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【連載】ディズニーランド紀行 〜『創造の狂気』・Uボート・メタボリズム | 1/4 あなたの目を映画のカメラに変える建築

先日東京ディズニーランドに行ってきました。行ったのは多分10年ぶりです。行った動機はスターツアーズに乗りたい!っていうことなんですけどね。

ただずっとディズニーランドには行きたいな、行かなきゃなと思ってました。あの場所の特殊性に興味惹かれていまして、様々なメディアで得た知識もあったので、その確認に行きたいという感じで。だから今回は遊びに行ったというより、観光とかフィールドワークとかそういうニュアンスが強いですね。今回はその見聞録と仮説、見どころ、感想...などを、全4回の連載形式で紹介したいと思います。

出発前

冒頭で様々なメディアで知識を得たということを述べました。本やブログ、動画など通していろいろ知ってきたわけです。

中でもつい最近読んだ『創造の狂気 ウォルト・ディズニー』(ダイヤモンド社.2007年)は強力でした。ウォルト・ディズニー(本名:ウォルター・イライアス・ディズニー)の伝記的記録なのですが、彼の思想や完璧主義について、過去と未来への志向思想などをマクロとミクロの両面から掴めた気がします

そうしたウォルト・ディズニーの思想から出力された作品であるディズニーランドにますます興味が湧きまして、確認したいことを事前にまとめた上で東京ディズニーランドに向かいました。

と仰々しく言ってはいますが、以下は「なるほど」とか「すごい!」とか「こうじゃないか?」という仮説とか、そんなものばかりですので、どうか軽い気持ちで読み進めてください。

前提

ディズニーランドへの来場客は、他のアミューズメントパークとは異なる独特な振る舞いを期待されています。来場客は映画の出演者として過ごせるようにランドは設計されています。

その御膳立てとして、ディズニーランドは現実との隔絶が施されています(『創造の狂気 ウォルト・ディズニー』438ページ)。東京ディズニーランドでは、10~15mの盛り土がされており周囲を建物や木々を囲むことでパークの外側の景色を隠しています。

来場客には、現実を一旦置いといて夢の国の出演者として過ごしてもらう。諸々のディズニー作品を自分事として引き寄せさせ、来場客が作品の一部として存在できるというのがディズニーランドの基本設計です。そんな他のパークでは替えられぬ体験をしてもらうため、盛り土以外の工夫として、園内は映画のセットのような設計方法がとられています。

建物探訪

ディズニーランドの建物は独特な遠近法が利用されています。遠近法というと普通水平方向での手法をイメージしますが、ここでは垂直方向にそも手法が施されています

これはカリブの海賊付近にある建物の写真です。下から見るとこんな感じですが↓

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↑遠くから見ると、1階の高さに比べ、2階や3階の高さが低くなっていることがわかります。ディズニーランドでは、建物の縮尺を調整されており、1階が通常の寸法の90%、2階は80%、3階は70%としています(『創造の狂気 ウォルト・ディズニー』471ページ。ただし、東京ディズニーランドは100%、70%、50%で設計されているよう)。

シンデレラ城のレンガの大きさも錯視に利用されていて巧みなのですが、その辺の詳細はリンクの記事に書いてあるのでそちらを読んでみてください。

なぜこのような調整がされているか。これはそもそものウォルト・ディズニーの建物に関する思想が関係しています。主人公は来場客であり、来場客を見下ろすような建物を作らない。人を見下ろすのは専制君主の建物だ、という考えを持っていました(『創造の狂気 ウォルト・ディズニー』472ページ)。実際の建物の高さは現実の建物に比べ低くなっているため、建築物のもつ圧迫感は低減されています。来場客に作品の主人公として振る舞ってもらうという目的に沿った建物になっているわけです。

また、映画のセットのような建物ということを補助線に、こうした設計による効果を考えてみました。

映画では、人を強調したいときって背景が小さく写るように広角レンズが使われます。あとは、距離を表現するためにわざと縮尺を調整した背景を作るというのは映画(特に特撮映画)のセット作りで利用されるポピュラーな手法です。これを等身大の建物で表現(再現)しているのではないかと。だから来場客は映画の中を歩いているのと変わらぬ体験ができますし、肉眼≒映画のカメラとなるのでどんな景色も非日常的なものに様変わりします

来場客の振る舞いすらも演出しているのがディズニーランドの面白さ。映画のマジックをリアルに体感できるのです。

2/4へつづく


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