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[気づきの日記帳04]「なぜ」を持たなければ「問い」は生まれない

[社会人15年目の気づき]

長くアイデアを考える仕事をしてきて、仕事の価値を維持し続けられた大きな理由に、自分の「なぜ」との向き合いがあると感じます。自分の「なぜ」に素直に向き合ってきたこと、未解決の「なぜ」を放置しないようにしてきたこと。だからこそ、自分が今でも仕事ができている。キャリアを積んでいきながら、多様で難しい課題に答えれば答えながら、その重要性に気づかされてきたのです。

私たちは、大人たちからいろんなことを学びながら、学校や塾では多様なカテゴリーの知識を与えられ、鍛えられてきました。おそらくそのなかで「なぜ」の思考は、知識として与えられるものをただただ鵜呑みにしない自律的思考の基礎作法として機能してきたのだと思います。世界史の勉強も、ただただ「いつ何が起きたのか」を憶えるだけの学習ではなかなか効果が上がりにくい一方、そこで生まれた人間関係や出来事を通じてそれがなぜ起きたのかを学ぶと、その学習効果が格段に高まったること、ありますよね。また、文学作品の解釈も、いわゆる正解を探すのではなく、自分のビューと正直に向き合うようになって初めて、その質が高まったことも、記憶しています。

広告クリエイティブの現場でこれまで出会ってきた優秀な先輩たちは、みな共通に「なぜ?」を躊躇なく問う人ばかりでした。「なぜ、このギャグは流行っているの?」「なぜ、若者はクルマに萌えなくなったの?」「なぜ、企業は成長し続けなきゃいけないの?」「なぜ、資本主義は限界にきているの?」「なぜ、小島よしおはいまだに子供に人気なの?」。女子高生の服装や子供たちの流行りの遊びから、世界情勢や科学の最前線の話題まで。どんな「なぜ?」にも分け隔てなく等価に向き合っていたことが特徴でした。そして「なぜ?」に対する多様な答えのあり方を認め合うことも特徴でした。「なるほどな、その見方は面白いね」とか「うおー、そんな理由もあったのか!」「こう、考えてもいいかもね」という具合に。相手が経験の浅い新人社員であっても、彼らなりの「なぜ?」の答えに対して真剣に耳を傾けていたことも印象的でした。つい最近まで学生だった若者特有の「なぜ?」への答えがあるかも、と期待したからだと思います。「なぜ?」は、好奇心旺盛な子供の専売特許。と思っていたら、一目置かれるクリエイターは共通に「なぜ?」の思考を大人になっても持ち続けていたのです。それどころか、子供よりもはるかに貪欲に、はるかにしつこく「なぜ?」を繰り返し、「なぜ?」の自問自答を実践していたのです。

2012年にコロンビア大学のサイモン・シネックが出版した「WHYから始めよ! 」は、今時なる企業経営において「Why」の経営がとても重要であることを説いた著名な一冊です。(『WHYから始めよ!インスパイア型リーダーはここが違う 』サイモン・シネック著・栗木さつき訳、日本経済新聞出版 2012年1月刊)TEDのスピーチ映像で知っていらっしゃる方も多いかと思います。

その中でサイモン・シネックは、3つの同心円を使って優れたリーダーの情報発信のあり方を解説し、Why:なぜやるのか。その事業やサービスに取り組む根源的理由、大義を伝えるコミュニケーションが重要であることを指摘すると同時に、その理由として「Why」の情報が、「How」や「What」と違い、大脳辺縁系という脳の特定領域で処理されていることを指摘しています。

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