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ちょっとした工夫で購買体験が変わる!?小売業界の生成AI(Generative AI)活用に期待

皆さんこんにちは、note担当上野です。
先日、ふらっと立ち寄ったアンテナショップで、ある商品を買おうか、どうしようかと悩みながら棚の前でいろいろなことを考えていました。
ちょっと店内が混んでいてレジに並ぶのは面倒だな。これはどんな味がするのかな。と、イチ消費者として買い物をしているといろんなニーズが見えてきて、これらを解決するような新しい買い物体験が近い将来出てきたらいいなと、少し期待をしながらお店を出ました。

さて、そんな今回のnoteですが、先月IVS 2023 KYOTO (※)に登壇したCVC投資メンバーの石井に、いま小売業界に起きていることや、これから期待できるサービスについて聞いてみました。

ちなみに、IVSのセッションは、参加者だけが現地で聴講できるというとっても貴重なもの。note読者にも何かお役に立てる情報をお伝えしたく、そのエッセンスを少しだけ頂戴しようというのが今回の主旨です。

 ※ IVS:スタートアップ企業の経営幹部、投資家、事業会社の幹部等が一堂に会し、各分野の最新トレンドの把握と
 多様な人材の交流を起点とした新ビジネス創出を促進する、国内最大級のスタートアップ・カンファレンス。

上:それでは石井さん、よろしくお願いします。

石:よろしくお願いします。いきなりですが、僕、実は小売業界のことはそんなに詳しくないんですよ(笑)。

上:そうなんですか?そういえば、noteで石井さんのことはまだちゃんとご紹介できていないと思いますので、そのあたりも含めて、まずは自己紹介をお願いしたいです。

石:了解しました。前職はCCCマーケティングっていう会社で、Tポイントの事業に携わっていたんです。小売企業のロイヤリティプログラムとしてTポイントの仕組みを提供し、顧客データや購買履歴などのデータベースを軸にしたマーケティング支援をしていました。

なので、小売企業が持っているデータを活用したマーケティング支援や、デジタル化、UXにつなげていくようなことにずっと関わってきたので、いろんな企業が何をやっているのか、そのデータから何ができるのかという部分はそれなりに詳しいという自負はあります。

上:データ起点と言えば、リテールメディアはnoteでも取り上げてますし、いま話題のChat GPTとかも今後、小売業界と関係してきそうですね。

石:そうですね。結局、いまのトレンドってほぼ全てがデータ起点だと思うんです。Generative AIもデータを使ってAIがAIを生成するみたいな世界ですし、Unified Commerceも各チャネルのオンオフのデータや企業データを統合して One to Oneマーケティングに展開していくような話って考えると、全部がデータ起点なんですよね。ちなみに、今回IVSで話したテーマの中でも僕の中ではここを聞いてほしいな!っていうポイントがあったんですよ。

上:それは気になりますね、今回そこも少しだけ聞いてもよいでしょうか?

石:かしこまりました。では後ほど、お話しさせていただきますね。

小売業界のNEXT BIG THINGSは何か?

上:さて、今回の登壇テーマは「NEXT BIG THINGS」でしたが、先ほど少し話題にあったリテールメディアとか、店舗での体験価値とか、小売業界も少しずつ変わってきているように思います。そのあたりの変化について教えてもらえますか?

石:今回、大きなキーワード3つを挙げました。
1つが「ファーストパーティデータの重要性」。個人情報保護法改正によって、Cookie情報がユーザーの同意なしでは使えなくなりました。その結果、ファーストパーティデータを持つことの重要性がすごく高まったと思っています。
その変化に関連するのが、2つ目のキーワード「チャネルの多様化」。小売企業もメーカーもいろんなチャネルを持つようになって、スマホ起点の自社アプリケーションを開発したりなど、購買チャネルの多様化が起こりました。そして、新規顧客の獲得だけでなく、ユーザーとのエンゲージメントやLTVも重視される時代になったのではないでしょうか。
そして3つめのキーワードが、「iOS14.5」。IDFAを利用したトラッキングが制限されるようになったことは、広告業界にとっては非常に大きい問題だと言われています。副次的に言うと、海外ではDX化が進んでファーストパーティデータを持つ小売企業は新しいメディアを活用して収益を生み出しています。このようにメディアの価値も変わってきているので、この環境の変化は大きかったと思っています。

上:国内の個人情報保護法の改正に先駆けて、海外ではGDPRやCCPAといった個人情報の取り扱いに関する法律が施行されており、Googleなど大手プラットフォーマーの動きも含めて、プライバシー保護の観点からサードパーティデータに頼れなくなるという話はかなり注目されていたと思います。結果的にファーストパーティデータを持つ企業にとっては良い転換期になりそうですよね。消費者にとっても、より良いサービスが受けれるならとてもいいことですし。このあたりは全てデータ活用が鍵になりそうですね。

