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中国史王朝暗記の「必勝法(?)」

 殷周から始まって清にいたる中国の歴代王朝の暗記は、多くの受験生が苦労するところです。「アルプス一万尺」のメロディーに乗って歌えるそうですが、あれも言ってしまえば力業の暗記。流れを理解し、納得した状態で覚えてもらう方が望ましいです。

 中国史は基本的に統一期と分裂期が交互に訪れます。上田信「中国の歴史9 海と帝国」(講談社学術文庫)には、さらに解像度の高い歴史観が紹介されています。

前掲書P31

 中国史のサイクルは「離合集散」のうちの「合→散→離→集」の繰り返しになるといいます。「合」は政治的安定期、「散」は政治が乱れて混沌とする時代です。

 このとらえ方の画期的なところは、同じ分裂期でも「散」と「離」に分けている点です。「離」は分裂はしているものの、政治的中核ができ始め、次の統一に向かって準備が始まる時代です。そして、「集」は「離」で生き残った勝者が、新たな秩序を作り出すフェーズです。
 
 「散」と「離」は似ていますが区別があり、後者の方が前者より混沌の度合いが減っています。春秋時代→戦国時代の変化、三国・晋・五胡十六国→南北朝時代の変化、いずれも当てはまっています。

 一般に宋は統一王朝とみなされますが、軍事的には北方の遼や金に圧迫されていました。なので、「遼と北宋」「金と南宋」の分裂期としてとらえられ、「散」に続く「離」のフェーズとされています。

 このサイクルは、周代から元代まで3度繰り返されました。しかし、元以降の明、清の王朝は、東アジアの枠を出て世界帝国になり、「離合集散」の法則に当てはまらなくなった、と説明されています。

 この歴史観は、高校世界史などを指導するうえでも有益ではないでしょうか。

 もっとも、「離合集散」の名付け方はわかりづらく、「合」と「集」は結局同じではないか、という批判もあり得ます。

 そこで、下記のようなより分かりやすい分類が提案できます。

①統一期(中華が統一され、安定を実現した)
②分裂混沌期(統一が崩れ、諸勢力が乱立している)
③統一準備期(混沌の中から核となる勢力が現れ、混沌の度合いが薄れる)

 学習や指導のヒントになれば幸いです。

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