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【カフェ営業記】砂糖・ミルクを入れることについて、コーヒー屋店主が思っていること

僕は今、京都でLaughterというコーヒーショップを運営しています。


・謝らなくて良いですよ…

「砂糖とミルク入れさせてもらいますね。ごめんなさい…」
お店に立っていると、こんなことを言われることがよくあります。

いえいえ、謝らなくても大丈夫ですよ。一人一人味覚は違いますし、苦さや甘みの感じ方は違うもの。なにより、美味しく飲んでもらうのが一番ですので、砂糖やミルクの提供で何か制限していることはありません。

・世のコーヒー屋の本音は…

砂糖・ミルクを入れることは悪いことじゃないんです。
ただ、世のコーヒ屋さんとしては
「最初の一口は何もいれずに飲んでみて…!」というのが偽らざる本音ではないでしょうか。

その思いの背景はコーヒーの歴史をひも解く必要があります。

・砂糖、ミルクを入れるしかなかった

そもそも、砂糖、ミルクを入れるのはコーヒーが持つ「苦味」を緩和させるためです。
しかし、コーヒーの種自体にはほとんど苦み成分はありません。

火で焙煎する過程で生まれる「焦げ」が苦味の正体です。
その昔、生産者も消費者もコーヒー豆の品質に関してそこまで意識が高いわけではありませんでした。

大量の豆を効率よく生産し、消費するために。
ざっくり言えば、出来るだけ深煎りで仕上げて、豆ごとのばらつきや品質の差を分からないように仕上げていました。

「コーヒー=苦いもの」とされ、砂糖・ミルクを入れて味を調整することが当たり前とされていました。

・「ブラックコーヒー」が完成品になった

しかし、ここ10年ほどでコーヒーの生産技術は一気に向上。
豆の品質もグッと上がり、コーヒーの種が持つポテンシャルを活かした味わいが楽しめるようになりました。

「良いコーヒーは良い酸を持つ」
酸化によるえぐみのある酸味ではなく、焙煎を抑え豆本来が持つみずみずしく果実味のある「酸」を楽しむ浅煎りコーヒーの文化が一気に広まりました。

深煎りも、「味のばらつきをごまかすための深煎り」ではなく、チョコレートやナッツのような、香ばしさ・甘さのある芳醇な味わいと言えます。

砂糖・ミルクを入れるしかなかった時代から、砂糖・ミルクを入れずにそのままの味を楽しんでもらいたいコーヒーに進化を遂げつつあるといえるでしょう。

もちろん、美味しいコーヒーは砂糖・ミルクを入れても美味しいものです。
ただ、砂糖・ミルクを加えることで味わいに変化が起きてしまうこともまた事実。

ブラックコーヒーの状態こそ、そのコーヒーの味わいが最もわかる「完成品」の状態とも言えます。

だからこそ…
「最初の一口、もし良ければブラックで飲んでみて…!」との想いなのです。

・味覚は十人十色

でも、本当に味覚は十人十色です。
僕自身は、初めて飲んだ時から自然とコーヒーを飲めたんですが、母親(コーヒー苦手)に、うちのお店の一番浅煎りでフルーティーなコーヒーを飲んでもらったときに、「これは苦い…!」と砂糖・ミルクを入れている姿を見て、本当に味覚は十人十色なんだと実感しました。

だからこそ、砂糖・ミルクもあまり気にせず、自分が一番飲みやすいスタイルで楽しんでもらえたらなぁと。

コーヒー屋からしても、お客さんに美味しく飲んで「良い時間を過ごした」と思って帰ってもらうことが一番の喜びです。

「絶対に砂糖・ミルクを入れてほしくない!」というのはコーヒー屋のわがままだと僕は思っています。

嗜好品なので、「一般的にはこう」とか「このお店はこう」とか縛られること無く、一人でも多くの方が自然とコーヒーを楽しんでもらえるような世界を一コーヒー屋として作っていければと思います。

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