石:はい、そうですね。最近のトレンドのひとつとして、企業が持っているファーストパーティデータやユーザーデータ、そして外部から取得しているサードパーティデータなど、あちこちに存在するデータを一箇所に集めるという動き(統合データ構築)が、とてつもない勢いでトレンド化していると感じています。
これは統合データを作ってユーザー一人ひとりとOne to Oneマーケティングをするようなイメージで、オムニチャネルの次の考え方とも言われているかなと思います。
小売領域で重要になりそうな統合データの活用例としては、Generative AIを用いたサービス設計とか、NFTやユーザー行動のインセンティブとしてトークンを発行するというようなファンマーケティングの世界などは非常に“次っぽいな”っていう風に思っています。
ただし、重要なのはデータを一箇所に集めることではなくて、 そのデータをどう活用していくのか、そこのストラテジーの部分です。

上:集まったデータを活用してユーザーに新しい価値を提供してくれるなら、それは消費者にとっても嬉しいですよね。でも、その“どう活用するのか?”という部分がすごく難しいような気がしますが…どうすればよいのでしょうか?すでに小売業界でBIG THINGSが起こっているんですか?

石:はい、いろいろなBIG THINGSが起こっていると思っています。実はここが今日僕がお話ししたかったポイントになります。
小売領域でもいくつか面白いスタートアップ企業が出てきていて、その中でもGenerative AI については、Pactumというスタートアップに注目しています。
ウォルマートとかで採用されてるんですけど、ウォルマートって10万社ぐらいのサプライヤーと取引をしているので、ほとんど企業とは対面、面談もせずに契約をしているらしいんです。そこの調達交渉をAIがやってしまうというサービスを提供しています。
やはり、新しい取引先を見つけるだけじゃなくて、その後のDo/Actionの部分、つまり、そこのディールまで成立させてしまうところがGenerative AIならではの領域かなと思うんです。
Pactumを活用することで省人化やウォルマートの新しい収益となる可能性があると思っていて、データを使って最適なものを導くまでで止まるんじゃなくて、周りを巻き込んでこのデータをどう有効活用するのかという目線が重要だなと思いました。

もう一つ、アパレル業界で、ダイナミックプライシングの好事例をご紹介します。
アパレル業界ではリアル店舗で商品一つ一つを最適な価格に入れ替えるオペレーションをするのって大変だと思うんです。だから基本的には季節ごとに1回セールを実施して在庫を売り切るとか、シーズン終盤には80%オフで売るみたいな、けっこう信じられないオフ率で在庫をなくそうとすることもあると聞いたことがあって、そこに課題があると思っています。
この部分で統合データを活用する上で、ダイナミックプライシングというロジックを作っても、オペレーションが大変だと実現できないんですよね。
この状況をBATNAというスタートアップ企業は、toC(お客さん)を巻き込んだ交渉によってクオーターに1回セールを行なうということではなく、常にダイナミックプライシングの仕組みで販売可能なスキームを作り、課題解決に貢献しています。

例えば、このTシャツは定価100ドルだと売り切れないから、20%オフまでであれば販売可能というロジックを店舗側で持っているとします。消費者はそのTシャツを見つけて、90ドルだったら買ってもいいなと思った時に、90ドルで購入できるかをアプリケーション上で交渉できるんです。さらに、この商品だけで20%オフは無理だけど、他の商品との組み合わせで20%オフだったらいいよと、ユーザーのリストや買い物カゴにすでに入っている商品をレコメンドしてプラスアルファの提案につなげる機能もあるそうです。

上:それはすごくありがたいですね。

石:はい。toC側に交渉させるっていう工夫を1個生むことで、消費者にとっては自分が交渉した価格で購入できるという購買体験がwinですし、値引きを抑えて売り切ることができる企業にとってもwinですし、無駄な在庫を出さないという意味でパートナーとしてもwinなので、まさしく三方良しという構造なんです。だから、統合データって面白いですし、やはり海外は活用するための視点が日本よりも進んでいる印象です。

上:日本でもリテールテックのスタートアップに期待したいですね。ちなみに、今回IVSでは小売領域の出展やセッションはけっこうありましたか?

石:正直、少なかったですね。だからこそ、私が登壇したセッションには本当に関心のある方々が集まってくださったので、結果的には良かったと思っています。

上:そうですね、リテールテック領域で面白いサービス展開を拝見しても、なかなか消費者の買い物体験っていうところまで実感するのには距離がある感じがします。石井さんがこういうイベントで話をしてくれることで関心を持つ人が増えると嬉しいですよね。

石:アーリーアダプタの人たちが体験した後で、一般的にキャズムの壁を超えて社会浸透するのは時間かかりますよね。どうして?っていつも思ったりしますけど。
それをブーストさせる機能を東芝テックは持っていると思っています。
キャズムを一気に超えるトリガーのような存在になれるんじゃないかと。

上:なんだか良い感じで締めていただいちゃいましたね(笑)。
今日お話しいただいたのはIVS登壇セッションの一部ですが、また引き続きいろんなお話を聞かせてください。今回は海外トレンド中心でしたので、日本のリテールメディアトレンドなども聞きたいです。

石:了解しました!国内トレンドも含めて、またそのうちお話しできればと思います。

上:ではまた遊びに来てください。今日はありがとうございました。

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