津麦ツグム

ネットの隅っこで文字を書き散らしている社会人です。 物語と音楽と匂いと煙草と珈琲とアル…

津麦ツグム

ネットの隅っこで文字を書き散らしている社会人です。 物語と音楽と匂いと煙草と珈琲とアルコールが好きです。日記タグのついていないものは全てフィクションであり創作小説となっております。ご了承ください。

マガジン

  • 秘すれば花、あるいは水槽の中の脳

    なんでもない日常で考えたことやらあったことやらを書いてます。役にはたちません。

  • すごく ふつう すこし ふしぎ

    少し不思議で、凄く普通な日常短編です。

最近の記事

1月3日 唐突な不安と懺悔の話

こんばんは、お久しぶりです。津麦ツグムです。 新年明けましたね。能登半島の大地震とJALの飛行機事故、なかなかに波乱万丈な年明けです。 とりあえずは明けましておめでとうございます。 随分久しぶりに投稿します。 長いこと、自分勝手に文章を書き散らすことから遠ざかっていたので上手に書けるかは少しばかり不安ではあるのですが、まあ、思うように書くことにします。 今までもそうでしたし、きっとこれからもそんな感じで生きていく他ないのでしょうし。 さて、まずは近況報告です。 昨年の8

    • 7月23日 ノートを買った日

      お久しぶりです、津麦ツグムです。 長く長く、本当に長い間おやすみしてたのですが久しぶりに筆を取りました。 創作が嫌いになったわけでもなんでもないのですが、あえて言うならば、リアルが充実しすぎた結果、と言った感じです。 「リア充」と言う言葉はいい加減死後になりつつあるので気をつけないといけませんね。 私事で恐縮なのですが、来月入籍いたします。 と言っても同棲生活はぼちぼち1年、ちょこちょこ書きながら生活だって出来たわけなのですがなんだか現実を味わうのに精一杯で、なかなか

      • 花煙草

        男がひとり、歩いていた。 夜に沈んだ静かな住宅街だ。 橙色の月が浮かぶ空とは反対の方向に向かって歩いている。 白いような青いような、どうにも目が痛くなる光が夜の色を薄めている方だ。 細長い男だった。 しゃんと伸びた背中と、骨ばった骨格。 寸足らずのズボンの裾から覗く細い足首には張りがあり、どうやら若いらしいと分かる。 「兄さん、こんな時間に夜遊びかい」 橙の月を背負った男がふと一定だった歩みを乱す。 どうやら驚かせてしまったか、とも思ったがそれは杞憂だったようで男はまた一定の

        • 二次会デミグラスソース#毎週ショートショートnote【408字】

          ここはどこだ。 会社の飲み会に誘われて居酒屋に行った。 志賀が田崎さんとばかり話してて、手持ち無沙汰で酒を飲んだ。 トイレの前で志賀が田崎さんの手を無遠慮に触っていた。 目の前が赤くなる程に腹が立って。 その後は思い出せない。 「お水飲めますか?」 視界に白い指が映り込む。 指輪に反射した光が目を焼く。指輪? 二次会は、と俺は絞り出して顔をあげる。 彼女は曖昧な笑みを浮かべた。 どこにいるのか分かった。 よく来る24時間営業のファミレス。 ここのデミグラスソースが好きだ。 窓

        1月3日 唐突な不安と懺悔の話

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        • 秘すれば花、あるいは水槽の中の脳
          28本
        • すごく ふつう すこし ふしぎ
          4本

        記事

          1月8日 お正月の話

          皆様こんにちは、こんばんは。 津麦ツグムです。 あけましておめでとうございます。 年が明けて早くも1週間です。皆様いかがお過ごしでしょうか。 1年のはじめといえば、やはり抱負やら目標やらを決めたりすることが多いタイミングですね。 なんとなく区切りが良いというのも多いにありますし、気持ちもあらたに・・・みたいな感じの気分になるのも頷けます。 ということで、新年の抱負やら今年やってみたいことを考えてみようかと。 いまパッと思いつくのはこのあたりでしょうか。 早寝早起き 整理

          1月8日 お正月の話

          11月27日 最近の生活の話

          みなさまこんにちは。こんばんは。 お久しぶりです。津麦ツグムです。 もうずいぶんの何も書いておらず、ずいぶんと久しぶりの投稿です。 理由はまあ、諸々ありますが一番大きいのはお引越しをしたことでしょうか。 今まで、基本的に転居というと中部地方から九州だとか、九州から関東だとか、そういう大きな移動が多かったのですが今回はまさかの前の家から徒歩15分という超近距離の引越しでした。 だからといってめちゃくちゃ楽というわけでもなく。 何度やっても引越しは大変で、それなりに楽しくて。 し

          11月27日 最近の生活の話

          深夜チョコレート(1)

          窓の外では大粒の雨粒が真っ暗な天から絶えず落ちているのだろう。 ざあざあと雨粒がコンクリートやら、トタン屋根やら、硝子やらにぶつかり砕ける音が聞こえている。粉々に砕ける雨粒。ひしゃげた透明な球体が砕けてさらに小さな雫になるのを私はまぶたの下で視る。 ただの妄想だ。 つまらない、何の意味もない空想。 だからなんだと言われてしまっても、何も言えないような、路傍の石ころにさえ劣る、そういう類のものだ。わかっている。 それでも真夜中の空の色を映した雨粒が街灯やネオンに照らされながら柔

          深夜チョコレート(1)

