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VC・CVCの探し方、関係のつくり方のコツとは?-vol.3

前回に引き続き、Gazelle Capital株式会社の石橋代表と、東芝テックCVC推進室長の鳥井の対談インタビューをお届け。最終回のテーマは、「VC・CVCとのコンタクトの取り方や関係構築」。資金調達を考えているスタートアップ企業の経営者が押さえておくと良いポイントについて聞いてみました。

資金調達もコミュニケーション。戦略性と計画性を持って継続的に取り組むべき

ーー読者の中にはスタートアップ経営を始めたばかりで、これから資金調達を考えている経営者の方もいると思います。そもそもVCやCVCはどのように見つけるのが良いのでしょうか?

石橋氏:VCは自社のホームページを中心にそれぞれ情報を発信していますが、VCごとの比較や網羅性が高いリストは世の中に出回っていないと思うので、満遍なくコンタクトを取るのは難しいと感じています。まずはSNSで気になるベンチャーキャピタリストにコンタクトを取ってみたり、定期的に接点を積み重ねて自社の領域や事業ステージにふさわしい投資家を紹介してもらえるように仲良くなることで、どんどん自社にとって適切なリストをつくっていくことができるのではないかと思います。

ーーなるほど、コンタクトを取る適切なタイミングや準備しておくべきことはありますか?

石橋氏:当社の場合は、まだプロダクトが何もない状況であっても、すでにプロダクトをつくって売上を出し始めているステージ状況であっても、気軽にお声がけいただいて大丈夫です。どんなことをされているのかが分かるピッチ・プレゼンテーション資料をご用意いただければ、コミュニケーションや会話は出来ると思います。そのようなスタンスのVCといろんなルートを使ってコンタクトを取ってみることをおすすめします。その後、徐々に成長して事業規模が拡大していくと、東芝テックさんなどの事業会社のCVCも含めてご紹介していくような流れになるのかなと。

ーー鳥井さんはどうですか?ご紹介以外のルートでもスタートアップとコンタクトを取ることはありますか?

鳥井:はい、こちらからお声がけするケースもありますよ。タイミングや準備については私も石橋さんの考え方と同じで、初期段階は事業概要やビジョン、チームなどが分かるピッチ・プレゼンテーション資料を準備していただければ大丈夫です。やはり投資に至るまでには順序があるので、定期的にコミュニケーションを取り続けることが大切です。それから、「適切なリストをつくる」というポイントにも同感です。Gazelle Capitalさんのようにプレシード/シード期が得意なVCもいれば、ミドルステージやレイターステージが得意なVCもいます。役割はもちろん、出資条件なども異なってくるので、いま自分たちが声をかけるべきところをしっかり整理し優先順位を決めてコンタクトを取る必要があります。

石橋氏:分かります。私たちも投資先のスタートアップを支援する中で、次のラウンドに向けてコンタクトを取るべき企業をリストアップし、優先順位を付けるお手伝いをすることがあります。領域によっては早めに声をかけるべき事業会社がいるケースもありますし、繰り返しピッチを行なうことでフィードバックが得られてピッチ内容が洗練されてくるので、そこも踏まえて戦略性を持ってコンタクトを取ることが重要です。

鳥井:確かに、最初のピッチでフィードバックをさせてもらった企業が、次のラウンドのピッチでプランが劇的に改善されていたりすると、私たちの評価もぐっと上がるんですよね。やはり資金調達はコミュニケーションが重要なので、一度のピッチで決めようと思わずにしっかりと戦略を立てて計画的に取り組んだほうが成功する確率は上がると思いますね。

石橋氏:それも初めに話していたエグゼキューション能力ですよね。資金調達って第三者割当増資である限り、株という無形商材を買ってもらう行為に他なりません。しかも未上場株は株を保有する株主と株式を買いたい側で価格を交渉する相対取引になります。そこで数千万や数億円の価値を付けて買ってもらうことって、実はめちゃくちゃ難易度が高いセールスだと思うんです。しかし、資金調達を高難易度のセールスと捉えている人はまだまだ少ないと感じています。セールスとして考えると、「もっとナーチャリングしたほうが良いよね」「もっとルート営業をかけたほうが良いよね」っていう発想も自然に生まれると思うんです。いきなりドアをノックしてきて「5,000万円の商品を買いませんか?」と言われて買う人はいませんからね(笑)。

