「うた」に無くて「Song」にあるもの…洋楽和訳で知るsongwritingの魅力

【文・翻訳】土屋茂(つちや・しげる)洋楽和訳を通じて文化としてのsongwriting…

「うた」に無くて「Song」にあるもの…洋楽和訳で知るsongwritingの魅力

【文・翻訳】土屋茂(つちや・しげる)洋楽和訳を通じて文化としてのsongwritingを研究。カントリーを中心としたアメリカンルーツミュージックに傾倒し、香川県高松市を拠点にギタリスト/ボーカリストとして活動中。広島市出身、高松市在住。

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「うた」に無くて「Song」にあるもの…洋楽和訳で知るsongwritingの魅力

このnoteについて(洋楽対訳の読み方)このnoteでは、筆者お気に入りの洋楽曲について、自分なりの解釈で日本語訳したものを掲載しています。 英文/和文で1行ずつ示していますが、英文については一部、太字&大文字にしている箇所があります。 これは「ライミング」つまり韻を踏んでいる箇所を意味します。 後述しますが、英語詞はその内容に巧みにライミングを盛り込むのが、大きな特徴です。 このnoteを通じて、ライミングの技巧も含めた英語詞の楽しさ・素晴らしさが伝われば嬉しいです。

    • The Weight 歌詞と対訳

      楽曲についてThe Weight / written by Robbie Robertson ザ・バンドが1968年に発表したデビューアルバム「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」に収録。シングルカットもされ、さらに翌1969年の映画「イージー・ライダー」でも効果的に使用されたことで、同バンドを代表する楽曲として広く認知されることとなりました。作詞・作曲は同バンドのリーダー、ロビー・ロバートソン。メインボーカルをドラムのリヴォン・ヘルムが担当、一部のみベースのリック・ダンコ

      • Fishin’ In The Dark 歌詞と対訳

        楽曲についてFishin’ In The Dark / written by Wendy Waldman and Jim Photoglo 「Mr. Bojangles」のカヴァーヒットで知られるアメリカのカントリー・ロック・バンド、ニッティー・グリッティー・ダート・バンドが1987年にリリースした楽曲。アメリカとカナダのカントリーチャートでNo.1を記録しました。 作者は、女性シンガー・ソングライターで80年代以降はソングライティング業に専念していたウェンディ・ウォルドマン

        • Take It Easy 歌詞と対訳

          楽曲についてTake It Easy / written by Jackson Browne, Glenn Frey おなじみイーグルスのデビューシングル。主な作者は彼らの親友ジャクソン・ブラウン(以下JB)ですが、メインボーカルを取ったグレン・フライが共作者としてクレジットされており、その経緯は後述します。 リリースは1972年。シングルとしてリリースされた後、彼らのファースト・アルバム1曲目にも収録され、バンドを代表する楽曲として認知されています。JBも翌年リリースした

          Some Days You Gotta Dance 歌詞と対訳

          楽曲についてSome Days You Gotta Dance / written by Marshall Morgan, Troy Johnson オーストラリア出身、今やカントリー界のスターにして俳優ニコール・キッドマンの旦那様としても知られるギタリスト/シンガーのキース・アーバン。彼がソロデビュー前に在籍したバンド、ザ・ランチの1997年に発売された唯一のアルバム「The Ranch」収録分が初出になる、ゴキゲンなカントリー・ロック・チューンです。 2001年にはデ

          (You Make Me Feel Like) A Natural Woman 歌詞と対訳

          楽曲について(You Make Me Feel Like) A Natural Woman / written by Gerry Goffin, Carole King, Jerry Wexler ゴスペルの天才少女と注目されたアレサ・フランクリンですが、ポップ歌手として売り出したコロムビア・レコード時代は泣かず飛ばす。そこに目をつけたアトランティック・レコードのプロデューサー、ジェリー・ウェクスラーが1966年、同社に移籍させます。 移籍後は本来の彼女のゴスペル・フィーリン

          The End of the World 歌詞と対訳

          楽曲についてThe End of the World / written by Arthur Kent, Sylvia Dee アメリカの女性カントリー歌手スキータ・デイヴィス、1963年のヒット曲。作曲はアーサー・ケント、作詞はナット・キング・コールの「トゥー・ヤング」で知られるシルビア・ディー。失恋の悲しみを歌う内容ですが、シルビアは父親の死の悲しみを取り入れて詞を書いたと語っています。 カントリー界に限らず、ポップスやジャズ、ロックのアーティストにも多数カヴァーされ、な