          再訪

          社会人になってから6年住んでいた福岡に、2年ぶりに訪れた。 東京から遠く、出張もなく、しばらく行くつもりもない場所だった。 ひょんなことで誘われて気が付いたら飛行機のチケットを取っていた。要は勢いだ。無計画上等。 私に限ったことではないが、社会人のはじめの方というのは中々に精神的にも身体的にもハードなものだった。 それなりに悩んだり苦しんだりした気がする。 ある程度するとそれなりにどうにかできるような気になれたり、苦手な先輩がどこぞへと行ったり、ただ単に慣れただけだったりを行

          朝食会議

          こんがりとキツネ色に染まったトースト。 ハムを敷いた目玉焼きに添えられた瑞々しいトマトと胡瓜。 目玉焼きの黄身は出来たら固焼きの方がいい。弟は半熟が好みらしいが、私は断然固焼き派だ。 淹れたてのホットコーヒーがかぐわしい香りの湯気を上げている。 イチゴジャム、バター、蜂蜜。その日の気分や好みで選べるトーストのお供たちは準備万端といった顔。 素敵な朝食だ。 ホテルか、よくできた恋人か、新婚のご家庭かもしれない。 実情どれでもないのだが、見た感じは幸せで穏やかな朝のひと時といった

          三題噺 心臓・星・時間

          波の音が鼓膜を揺らす。 視界の隅で、ちかりちかりと光るのは入り江に立っている灯台の光だろうか。 灯台の光と、雲の切れ間から時々気まぐれに顔を出す三日月。 星は見えない。 目を凝らすと真っ暗な海が見える。 いや、見えない。暗すぎるのだ。 視界はどこまでも不明瞭で、どれだけ目を凝らしたところで海なんて見えない。何もないから、波の音が聞こえるから、潮の臭いがするから、海だと思い込んでいて、見えていると錯覚しているだけだ。 もしも闇が質量を持ったとしたら、それは夜の海によく似ている

          三題噺 心臓・星・時間

          不知火

          「馬鹿に、馬鹿にしないでよ」 彼女を怒らせた、とわかったのは彼女の瞳の奥に静かに揺れる焔に気付いてしまったからだ。 要するに、時既に遅し。 ゆらり、ゆらり。 震えるように揺れる小さく強い灯火。 水底で燃える焔。 「私、は、守られないといけないような、そんな、女の子じゃない。  何も知らないような、何もできないような。  自分でどうにか、できる。自分で、どうにかする」 余計なことをしないで。要らない。 震える声で、つっかえつっかえの不細工な話し方で、そこまで言うと彼女は吸いかけ

          三題噺 鍵 財布 紅茶

          肩から首にかけて酷く冷える。 ぶるりと一度身震いをして、目蓋に差し込む陽の光に顔をしかめた。 寝直そうと寝返りを打つ。 寝惚けた頭の端にぶら下がる違和感に気づいた。 知っている洗剤と香水の匂いに紛れる嗅ぎ慣れない匂い。 それに、妙に鮮明なシーツの感触。 いつも以上に心許のない胸周り。 指先で引っ掻けた現実から眼を背けようと、布団に潜りこむ。 嗅ぎ慣れない匂いの輪郭が濃くなって私は観念したように眼を開いた。 やっぱり。 小さな溜め息が溢れた。 やってしまった。本当に、ダメな大人

          三題噺 鍵 財布 紅茶

          11月30日 新しいキーボードの話と映画を観に行った話

          みなさまこんばんは。 津麦ツグムです。 残すところで11月も今日が最後になりました。 明日になったら師走ですね。大忙し。ひい。 今年も今年とて、色々とあったような、自分にとっては大した影響もなかったような、なんというか押し流されていく風景に圧倒されて立ち尽くしているうちに、自動運転の動く歩道で知らないうちに15メートルほど移動していたような、そんな気分になっています。 得てしてか、必要性があってか、どうにかこうにか、ひいこら言いながら変わってきたような気もすれば、その実自分自

          11月30日 新しいキーボードの話と映画を観に行った話

          休日、装いについてのあれやこれ

          夕暮れが終わり、早くも薄暗闇に沈み始めた交差点を眺めながらハイボールを飲む。様々な格好をした人が通りすぎて、交わって、そして去っていく。 場所柄なのか、若い子が多い。 古着を着ている人も多い。 すっかりここも馴染みの店になった。 初めて入った時の、胸の少し下あたりがひっくり返るような、そんな緊張感はもうずいぶんと前に忘れてしまった。 あの少し怖いような、それでいて少し浮ついた気持ちも手放すには惜しい気がする。 それでも、この居心地の良さも手放し難い。 馴染みの店、というのに

          休日、装いについてのあれやこれ

          キーボードの上の蜘蛛

          眠れない夜、私にはいくつか選択肢が生まれる。 アニメをみる。 音楽を聴く。 本か漫画を読む。 刺繍をする。 そして、文字を打つ。 文字を打つ、が一番危険だ。 一番楽しいけれど、一番選ばないほうがいいとわかっている。 いつのまにか月が薄まり、夜が明けてしまう。 時間を忘れられる趣味があるというのはいいものだ、なんてのんきなことは言えない。次の日の予定をすべて売り払ってしまえ、くらいの気持ちがなければいけない。覚悟、というにはあんまりにもしょうもないけれど、まあ、それに近いも

          キーボードの上の蜘蛛

          黒犬

          ほんの少し前から、私の生活に犬が入り込むようになった。 文庫本に挟みこまれる栞みたいに不定期に。 気まぐれに。 黒く大きな犬だ。 しなやかな骨格と健と筋肉。 造形として、美しいと思う。 生き物の形として、綺麗なのだと思う。 大人しく、たぶん賢く、そして穏やかな犬だ。 大きな身体の割りに静かに動く。 尻尾はよく揺れる。 笑っているような顔で、私を真正面から見つめる。 見つめるのは、ちょっと、やめてほしい。 言ったところで言うことを聞かなさそうなので言ったことはない。 私は気ま