配送されるというモデルになるだろう」といった主旨の展望が紹介されていました。

なお、同社の「Tally3.0」はクライアントが導入店舗数を増やしても投資利益率を維持できるように、できる限り低コストでソリューションを提供しているようです。そう考えると、高品質なロボットを追求するよりも、いかに低コストで実現できるかが店舗にロボットを浸透させる上で重要なポイントなのかもしれません。

国内でもユニークなロボットベンチャーが次々と登場していますし、小売店舗の価値を高めるような新しいソリューションの創出に向けて、引き続きこの分野をもチェックしたいと思います。

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