You’ll Never Leave Harlan Alive 歌詞と対訳

楽曲について

You’ll Never Leave Harlan Alive / written by Darrell Scott
ソングライターであり、ブルーグラス系の弦楽器を全てこなすマルチプレイヤー、そしてソロアーティストとして多彩な才能を発揮する現代の巨匠ダレル・スコットの作品。アパラチアの労働歌を彷彿とさせる憂いを帯びたメロディがとても印象的です。
初出は1997年、自身のデビューアルバム「Aloha from Nashville」に収録されたバージョンですが、2001年にカントリー系女性シンガー、パティ・ラブレスによりカヴァーされ、翌年のIBMA(International Bluegrass Music Awards)ソング・オブ・ザ・イヤーにノミネートされるなど、高く評価されている曲です。

曲を聴く前にイメージしたいこと

ケンタッキー州ハーラン郡。朝10時から昼3時までしか日光が差し込まない深い渓谷の中で、過酷な労働を強いられる炭鉱夫。採掘権や労使交渉を巡って抗争が絶えない絶望的な場所で生きて、土地を離れることなく死んでいった祖父の物語です。
2020年のインタビュー記事によると、ハーラン郡を訪れたダレルは、先祖が住んでいた土地周辺の墓地をいくつか訪れたところ、実際に「お前は決して生きてハーランを出られない」と刻まれた墓を目にして、1週間後にはこの曲を書き上げていたそうです。
地獄のようなその土地から終生出られなかった祖父の足跡を綴る、ファミリー・ヒストリー・ソングといったところでしょうか……それでは、どうぞ!

歌詞と対訳

In the deep, dark hills of eastern Kentucky
ケンタッキー州の東部 深くて暗い丘陵地
That's the place where I trace my bloodline
その地こそ 私の血統を辿る場所
And it's there I read on a hillside gravestone
丘の途中に立つ墓石に こう書いている
"You will never leave Harlan alive"
お前は決して 生きてハーランを出られない

Well my grandad's dad walked down Katahrin's Mountain
私の曽祖父は カタリン山を徒歩で下り
And he asked Tillie Helton to be his bride
ティリー・ヒルトンに 求婚した
He said, "Won't you walk with me out of the mouth of this holler
彼は言った この峡谷から一緒に抜け出そう
Or we'll never leave Harlan alive"
今を逃せば 一生ハーランから出られなくなる

Where the sun comes up about ten in the morning
太陽がやっと顔を出すのは 朝の10時
And the sun goes down about three in the DAY
そして昼の3時には 太陽が隠れてしまう場所
And you fill your cup with whatever bitter brew you're drinking
とにかく何か苦い飲み物で カップを満たしては
And you spend your life just thinking how to get AWAY
どうすれば ここを出られるかだけを考える日々

No one ever knew there was coal in them mountains
その山々で石炭が採れるとは だれも知らなかった
'Till a man from the northeast ARRIVED
北東の地から その男が来るまでは
Waving hundred dollar bills, he said "I'll pay you for your minerals"
札束をはためかせ 採掘権を買おうと申し出たが
But he never left Harlan ALIVE
その後 彼が生きてハーランを出ることはなかった

Well granny, she sold out cheap and they moved out west of Pineville
祖母は採掘権を安く売り 一家はパインビルの西へ移り住み
To a farm where big Richland River winds
リッチランド川のほとりで 農園を始めた
And I'll bet they danced them a jig, and they laughed and sang a new song
きっと彼らはジグでも踊って 笑顔で新しい歌を歌っただろう
"Who said we'd never leave Harlan alive?"
生きてハーランを出られないなんて 誰が言った?

But the times, they got hard and tobacco wasn't selling
だが時が経ち 農園のタバコは売れず生活は困窮する
And old granddad knew what he'd do to SURVIVE
年老いた祖父は 生きるために何をすべきか悟った
Well he went and dug for Harlan coal and sent the money back to granny
祖父はハーランの炭鉱に戻り 祖母に仕送りをした
But he never left Harlan ALIVE
その祖父も 生きてハーランを出ることはなかった

Where the sun comes up about ten in the morning
太陽がやっと顔を出すのは 朝の10時
And the sun goes down about three in the DAY
そして昼の3時には 太陽が隠れてしまう場所
And you fill your cup with whatever bitter brew you're drinking
とにかく何か苦い飲み物で カップを満たしては
And you spend your life just thinking how to get AWAY
どうすれば ここを出られるかだけを考える日々

Where the sun comes up about ten in the morning
太陽がやっと顔を出すのは 朝の10時
And the sun goes down about three in the DAY
そして昼の3時には 太陽が隠れてしまう場所
And you fill your cup with whatever bitter brew you're drinking
とにかく何か苦い飲み物で カップを満たしては
Spend your life diggin' coal from the bottom of your GRAVE
自分自身の墓よりもさらに深く 石炭を掘り続ける日々

In the deep, dark hills of eastern Kentucky
ケンタッキー州の東部 深くて暗い丘陵地
That's the place where I trace my bloodline
その地こそ 私の血統を辿る場所
And it's there I read on a hillside gravestone
丘の途中に立つ墓石に こう書いている
"You will never leave Harlan alive"
お前は決して 生きてハーランを出られない

  • Katahrin's Mountain……ハーラン郡の東部にあるケンタッキー州最高峰、ブラック山(Black Mountain)の異名。ドク・ワトソンで有名なトラディショナル「Black Mountain Rag」はこの山かな?と思いましたがアパラチア周辺はもう1つ、ノースキャロライナにBlack Mountainがあるので(これは山ではなく町名)確証が無い。詳しい人教えて下さい。

  • The mouth of this holler……このhollerはホラー映画、では無くてhollow(渓谷)のアパラチア訛り。こちらの記事を参考にしました。恐ろしい渓谷、というダブルミーニングかと一瞬思いましたが、そもそも恐ろしいという意味のホラーは「horror」なので無関係。どっちかというとfield holler(フィールドハラー。黒人労働歌)に絡めているのかも…?

  • ハーラン郡の炭鉱は20世紀初頭から労働争議が激しく、特に1930年代(ちょうどダレルの祖父が現役の頃?ダレルは1959年生まれ)には「Bloody Harlan」と呼ばれる血なまぐさい抗争に発展するほど。I'll pay you for your mineralsのmineralは単に「鉱物」ですが、このような事情があるのを踏まえて「採掘権」として、祖母が安く売ったのもその採掘権、と解釈しました。

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