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20240725 イラストエッセイ「私家版パンセ」0035 「大文明と帝国そして日本文化」

 人類史上、偉大な文明と呼ばれるものがあります。
 古代バビロニア帝国、ペルシア帝国、古代中国やローマ帝国、オスマントルコ帝国、フランスや大英帝国、そして今日のアメリカの文明。
 面白いのは、これら大文明がほぼ例外なく帝国であったということ。

 帝国とは、皇帝が支配する権威主義国家というイメージがありますが、むしろ多くの民族、言語集団を支配する強力な政治体制と定義した方が良いと思います。少し前で言えば大英帝国。現代で言えば、中国、ロシアが帝国と呼べると思います。
 民主主義社会に住むわれわれから見ると、帝国というのは悪いイメージがありますけれど、人類の歴史の中でほとんどの人は帝国に暮らし、帝国が文明を築いてきたのは事実なんですね。
 多民族多言語の帝国には、共通語があり、法が整備され、富が蓄積して、偉大な事業をする力があります。多様性があり、文化摩擦もありますが、ユニバーサル(普遍的)な価値を生み出します。

 われわれ日本人から見ると、帝国の文明は大味にうつります。明快で分かりやすいけれど、詫びや寂びといった風情に乏しい。日本が中国を支配していた時代、日本人は中国人を「大陸的」と言って馬鹿にしたそうです。大陸的というのは、大味でのんびりしている、という意味でした。
 大文明、大帝国は多民族多言語の多様性のある社会です。その都は国際都市と呼ぶに相応しく異邦人に満ちていました。その結果、民族を越えて理解可能な文明が発達したのです。文明の本質は、異質のもの同士でも理解できるということ。つまり分かりやすさにあると思います。その結果、大味なものになったのです。
 一方、日本は閉ざされた島国だったので、誰にでも理解可能であるという方向ではなく、物事を洗練するという方向に文化が発展しました。「洗練」こそわが日本のお家芸と言っても良いと思います。
 ディズニーの映画とジブリのアニメの違いに良くあらわれていると思います。

 ちなみに作家の司馬遼太郎さんは、文明は「たれもが参加できる普遍的なもの・合理的なもの・機能的なもの」で文化は「むしろ不合理なものであり、特定の集団(たとえば民族)においてのみ通用する特殊なもの」だと定義しました。つまり、帝国が文明を生み出し、民族が文化を生み出したと言ってもよさそうです。
 日本も帝国の経営を目指しましたが、失敗しました。
 それは日本には文化があっても文明がなかったからだと思います。

 さて現在、わたしたち西側諸国の人間は自由主義社会に所属していて帝国に所属していないと思っています。
 でもぼくはそうは思いません。ぼくたちは歴としたアメリカ帝国の一員です。アメリカは政治体制としては帝国ではありませんが、その影響力を考えると、日本やヨーロッパ諸国をも内包する巨大な帝国と考えることもできると思っています。笑

ダースベーダー イラスト





私家版パンセとは

 ぼくは5年間のサラリーマン生活をした後、キリスト教主義の学校で30年間、英語を教えました。 たくさんの人と出会い、貴重な学びと経験を得ることができました。もちろん、本からも学び続け、考え続けて来ました。 そんな生活の中で、いくつかの言葉が残りました。そんな小さな思考の断片をご紹介したいと思います。 これらの言葉がほんの少しでも誰かの力になれたら幸いです。

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