「うた」に無くて「Song」にあるもの…洋楽和訳で知るsongwritingの魅力

【文・翻訳】土屋茂(つちや・しげる)洋楽和訳を通じて文化としてのsongwriting…

「うた」に無くて「Song」にあるもの…洋楽和訳で知るsongwritingの魅力

【文・翻訳】土屋茂(つちや・しげる)洋楽和訳を通じて文化としてのsongwritingを研究。カントリーを中心としたアメリカンルーツミュージックに傾倒し、香川県高松市を拠点にギタリスト/ボーカリストとして活動中。広島市出身、高松市在住。

最近の記事

  • 固定された記事

「うた」に無くて「Song」にあるもの…洋楽和訳で知るsongwritingの魅力

このnoteについて(洋楽対訳の読み方)このnoteでは、筆者お気に入りの洋楽曲について、自分なりの解釈で日本語訳したものを掲載しています。 英文/和文で1行ずつ示していますが、英文については一部、太字&大文字にしている箇所があります。 これは「ライミング」つまり韻を踏んでいる箇所を意味します。 後述しますが、英語詞はその内容に巧みにライミングを盛り込むのが、大きな特徴です。 このnoteを通じて、ライミングの技巧も含めた英語詞の楽しさ・素晴らしさが伝われば嬉しいです。

    • The End of the World 歌詞と対訳

      楽曲についてThe End of the World / written by Arthur Kent, Sylvia Dee アメリカの女性カントリー歌手スキータ・デイヴィス、1963年のヒット曲。作曲はアーサー・ケント、作詞はナット・キング・コールの「トゥー・ヤング」で知られるシルビア・ディー。失恋の悲しみを歌う内容ですが、シルビアは父親の死の悲しみを取り入れて詞を書いたと語っています。 カントリー界に限らず、ポップスやジャズ、ロックのアーティストにも多数カヴァーされ、な

      • Cold, Cold Heart 歌詞と対訳

        楽曲についてCold, Cold Heart / written by Hank Williams カントリー・ミュージックの巨星ハンク・ウィリアムスが1951年に発表し、その年のビルボード誌カントリー・チャートを席巻した彼の代表作のうちの1つ。メロディ自体はT・テキサス・テイラーの1945年の曲 "You'll Still Be in My Heart"をほぼそのまま拝借した上で独自の歌詞をつけています。ジョニー・キャッシュの曲もそうですが1950年代前半くらいまではそうい

        • You’ll Never Leave Harlan Alive 歌詞と対訳

          楽曲についてYou’ll Never Leave Harlan Alive / written by Darrell Scott ソングライターであり、ブルーグラス系の弦楽器を全てこなすマルチプレイヤー、そしてソロアーティストとして多彩な才能を発揮する現代の巨匠ダレル・スコットの作品。アパラチアの労働歌を彷彿とさせる憂いを帯びたメロディがとても印象的です。 初出は1997年、自身のデビューアルバム「Aloha from Nashville」に収録されたバージョンですが、200

          Rainy Night in Georgia 歌詞と対訳

          楽曲についてRainy Night in Georgia / written by Tony Joe White R&Bシンガーとして、またナット・キング・コールなどに楽曲を提供する作家として’50年代から活躍していたブルック・ベントンですが、’60年代以降はやや落ち目に。そんな中、エルビス・プレスリーの「Polk Salad Annie」を手がけたルイジアナ出身の白人ソングライター、トニー・ジョー・ホワイトのこの曲に注目してカヴァーしたことで、以降の復活の糸口を掴みました。

          Love Has No Pride 歌詞と対訳

          楽曲についてLove Has No Pride / written by Libby Titus and Eric Kaz ニューヨーク出身のシンガーソングライター、エリック・カズが同郷の女性シンガーソングライター、リビー・タイタスと共作した作品。1972年にボニー・レイット、1973年にリンダ・ロンシュタットがそれぞれ優れたカヴァーを録音したことで、ソングライターとしてのエリックの名が世に知れ渡る契機となった曲です。 リビーも自身のアルバムで取り上げている他、トレーシー・ネ

          Share Your Love with Me 歌詞と対訳

          楽曲についてShare Your Love with Me / written by Alfred Braggs and Deadric Malone 愛する人が去っていく悲しみを切々と歌い上げるソウル・バラード。20世紀を代表するソウルシンガー、ボビー"ブルー"ブランドによる1963年版が初出ですが、最も有名なのは1969年のアレサ・フランクリン版。その他、ザ・バンドやケニー・ロジャース、ヴァン・モリソンなど白人アーティストにもカヴァーされています。 作者のアルフレッド・ブ

          I Feel Lucky 歌詞と対訳

          楽曲についてI Feel Lucky / written by Mary Chapin Carpenter, Don Schlitz 日本ではあまり知られていませんが、本国アメリカではグラミー賞を5度も獲得している女性シンガーソングライター、メアリー・チェイピン・カーペンター。キャリアで最も高セールスとなっている1992年のアルバム「Come On Come On」に収録され、シングルとしてもビルボードのカントリーチャートで4位を記録しています。 サウンドよりも歌詞にフォーカ

