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「黒字」なのになぜ、多くの中小企業が倒産するのか

世の中には黒字倒産する中小企業が多く存在します。
倒産する理由は、ざっくり言ってしまえば放漫経営をしているから。
放漫経営をしないためには、どんぶり勘定を身に着ける必要があります。

今回は、そのどんぶり勘定の重要性について解説します。


1、起業家は“どんぶり勘定”を身につけよ!

長年、経営をしてきた私にとって「お金をどう扱うか?」に対する回答は・・・、

「数字に強い起業家になるには、自分の経験による暗黙知を勘として磨け!」
「起業家たる者、計数管理は‟どんぶり勘定”でよい。間違っても経理担当者の真似事はするな!」

この二つの答えが、起業家、そして経営者にとって大事な金銭感覚と言ってよいでしょう。


もともと‟どんぶり勘定”にある‟勘定”という文字は「勘の定めるところ」と解釈できます。

このような解釈から‟どんぶり勘定”を私なりに意訳しますと、「勘を働かせて重要な数字を瞬時につかむ」ということになります。ということは、‟どんぶり勘定”はとても優れた経営能力と言えます。


‟勘”というものは数多くの経験から得た教訓によって精度の高い判断が即座にできることを指しています。

その経験の中身とは、自ら体験した成功、失敗、そこに存在していた課題と要因、その結果導き出される傾向と確率などであり、それらが自分の‟暗黙知”となってデーターベース化されランダムにストックされているわけです。

そのデーターベースから同ケース、もしくは類似ケースを検索することを‟勘を働かす”と言うのでしょう。


決して、その場でひらめいたわけでもなければ、感覚的、思い付きから引き出された回答とは違うのです。

これらの道理から、起業家が地に足の着いた経営者になるためには「計数管理はどんぶり勘定で急所をつかむことができる」といった実力をつけることが肝要と言いたいのです。


私の場合、20代から経営を始め、おおよそ10年ぐらい経過したあたりから、経理担当者に帳簿上の数字を聞かなくとも概略数字は要所、要所つかめるようになりました。


2、中小企業の経営者が陥る放漫経営の実態

世の中には黒字倒産ということがあります。実は多いように思います。

赤字は当然、倒産予備軍になり得るのですが、まず知っておいて欲しいのが、倒産の本質的な原因は“放漫経営”ということです。

放漫とは
やりっ放しでいい加減なこと。気ままにおこなって、しまりのないこと。

つまり、黒字であっても放漫経営ならば倒産するのです。


そして、その放漫経営の核心にあるものがお金の管理がズサンということ。

数字を正確につかめていないズサンさもあれば、

数字はつかめているが過去数字だけで未来数字はつかめていない


といったズサンさもあります。

私が多くの経営現場で指導をさせてもらっているとき、思い知らされる実態は、

「お金は妻に任せている」
「お金は経理担当者に任せている」
「お金は税理士に任せている」

といった現実です。中小企業の経営者の実態と言ってもよいでしょう。


中には逆のケースもあります。経営者自らがお金の管理をすべてやっているケースです。

「社長は常に売上・仕入管理の処理に追われている」
「社長は常に一円単位で入出金を細かく見ている」
「社長は常に売掛金回収に神経を注いでいる」

任せているケース、逆に自分がやっているケース、どちらも間違っているとは言い切れません。


問題は・・・、任せていることで、

経営実態を把握できていない。


自分で経理を担い数字ばかりに気が取られてしまい、他の重要な部分を見落としているこの2つの過剰な行為がのちのち放漫経営に繋がり、最悪、倒産といった悲劇を生むことになるのです。


例えば、経営者が経理を担当者に任せっきりとなれば、帳簿の数字と実際の現金の流れを経営者自らが実感として持てていないことになります。

一方、経営者自らが毎日のように数字を確認していじくりまわしているとなると、稼ぐことへの意識が低下し、コストダウンを中心に数字合わせをするような本末転倒の考え方に偏ることもありそうです。

とてもちぐはぐで危ないことです。


私の事例ですが・・・、私は簿記一級を持っています。ほぼ自力で学び資格取得しました。ですので、経理には明るい方と自負しています。

若くして経営者になった私の武器は簿記の資格を持ち、経理に長けている点、と思っていました。

ところが、実際経営者になり企業の舵取りをしてみますと、経理に長けていることはマイナスではないのですが、一歩間違うと経理偏重の本末転倒の経営に舞い込むことに気づきました。


いつも帳簿を見ては一喜一憂している状態でした。

ついには社内にとじこもったままの穴熊経営者”となっていました。

これでは経営全体を掌握することはとても無理です。


このような危険性を回避するためには、詳細かつ正確な過去と現在の数字は経理担当者に任せるが、肝心な現在進行形から未来数字は経営者が常に先んじてつかんでいる必要があります。

但し、この部分は的確などんぶり勘定でつかむだけで十分。

経営者の本分は数字の把握ではなく、経営実態の把握にあるのです。


そこに最大の神経と労力を注ぐべきと思っています。


そのためにも、計数管理能力は早い段階から、どんぶり勘定を身につけるようにすることが大切です。

とくに、現在進行形と未来数字はどうしても経営者の才覚の一つ、‟どんぶり勘定”に頼ることになるので。


3、どんぶり勘定で押さえるべき数字

では、具体的にどう‟どんぶり勘定“を磨けばよいのか?

数字をつかむコツを簡単にお教えしたいと思います。私が実践してきたことです。(ベテラン経営者には当たり前のこととなりますが・・・)


まず、「どんぶり」とは把握すべきお金の流れ”のことです。

そして、「勘定」とは押えておくべきお金の位置”を意味します。


●把握すべきお金の流れ / 3つのポイント

①現在の持ち金は?・・・・・・・・・・・(キャッシュレベル:現金主義)
②確実に入る、出るお金は?・・・・・・・(請求レベル:発生主義)
③予定として入る、出るだろうお金は?・・(仕掛かりレベル:受注主義)

●押えておくべきお金の位置 / 9つのポイント

①売上は? ②原価は?(変動費)③粗利は? ④管理費?(固定費)
⑤人件費は? ⑥利益は? ⑦借金は? ⑧未入金は? ⑨税金は?

ここに示した計12のポイントが常に頭に入れてあり、変動するたびに頭の中で数字の入れ替えができるようになると経営者としてほぼ一人前と言えるでしょう。


特に「把握すべきお金の流れ」は血流と同じであり、もし詰まったり出血すれば

命取りとなる生命線です。


この流れは少なくとも日々感じとっていて、週一回は経理に正確な数字を聞き取っておくことがよいでしょう。

私はこの習慣を少なくとも20年間続けていました。



次に、「押えておくべきお金の位置」ですが9つあり、それぞれにお金のあるべき姿というものがあります。

適正な売上、原価率、そして、必要粗利、必要管理費、さらに、労働分配率を示す人件費の限界、未収金の回収率、納税の目標値などそれぞれの数字には意味や価値があります。

この意味や価値を私は‟お金の位置”と呼んでいます。経営者の最終的な実績評価は決算書です。この9つの数字は全て決算書に直結しています。


健全経営、そして、企業評価を高めていく上でとても重要な数字です。

つまりは、経営者の本分とは、適時、要所に数字を掴み経営の実態を把握する。その上で、未来を展望することにある。

経営実態は"俯瞰力"と、未来展望は"構想力"が必要なのです。

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