鳥井:本当にそう思います。何回もお会いしてコミュニケーションを重ねるうちに信頼関係が生まれていき、最終的に資金調達に至るんです。そのようなプロセスを意識すると良いのではないかと思います。

起業家を増やし、日本の既存産業をもう一度強くしたい

ーーGazelle CapitalはYouTubeチャンネル「スタートアップ投資TV」を運営し、スタートアップ起業家向けにさまざまな情報を発信しています。鳥井さんも事業会社のCVC担当として3回にわたって登場していますが、どうしてYouTubeチャンネルでコンテンツを配信しているのでしょうか?

石橋氏:当社はプレシード・シード期かつSaaS・DX領域に特化したVCで、既存産業の変革にチャレンジするスタートアップを中心に支援しています。社名の「ガゼル」とは雇用創出力が強く成長が著しい企業のことを指す言葉です(※「ユニコーン企業」に育つ直前のスタートアップを「ガゼル企業」と呼ぶ)。私たちは日本の1次産業や2次産業、あるいはこの国の産業をつくってきたセクターをデジタルの力でもう一度強くしていきたい、雇用創出力と成長力が高いガゼル企業を生み出したいという想いで活動しています。しかし、近年はお金の供給量がどんどん増えているのにもかかわらず、需要サイドの企業の純増数はそこまで増えていないどころか一部では低減している状況です。

つまり、お金が潤沢になってきているだけでなく法整備や税制の面でもスタートアップがチャレンジしやすい環境整備はどんどん進んでいるのに、肝心の企業が増えていないという課題があるんです。

それを解決するためには、起業やスタートアップ経営に少しでも興味関心を持ってくださる方を増やす必要があります。その裾野を広げるために始めた施策の一つが「スタートアップ投資TV」になります。

ーーコンテンツの特徴や工夫しているポイントはありますか?

石橋氏:VCやファンド、スタートアップ経営に関する情報だけでなく、短尺動画のような若年層向けのライトなコンテンツも配信しています。これも裾野を広げるという目的のもと、これまでリーチできなかった層にスタートアップのことを知ってもらうために、いろんな方々にご協力いただきながらやっています。鳥井さんも短尺動画にご登場いただきましたよね。

鳥井:反響の大きさに驚きました。いろんなところから「動画を見ました」というメッセージをいただきましたし、実際に投資検討に関する案件も生まれています。こういう尖ったコンテンツは自社ではなかなかつくれないので、社内からの評判も良かったです。

石橋氏:うれしいです。私たちもスタートアップ投資TVを始めてから全く接点がなかった地域の起業家の方からお問い合わせをいただいたり、大学のイベントに登壇したときも学生から「TikTokで見たことがありました」と言われたりと、少しずつ裾野が広がっている実感があります。

鳥井:投資や株式って堅くて小難しい話が多いじゃないですか。それをあそこまでカジュアルに振り切って発信してくれるので、詳しくない人でも視聴しやすく、なんとなくこんなことやっているのかなって認知できるんですよね。本当にすごいと思います。

石橋氏:ありがとうございます!

ーースタートアップ投資TVでは、東芝テックCVC立ち上げの経緯やカバー領域、スタートアップとの信頼関係の構築方法、陥りやすい罠などを詳しく話しているので、興味のある方は下記リンクよりチェックしてみてください。本日はありがとうございました!

【YouTubeチャンネル「スタートアップ投資TV」で東芝テックが取り上げられました!】

創業初期のスタートアップ起業家向けに有益な情報を発信するGazelle Capitalの公式YouTubeチャンネル「スタートアップ投資TV」に鳥井が全3回にわたって登場しています。この機会にぜひご覧ください!

■リテール領域のアセットを活用した相互成長が可能なCVCとは?

■新規事業立ち上げのプロが直面した大手のジレンマと解消手段

■選ばれるための施策と陥りやすい罠を解説!


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