          Cold, Cold Heart 歌詞と対訳

          楽曲についてCold, Cold Heart / written by Hank Williams カントリー・ミュージックの巨星ハンク・ウィリアムスが1951年に発表し、その年のビルボード誌カントリー・チャートを席巻した彼の代表作のうちの1つ。メロディ自体はT・テキサス・テイラーの1945年の曲 "You'll Still Be in My Heart"をほぼそのまま拝借した上で独自の歌詞をつけています。ジョニー・キャッシュの曲もそうですが1950年代前半くらいまではそうい

          You’ll Never Leave Harlan Alive 歌詞と対訳

          楽曲についてYou’ll Never Leave Harlan Alive / written by Darrell Scott ソングライターであり、ブルーグラス系の弦楽器を全てこなすマルチプレイヤー、そしてソロアーティストとして多彩な才能を発揮する現代の巨匠ダレル・スコットの作品。アパラチアの労働歌を彷彿とさせる憂いを帯びたメロディがとても印象的です。 初出は1997年、自身のデビューアルバム「Aloha from Nashville」に収録されたバージョンですが、200

          Rainy Night in Georgia 歌詞と対訳

          楽曲についてRainy Night in Georgia / written by Tony Joe White R&Bシンガーとして、またナット・キング・コールなどに楽曲を提供する作家として’50年代から活躍していたブルック・ベントンですが、’60年代以降はやや落ち目に。そんな中、エルビス・プレスリーの「Polk Salad Annie」を手がけたルイジアナ出身の白人ソングライター、トニー・ジョー・ホワイトのこの曲に注目してカヴァーしたことで、以降の復活の糸口を掴みました。

          Love Has No Pride 歌詞と対訳

          楽曲についてLove Has No Pride / written by Libby Titus and Eric Kaz ニューヨーク出身のシンガーソングライター、エリック・カズが同郷の女性シンガーソングライター、リビー・タイタスと共作した作品。1972年にボニー・レイット、1973年にリンダ・ロンシュタットがそれぞれ優れたカヴァーを録音したことで、ソングライターとしてのエリックの名が世に知れ渡る契機となった曲です。 リビーも自身のアルバムで取り上げている他、トレーシー・ネ

          Share Your Love with Me 歌詞と対訳

          楽曲についてShare Your Love with Me / written by Alfred Braggs and Deadric Malone 愛する人が去っていく悲しみを切々と歌い上げるソウル・バラード。20世紀を代表するソウルシンガー、ボビー"ブルー"ブランドによる1963年版が初出ですが、最も有名なのは1969年のアレサ・フランクリン版。その他、ザ・バンドやケニー・ロジャース、ヴァン・モリソンなど白人アーティストにもカヴァーされています。 作者のアルフレッド・ブ

          I Feel Lucky 歌詞と対訳

          楽曲についてI Feel Lucky / written by Mary Chapin Carpenter, Don Schlitz 日本ではあまり知られていませんが、本国アメリカではグラミー賞を5度も獲得している女性シンガーソングライター、メアリー・チェイピン・カーペンター。キャリアで最も高セールスとなっている1992年のアルバム「Come On Come On」に収録され、シングルとしてもビルボードのカントリーチャートで4位を記録しています。 サウンドよりも歌詞にフォーカ

          Love the One You’re With 歌詞と対訳

          楽曲についてLove the One You’re With / written by Stephen Stills スティーヴン・スティルスが1970年にソロとして最初に発表したシングルで、1stソロアルバム「Stephen Stills」にも収録。もっとも、彼が所属するCSN&Yでは同時期すでにコンサートで披露していたようです。 この曲も無数のカバー・バージョンが存在しますが、重厚なゴスペル調のコーラスが入った(そのせいか「愛への讃歌」というイカニモな邦題がついている)

          Lonesome Dove 歌詞と対訳

          楽曲についてLonesome Dove / written by Carl Jackson, Larry Cordle カントリー界に多くの楽曲提供をしているカール・ジャクソンとラリー・コードのソングライター・コンビによる美しくも切ないカントリー・ワルツ。2人はブルーグラスを出自とし、ブルーグラス系プレイヤーとしても著名です。 80年代後半に制作され人気を博し、日本でも放映された西部劇ドラマの名作「モンタナへの夢」の原題 Lonesome Dove からタイトルを拝借したそう

          Songwriters in the Roundという独特のライブ形態……文化としてのsongwriting考(2)

          前回記事でご紹介した、映画「愛と呼ばれるもの」の舞台となったThe Bluebird Cafe。ナッシュビルの中心地から車で15分ほどの場所で現在も営業する実在のカフェですが、ガース・ブルックスやテイラー・スウィフトといった後の大スターがここで見出されるなど、ソングライターの聖地として長きに渡り認知されています。 今回はこの店を発祥とし、90年代以降で主にナッシュビルのソングライター・シーンに根付いている日本ではお目にかかることのない独特のライブ形態「Songwriters

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