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Songwriters in the Roundという独特のライブ形態……文化としてのsongwriting考(2)

前回記事でご紹介した、映画「愛と呼ばれるもの」の舞台となったThe Bluebird Cafe。ナッシュビルの中心地から車で15分ほどの場所で現在も営業する実在のカフェですが、ガース・ブルックスやテイラー・スウィフトといった後の大スターがここで見出されるなど、ソングライターの聖地として長きに渡り認知されています。

今回はこの店を発祥とし、90年代以降で主にナッシュビルのソングライター・シーンに根付いている日本ではお目にかかることのない独特のライブ形態「Songwriters in the Round(以下SITR)」をご紹介します。

筆者が2010年に半年間滞在したナッシュビルでの経験を元にしています。
まずはこちらの写真をご覧ください。

Bobby’s Idle Hourにて。2010/09/18

3人組のバンドが演奏している?
……違います。
3人のソングライターが一度に同じステージに立っていますが、演奏するのは1人だけ。

これ、参加者は基本アマチュアのいわゆるオープンマイクの一種ですが、以下のような独特なルールで進行します。

  • 出演希望者はまず会場入口でエントリーを済ませる

  • エントリーを済ませた出演希望者のうち3人が司会者に呼ばれ、3人同時にステージに立つ

  • 1人ずつ順番にオリジナルを1曲ずつ披露し、他の2人はそれを聴く

  • 曲間には作者自身による曲の解説や、共演者・司会者を交えたトーク等を挟んで進行する

  • 3〜4回転したら次の3人がステージに上がり、その繰り返し

他のソングライターの演奏に聴き入る共演者

このSITRの形式が、ライブ会場に幸せな化学反応を生み出します。具体的には以下のような感じ!

  • 出演者は完全ソロ演奏よりプレッシャーが少なくリラックスした雰囲気で演奏に臨める

  • 演奏の前に作者自身が曲解説をすることで、ライミング等ルールで制約されて伝わりにくい表現を補足できる

  • 曲間の司会者/共演者/観客を交えたトークセッションも含めて、会場にいる皆で盛り上がる

日本のバラエティ番組「プレバト‼︎」に芸能人が俳句の実力を競い合うコーナーがありますが雰囲気としてはそんな感じで、さながら「句会」。とはいえ堅苦しさは無く、まるでリビングルームにいるかの如くリラックスしたムードで終始進行するのです。

驚くべきはその規模。ライブハウス、カフェ、ホテルのロビーなど、ありとあらゆる会場で毎週予定が組まれ、ほぼ毎日ナッシュビルのどこかでSITRが行われていることになります。参加者はプロ級からギターもろくに弾けない人まで様々。一回あたり20人以上ものエントリーがあり、夜7時から11時まで延々と続きます。エントリーせず観るだけのお客さんも含めて、筆者が訪れた会場はどれも満員でした。

受付開始してすぐにエントリーシートは埋まってしまう。
その日出演が叶わなかったソングライターはその場で次回の予約をする。
出演者によっては、ピアノ弾き語りやデュオで臨む場合もある。
出演者同士で軽いセッションのようになることも。
ホテルのロビー等を会場にしている場合が多いです。
ほとんどが入場無料。

ちなみに出演者3人が4人になるパターンもあり、その場合は会場の中心に4人が雀卓のような配置で座り、その周りを観客が取り囲むという形式になります。当記事のカバー写真がその様子。場所はThe Bluebird Cafeで、SITRは同店で始まったという記述が公式HPにあります。右のソングライターは「Strawberry Wine」の作者マトレイサ・バーグ。

映画「愛と呼ばれるもの」さながらに野心を抱くプロ志望者も、単純に創作を楽しみたいアマチュアも市井の人も、一緒になってsongwritingという文化を作り上げていく。そんな雰囲気を、筆者はこの「Songwriters in the Round」に感じ取りました。

当note読者の皆様も、こういう文化の元で人々は曲を作っているんだと知った上で今までの曲を聴いてみると、きっと印象が変わると思いますよ!

なお、この内容は筆者の14年前の経験を元にしているので、2024年現在もSITRが同じように続いているか、どう進化しているかは不明。YouTubeなどを観る限り大筋は変わってないようですが、知識の答え合わせや情報のアップデートを行う必要を感じており、songwritingの現在地について詳しい方がいらっしゃったらコメントなどを頂ければ幸いです。

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