          Love the One You’re With 歌詞と対訳

          楽曲についてLove the One You’re With / written by Stephen Stills スティーヴン・スティルスが1970年にソロとして最初に発表したシングルで、1stソロアルバム「Stephen Stills」にも収録。もっとも、彼が所属するCSN&Yでは同時期すでにコンサートで披露していたようです。 この曲も無数のカバー・バージョンが存在しますが、重厚なゴスペル調のコーラスが入った(そのせいか「愛への讃歌」というイカニモな邦題がついている)

          Lonesome Dove 歌詞と対訳

          楽曲についてLonesome Dove / written by Carl Jackson, Larry Cordle カントリー界に多くの楽曲提供をしているカール・ジャクソンとラリー・コードのソングライター・コンビによる美しくも切ないカントリー・ワルツ。2人はブルーグラスを出自とし、ブルーグラス系プレイヤーとしても著名です。 80年代後半に制作され人気を博し、日本でも放映された西部劇ドラマの名作「モンタナへの夢」の原題 Lonesome Dove からタイトルを拝借したそう

          Songwriters in the Roundという独特のライブ形態……文化としてのsongwriting考(2)

          前回記事でご紹介した、映画「愛と呼ばれるもの」の舞台となったThe Bluebird Cafe。ナッシュビルの中心地から車で15分ほどの場所で現在も営業する実在のカフェですが、ガース・ブルックスやテイラー・スウィフトといった後の大スターがここで見出されるなど、ソングライターの聖地として長きに渡り認知されています。 今回はこの店を発祥とし、90年代以降で主にナッシュビルのソングライター・シーンに根付いている日本ではお目にかかることのない独特のライブ形態「Songwriters

          Songwriters in the Roundという独特のライブ形態……文化としてのsongwriting考(2)

          映画「愛と呼ばれるもの(The Thing Called Love)」……文化としてのsongwriting考(1)

          当noteのプロフィール記事で、英語圏におけるsongwritingとは単に詞を書くだけではなくライミングなどの技巧も含めて楽しむ文化だ、とお伝えしています。ですが日本においては、そう言われてもピンとこない人がほとんどなのでは? そこで、特にカントリーミュージックにおける独特のsongwritingの世界を垣間見ることができる良い教材(?)をご紹介します。 1993年の米映画「愛と呼ばれるもの(The Thing Called Love)」この作品、夭折の人気俳優リバー・

          映画「愛と呼ばれるもの(The Thing Called Love)」……文化としてのsongwriting考(1)

          Just a Song Before I Go 歌詞と対訳

          楽曲についてJust a Song Before I Go / written by Graham Nash クロスビー・スティルス&ナッシュ1977年リリースのアルバム「CSN」に収録の楽曲。シングルカットもされビルボード7位と彼らのキャリアで最上位のヒット曲になりました。収録時間は2分14秒と彼らのレコーディングの中で最も短い楽曲でもあります。作曲はメンバー唯一の英国人グレアム・ナッシュ。 曲ができるきっかけのエピソードを英語版ウィキペディア等で確認できます。グレアムがハ

          Callin' Baton Rouge 歌詞と対訳

          楽曲についてCallin' Baton Rouge / written by Dennis Linde ナッシュビルの名ソングライター、デニス・リンデによる作品(拙ブログで彼の作品を取り上げるのはザ・チックスの「Goodbye Earl」に次いで2度目)。ブルーグラスの軽快なリズムと、アパラチアン・テイストなフィドルのリフが印象的な楽しい曲で、巧みな言葉選びによるナチュラルなライミングはさすが巨匠!といった感じです。 1978年のオーク・リッジ・ボーイズ版が初出ですが、ブルー

          My Man 歌詞と対訳

          楽曲についてMy Man / written by Bernie Leadon ご存知イーグルス、1974年発表の3rdアルバム「On The Border」に収録されたバラードです。作者はカントリー・ロック色の濃い初期イーグルスのサウンドを担ったギタリスト/マルチプレイヤー、バーニー・レドン。 難解な捻りが多いグレン・フライ&ドン・ヘンリーの作家チームと大いに異なる素直な言葉選び。彼のsongwritingは本職のソングライターには無い素朴な魅力を感じる、そんな隠れた名曲で

          Ramblin’ Man 歌詞と対訳

          楽曲についてRamblin’ Man / written by Dickey Betts 中心人物であるデュアン・オールマンをオートバイ事故で失ったオールマン・ブラザーズ・バンド。1973年、新たなバンドリーダーとなったディッキー・ベッツによって書かれたこの曲の大ヒットがバンドの窮地を救い、バンドをさらなるスターダムに押し上げました。 それまでブルース色が強かったバンドサウンドに新鮮なカントリーテイストをもたらした、カントリー・ロックを代表する曲……というのが一般的な評価です