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短編小説

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普段noteでは日記ばかり書き散らかしていますが、時折人様の企画に乗っかって短編小説を書くようになりました。創作って、恥ずかしくて楽しい。
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#橘鶫さんありがとう

【小説】栃栗毛のペガサス

【小説】栃栗毛のペガサス

事の発端は、狸とアマビエの喧嘩だった。
狸は最近アマビエがやっている動画サイトに度々出演し、人気ボーカロイドやアニメのキャラクターに化けてさまざまな歌を歌っていた。
その声の野太さと音痴な歌声に「見た目とのギャップがウケる」と固定のファンがついたが、次第に飽きられてしまうであろうことをアマビエは見越しているらしい。

「おめえもそろそろさ、なんか新しいことやろうよ。このまんまじゃ飽きられちまうから

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たぐり寄せる物語

たぐり寄せる物語

短編小説を書きはじめたのはごく最近、今年の初夏の「ピリカ☆グランプリ」への応募からだった。
リーダーのピリカさんはもちろん、shinoさん、カニさん、戌亥さん、ねじりさんと私が普段楽しく読んでいる方々が主催だったので、思い切って創作の世界に踏み出してみたのだ。
思えばさわきゆりさんの文章に出会って「こんなに短い文章でこんなに濃いものを伝えられるのか!」とびっくりしたのも、このグランプリがきっかけだ

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所沢のグリフィン

所沢のグリフィン

金曜の晩、僕と部長は酔っ払って静まり返ったオフィス街を歩いていた。とうに居酒屋は閉まり、タクシーも走っていない時間。
先ほどまでの部長主催の納涼会は、とにかくひどかった。
会費を7000円も取られた上に、出てくる料理は全部ゲテモノ。部長チョイスの料理の数々に、後輩たちはテーブルとトイレを行き来していた。

部長は無類のゲテモノ好きだ。
長期休みに入るたびに海外へ行き、アリの卵やサソリ、ワニなどを食

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